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山口代表の日本記者クラブでの講演(要旨)

公明新聞:2010年5月25日付

日本記者クラブで講演する山口代表日本記者クラブで講演する山口代表(左)=24日

参院選 日本政治の分水嶺に

公明党の山口那津男代表は24日、東京・内幸町の日本記者クラブで講演し、鳩山政権の評価や今夏の参院選の意義などについて見解を述べた。山口代表の講演要旨は次の通り。

鳩山政権に国民は絶望
政治とカネ、普天間など政治主導なく右往左往


【鳩山政権】

鳩山政権は昨年、戦後3番目の高支持率でスタートしたが、今や支持率は地に落ち、2割を切っている世論調査もある。国民は、当初の期待が失望に変わり、絶望に落ち込みつつある。

その要因は、「政治とカネ」の問題だ。与党第一党のトップ、ナンバー2がともに「政治とカネ」の問題を抱え、民主党所属議員も何人か告発されている。誰もきちんと説明責任を果たさず、道義的・政治的責任も果たさないことに、国民は嫌気が差している。

もう一つの重要課題は普天間問題だ。首相が「国外が望ましい。少なくとも県外」「在日米軍再編を見直す」と言ったことが発端だが、一向に進展せず、ついに23日、日米での大筋合意を沖縄県知事や地元に伝えた。

この点は、首相自らの発言がどんどん変わっている。「選挙の時に発言したのは公約でない」というのも、まさに詭弁だ。

安全保障に対する定見も欠けている。「選挙当時、沖縄に海兵隊の抑止力はなくていいと思っていた。学べば学ぶほど抑止力の維持の必要性を実感した。浅かったと言われればそうかもしれない」と、自ら見識の浅さを認めた。われわれは、「沖縄、地元の頭越しにやるべきではない」「十分な意思疎通を図らなければ到底、地元の理解は得られない」と強調してきた。にも関わらず、日米大筋合意を伝えるというやり方は、誤ったアプローチであり、沖縄の皆さまに対する裏切りと言わざるを得ない。そして結局は、現行案に限りなく近いものになる気配だ。

さらに首相は、地元との合意、連立与党との合意、日米両国政府の合意と三つの合意を決着の条件に掲げていたはずだ。日米の大筋合意も実質先送り。沖縄県民の理解は到底得られず、連立与党の合意も不可能という状況だ。首相の言っていた決着には、ほど遠い内容だ。日米共同声明を出す方向のようだが、これは偽装決着だと国民にすでに見抜かれている。首相に対する信頼感はもはや地に落ちた。

日米共同声明を月末に出すのであれば、それを期に首相を自発的に辞めるべきだと申し上げたい。

【参院選の意義】

参院選の意義は二つある。まず、鳩山政権がもし居座り続ければ、政権の評価が正面から問われる。もはや政権担当能力を失った。政権の存続自体が争点になる。

もう一点は、二大政党化の見直しだ。二大政党による政権交代が望ましいとの謳い文句で、昨年や近年の選挙が行われたが、結果は承知の通りだ。野党第一党も支持率が全く上がらず、むしろ共に下がっている。両党の支持率を足し合わせても過半数を超えないのは、もはや正当な民主主義の前提を欠いていると言わざるを得ない。

これは日本だけの現象ではない。ヨーロッパでも英国をはじめ生まれている。まさに、今後の日本政治の分水嶺になる選挙だといえる。

選挙制度については、もはや二大政党制を担保する小選挙区制度は時代遅れであり、見直す時期に来ている。大事なことは、いかに民意を反映するかだ。ここを重視した制度を検討すべきであり、新しい中選挙区制が望ましいと思う。

【経済成長戦略】

先般、公明党の景気対策・成長戦略について発表した。

今の政権は新しく打ち出した制度がほとんどなく、前政権のやった延長に過ぎない。中小企業分野の需要を生み出すような政策を打っていく必要がある。

「ピンチはチャンス」という言葉もある。「三つのピンチ」を指摘したい。

一つは、「地球温暖化、気候変動に対応する」ということだ。省エネ、環境技術について、わが国が優位性を持っているところに、もっと研究投資をしっかりやった上で、その競争力を確保する。併せて、国際社会に貢献する。ここの投資を怠ってはならない。さらに、農業と合わせた「グリーン産業革命」について。高い農業技術がありながら、これが国際競争の中では生かされていない。

また、21世紀型の公共投資を推進すべきだ。学校の耐震化で今の政権が予算を削ることに、われわれは強く反対した。例えば、公共投資の分野で、今までは年度替わりの「つなぎ」などを考慮した措置を補正予算などでやったが、今の政権にはそうした配慮がない。予備費を使ってでも学校耐震化を夏休み中にやれと強く主張し、これが実施されることになった。

この分野だけだが、「学校耐震化で少し『つなぎ』ができた」と現場から評価も出ている。

また、介護の総点検を行い、介護・医療分野の投資を強調した。圧倒的に介護分野での施設・設備、サービス、人材が不足している。こうした分野は、高齢化を乗り切る、この20~30年が最大のヤマであり、思い切った資源配分の変更が必要だ。また、ここで培ったハード、ソフトの仕組みは今後、日本と同様の道をたどるであろうアジア諸国、特に韓国、中国、インドなどの国々には、極めて応用可能な試みだ。

政治家の監督責任強化を

【クリーンな政治】

公明党は、「クリーンな政治」を標榜している。まず「政治とカネ」の実態解明が重要だ。民主党の小沢幹事長は、政倫審に出るかのような素振りをみせたが、2度目の不起訴処分で、もう、その気はないとなると、予算委員会などで参考人や証人なども含めた議論が必要だろう。再発防止策をしっかり作り上げることが極めて重要だ。

われわれは、積極的な提言を行った。一つは、監督責任の強化だ。「秘書がやった。自分は知らない」は、今の制度のもとでは、秘書などの会計責任者が虚偽記入などを犯した場合、「選任及び監督」に対する注意を怠った場合となっているが、両方怠った場合というのは非現実的であり、実効性がない。

大事なことは、政治家がきちんと監督していたかだ。私は、「選任又は監督」と置き換え、監督責任の強化を重視すべきだと思う。そして、これを怠った場合、公民権停止にする。

また、企業・団体献金の禁止も訴えている。民主党から「これを全面的に禁止する」との提案があった。ならば、ということで、これを提案している。しかし、与野党でいろんな意見もあるので、協議機関をつくってやれ、とも提案し、一時、自民党もみんなの党も乗りかけたが、いまだにできていない。これは、民主党も自民党もそれぞれ思惑があり、お互いに足元を見ながら、前に進めようとしないからだ。

かつて中選挙区制度が議論された時、「選挙制度を変えれば、『政治とカネ』問題がなくなる」と言われた。しかし、今でも「政治とカネ」問題はなくなっていない。

「政治とカネ」問題は、どんな選挙制度であっても、やはりカネを使いたい人は、カネをかき集めるわけで、これを遮断する正統なルールをつくることが先決である。

これができれば、中選挙区制による主たる弊害としてかつて語られたものは解消される。

うつ病、虐待など新たな不安に対応
議員のネットワーク力生かす


【新しい福祉】


「新しい福祉」に言及したい。これまでの年金、医療、介護、子育て支援は、もちろん重要な柱だ。例えば、国民年金に頼る人の低年金・無年金の課題は待ったなしだ。これを解消しなければならない。

基礎年金加算制度の創設や、年金の受給資格を取得する期間の25年から10年への短縮、所得に波のある個人が余裕ができた時に追納できるようにするなど、現行の仕組みを補うことで、低年金・無年金問題を緩和できる。

貧困の問題が取り沙汰される中で、所得が相対的に低い人に対する医療費負担が重い。特に、慢性疾患や難病の人たちのための高額療養費制度が、相対的に所得の低い人たちに重い負担となっている。ここを軽減せよと提案している。

難病に個別に救済措置を取ることも一つの手法であり、われわれが連立政権の時、拡大した。もっと重要なのは、高額療養費の低所得者配慮の大きな改善だ。

介護問題では12の柱の提案、64の具体的な施策を提案した。公明党は地方も通じてこれらを実行していきたい。

もう一つ、「新しい福祉」という課題が生じている。例えば、うつ病やうつ的状況で職業が続けられない、家庭が円満に運営できないという状況が増えている。推定250万人のうつ病患者が潜在していると言われる。自殺などの主な原因も健康問題で、うつも主要な要因とされている。

児童虐待は毎日のようにニュースになっている。不登校も小中学校で12万人に及ぶと言われる。高齢者の独り暮らし、特に孤独死は、高齢者の6割が「非常に心配だ」というアンケート結果が出ている。

これらの課題にこれまでの制度では全く対応できない。うつ病を例に挙げれば、薬を多用せずカウンセリングを重視する認知行動療法が最近注目されており、われわれは健康保険の適用を強く訴え、今年4月から健康保険が適用されるようになった。

また、専門医も足りない。こうした医師を養成する事業が今年度予算でわずか1000万円しかない。養成強化の取り組みは始まっているが、財源的な手当てはない。うつ病一つとっても、今の政治は全く追いついていない。ぜひ、こうした分野に対する生活不安、新たな危機に対応する政治の取り組みが必要だ。

【声の届く政治】

みんなの党を含む、第三極を標榜する新しい政党が次々とできた。これは、二大政党からどんどん剥がれ落ちていく民意を政治の側から受け止めようという前向きな姿勢として、積極的に評価できる面があると思う。

しかし、新しい党に国民の本当のニーズを受け止める力があるかどうかは疑問だ。国会議員だけで、ある党から離れ、ある党を作る、別の党とくっつくという国会議員の横滑りの離合集散だけでは、本当の国民のニーズは掴めない。地方議会にもしっかり根を張るタテのネットワーク構造が重要な要素だと思う。

それに、新しい党には女性議員がいない。これからの社会構造の変化を考えた時に女性の声をいかに掴み、実現するかが不可欠だ。女性議員だからこそ、男性議員には掴み切れないニーズを的確に、きめ細かに掴むことができるわけで、女性議員の存在は重要だ。

公明党は地方議員を含め、3000人を超える党籍を持った議員ネットワークがあり、全政党の中で第一党だ。民主党も自民党もわれわれに及ばない。また女性議員は、その3割の900人に上っている。

宮崎県で口蹄疫の問題が起きたが、4月下旬から公明党は、地方議員を通じて地域からの声を敏感に受け止めてきた。4月下旬に対策本部をつくり、現地調査した。連休明けに具体的な特別措置法の提案、1000億円規模の予備費を使った予算措置も提案した。

民主党には、こうしたセンサーはなく、結局、後手を踏む。担当大臣は危機管理意識が乏しく外国に行ってしまう。その遅れが後手に回った今のような悲惨な事態を招いている。
こうしたことを見ても、私は今、本当に国民のニーズを捉える政党のネットワークの力が重要だと考えており、わが党こそが、そうした機動力を生かし、国民の期待に応えていきたい。

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