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沖縄に続いて、強烈な「ノー」を突きつけられた。こんな結末になることは鳩山由紀夫首相も分かっていたはずだ。
きのう首相は鹿児島県・徳之島の3町長に沖縄の基地負担を減らすための協力を求めた。あっさり断られた上「たらい回しではなく、米国のオバマ大統領とともに基地の縮小を考えてほしい」とまでくぎを刺された。
同時に手渡された移設反対の署名も全島民の8割に上る。これだけの拒否を前にして、どんな説得の手だてがあるというのか。「最低でも県外移設」という首相の約束は、もろくも崩れたといえるだろう。
その約束の「証し」として持ち出していたのが徳之島案である。米軍普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古沖の浅瀬にくい打ち桟橋方式で建設するのと併せ、徳之島に最大千人規模の海兵隊ヘリコプター部隊の移設か訓練の一部を移す―というものだ。
しかし米国は、沖縄から200キロ近い距離に難色を示している。沖縄の海兵隊は有事即応のためヘリ部隊と地上部隊の一体的な運用が欠かせないとされるからだ。
部隊の移転には滑走路のほか、隊員の兵舎などの生活基盤、整備場などの施設を確保する必要がある。訓練の一部を移すにしても兵舎などの整備が不可欠となる。
徳之島には民間専用の空港しかないだけに、米軍の基地機能の拡大につながることは必至である。とても検討を尽くしたとはいえないような案に、島民はもとより国民の幅広い理解が得られるはずもなかろう。
それにもまして気になるのは、首相が先の沖縄訪問で「学べば学ぶほど海兵隊の抑止力の大切さが分かった」と述べたことだ。当初は抑止力維持に海兵隊は必要ないと思っていたと認めている。ならば百八十度転換した理由をまず国民に説明するのが筋ではないか。
「最低でも県外」との約束についても民主党の公約ではなく、代表としての発言だとした。確かにマニフェストに「最低でも県外」の文言はない。だが、いやしくも公党の代表の発言である。こんな強弁を繰り返すのが情けない。
首相は15日にも再び沖縄を訪問し、仲井真弘多知事らに具体的な移設案を説明する予定にしていたが、先送りの方針を決めたという。名護市の稲嶺進市長が「会っても道は開けない」と明言したように、現時点で沖縄県民が県内への移設を受け入れる可能性はゼロに等しかろう。
政権内部の不協和音も目立ち始めた。県内移設に否定的な社民党の福島瑞穂党首だけでなく、民主党の閣僚からも「じっくり議論すべきだ」とする発言も出ている。それでも「5月末決着を変えるつもりはない」という首相の言葉は理解に苦しむ。
沖縄も徳之島も民意は明確に「ノー」を示した。誰が見ても3週間余りで合意を得られるような状況ではない。この期に及んでも5月末にこだわるのだろうか。
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