2010年12月7日22時43分
【パリ=稲田信司】民間内部告発サイト「ウィキリークス(WL)」の創設者で編集長のジュリアン・アサンジュ容疑者(39)が7日、英捜査当局に逮捕された。しかしWL側は、米外交公電などの機密公開を続ける考えを鮮明にした。
WLが強気の姿勢を崩さないのは、入手した約25万件に及ぶ米外交公電を「人質」にとっているからだ。すでに、英紙ガーディアンなど欧州の有力メディアに公電を渡しており、各紙が独自に情報を精査して報道する方向だ。また、アサンジュ編集長は、WLが閉鎖の危機に追い込まれるなど不測の事態に陥った際、外交公電の暗号化ファイルを解除し、不特定多数の人々が情報にアクセスできるようにするとも警告している。
一方、アサンジュ編集長の訴追についても曲折が予想される。今回の逮捕によってWLの影響力が一気に衰える可能性は低いとの見方が多い。
スウェーデンの検察当局が11月中旬、女性2人に性的暴行を加えたとして逮捕状を請求したのを受け、国際刑事警察機構(ICPO)が国際手配。編集長は7日、滞在先の英ロンドン市警に出頭したが、スウェーデンへの身柄の移送のめどは立っていない。英メディアによると、移送に異議を唱えた場合、英国の裁判所での審理が2〜3カ月かかる可能性があるという。
一方、WLによる外交公電の暴露に神経をとがらせる米国をはじめとする各国政府は、WLが各国で使うサーバーの使用を止めようとしているが、全面的な封じ込めは容易ではなさそうだ。WLが直接使うサーバーを止めても、支持者が次々と同内容のサイト(ミラーサイト)を立ち上げているからだ。また、フランスの裁判所は6日までに、WLが使用していた仏インターネット接続会社OVHによるサーバー提供を禁止できないとの見解を示している。