国民新党の存在感低下を示す郵政法案 ねじれ続く限り成立は困難

2010.12.06

 臨時国会は延長なしで3日に閉会した。郵政法案は審議されないまま継続審議となった。国民新党は会期延長や審議入りを求めてきたが、民主党は応じなかった。与党の一員としての存在感がなくなっている。

 もともと国民新党は、2005年に郵政民営化反対のために自民党から分かれてできた政党だ。郵政民営化反対では、国民新党と民主党に当初若干の温度差があったが、民主党は政権交代のために国民新党と共同歩調をとってきた。

 07年7月の参院選後、民主党は、躍進したものの参院での過半数を獲得できなかった。しかし、国民新党と社民党ととともに、与野党の逆転を果たして参院の主導権を握った。

 民主党は、国民新党と社民党の協力なしでは参院での影響力を行使できなかったために、国民新党の存在感は大きかった。その後、小沢一郎氏が民主党代表の時には政権交代のために郵政票がほしくて連携を強化する動きもあった。

 昨年8月の総選挙で民主党は圧勝し衆院の過半数の議席を得る一方で、国民新党は選挙前の4議席を維持できず3議席にとどまった。このため、国民新党の与党内における影響力低下が懸念されたが、参院で国民新党なしでは民主党は力を発揮できないので、依然として国民新党は影響力を維持できた。

 亀井静香代表の個人的なキャラクターもあり、郵政株式凍結法の成立や日本郵政での経営陣の総入れ替えなどで、国民新党はかなりの存在感であった。

 しかし、今年7月の参院選では、民主党が大きく議席を減らす中で、国民新党も議席を獲得できないという大敗だった。その結果、前回07年の参院選と全く逆の立場であるが、参院で与野党が逆転し、完全なねじれ国会となった。このため、与党が法案を参院で通せなくなり、うまく力を発揮できない。その中で国民新党の存在感はほとんどなくなった。

 先の参院選で国民新党は、「郵政改革=郵政民営化反対」を唱えるとともに、外国人参政権反対を掲げた。これは民主党の政策に反するもので、国民新党の影響力低下をより加速させた。

 さらに、郵政民営化反対でも、民主党内で後ろ盾となっていた小沢一郎氏の影響力が低下したため、それほど熱心ではなくなった。

 特に、昨年の日本郵政経営陣の総入れ替えを国民新党が強引に進めた結果、天下り批判を受け、その後の民主党凋落の一因にもなったことから、民主党は国会審議を避けたい向きもある。郵政法案は継続審議になったが、ねじれ国会など今の状況が変わらない限りその成立は困難だ。(嘉悦大教授、元内閣参事官・高橋洋一)

 

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