Tuesday, December 7, 2010

例によって被害者を装う「行動する保守」――12月4日・渋谷での在特会・主権回復を目指す会・排害社による集団暴行事件について

12月4日午後、渋谷・マルイ前の交差点で、「領土奪還一周年記念 京都朝鮮学校解体デモ行進」なる差別・ヘイト・デモの参加者たちが、その主張に抗議する青年に集団で暴行を働き、あろうことか被害者を装って青年を警察につきだし、警察がその青年を逮捕するという事件があった。産経新聞は以下のように報じている。

デモ参加者に飛びかかり妨害するなどしたとして、警視庁渋谷署は4日、暴行の現行犯で、男(27)を逮捕した。 逮捕容疑は、同日午後3時25分ごろ、東京都渋谷区神南の路上で、デモに参加していた60代の男性に飛びかかり、暴行を加えたとしている。 同署などによると、デモの参加者が男を取り押さえ、デモの警備をしていた警察官に引き渡した。デモには約100人が参加し、朝鮮学校に対する抗議活動をしていた。http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/101205/crm1012050003000-n1.htm

おそらく警察発表を鵜呑みにしたベタ記事であり、その警察発表自体、自称「被害者」の言い分を鵜呑みにしたものにすぎなかったのだろう。「男(27)」は、渋谷署に2泊して6日の夕方、釈放された。「デモに参加していた60代の男性」とは、おそらくデモを実質的に主導し先頭を歩いていた西村修平(主権回復を目指す会)だと思われる。

「犯人」とされた青年本人が語る事件の詳細

その青年、崔檀悦本人から電話で聞いた話によれば、

(1) 「飛びかかって」はいない。
(2) もちろん暴行を加えてもいない。
(3) 逆にトラメガで殴られるなど、集団で暴行を受けてケガをしている。

ということである。詳しい経緯は以下のようなもの。

崔の行動の目的は、抗議アピールを書いた横断幕を真正面からデモ隊につきつけることだった。横断幕には「民族教育の権利を守るぞ!! 阪神教育闘争の精神を受け継ぐぞ!! 祖国統一! 우리는하나(我々はひとつ)- ANTIFA黒い彗星☆」と書かれていた。彼は、それを両手で広げながらデモ隊の先頭に「ゆっくり歩いて」出たのである。その瞬間西村修平がつかみかかり、自分の横に回って引き倒そうとしたため、思わず柔道の技で払ってしまった。

その後、先頭集団に囲まれ集団で暴行を受けたという。中でも排害社の金友隆幸は、肩にかけていた大型のトラメガを外しそれで殴ってきたため、崔檀悦はそれを奪って遠くに放り投げた(警察はそのトラメガを崔のものと思い込んで押収しており、釈放時に崔に返却しようとした。自分のものではないと明らかにした上で、トラメガの指紋を取ってくれと申し出たが、拒否されたという)。

すぐさま警察が割って入り、暴行されている崔檀悦を集団から引き離した。ヘイトスピーチに反対する会のブログによれば、《渋谷警察はかれを排外デモから引き剥がし、「保護」と称してかれを渋谷署に連行します。しかし、取調室に到着するや、前言をくつがえして「暴行による現行犯逮捕だ」とかれに告げ、そのまま署に勾留した》。

以上の一部始終は、第三者が撮影したこの動画に記録されている(3分20秒あたりから)。
http://www.youtube.com/watch?v=qvdXPdxFjt8#t=3m20

「主権」がアップロードした証拠でも裏付けられる崔檀悦の言葉

「被害」を主張する西村修平が率いる主権回復を目指す会がネット上にアップロードした動画や、参加者による「暴行の瞬間」とされる写真もまた、崔檀悦の証言を裏付けている。

まず、「暴行の瞬間」の写真として、以下のものがある。

有門大輔ブログ『極右評論』より

(画像は有門大輔ブログ『極右評論』より)

ベージュのスーツで斜めに倒れかかっている男が西村修平、その肩に手を回しているのが崔檀悦、そしてその右側で飛びかからんとしている黒い上着の日の丸鉢巻は、西村と同じく主権回復を目指す会の加藤哲史だと思われる。

この写真は、西村修平が「自分の横に回って引き倒そうとしたため、思わず柔道の技で払った」という崔の証言と一致している。ちなみに崔檀悦と話したのは彼が警察から解放された直後で、その時点で彼はネット上にどんな情報が流布されているのかを全く把握しておらず、当然この写真も見ていない。

さらに、「その瞬間」とされる動画がある。
http://www.youtube.com/watch?v=4FLmzsX09fU#t=1m10s

これは「主権」がニコニコ動画にアップしたオフィシャル動画の一部を抜粋したもののようだ。

youtubeにアップされた短縮版には問題の箇所のスローモーション(1分23秒あたりから)があり、それを見ると前進するデモ隊の前に黒い服の男が飛び出し、タックルして西村修平を倒しているように見え、実際にそれが崔であるかのように喧伝されている。しかし崔の証言および上の写真と合わせると、それは巧妙な印象操作にすぎないことがわかる。

飛び出している黒い服の男は白っぽい鉢巻をして日の丸を持っており、明らかにデモ参加者のほうだ。そして上の写真と合わせてみれば、それは加藤哲史でしかありえないことがわかる。この男が「飛び出し」たときには、すでに崔檀悦は西村修平につかみかかられた後なのだ。その崔に、加藤は西村もろともタックルをかけている。崔と西村は同時に倒れているから、仮に倒れたことで西村がケガをしたのだとすれば、その責は半分以上が加藤に帰するものだろう。

自らの集団暴行シーンをカットしてのデマ宣伝

そしてニコニコ動画にのオリジナル版では、カメラは事件の直前までずっと1カットでデモを映し出していたにもかかわらず、タックルシーンの直後11分26秒と27秒の間で突然カットが入り、目尻と口から血を流して警察に引き離される崔檀悦がいきなり映しだされる。

騒ぎの起こる直前、10分48秒あたりのシーンにはトラメガを右肩にぶら下げた金友隆幸が写っているが、カット挿入後12分38秒では金友はすでにトラメガを持っていない。以後、デモ終了まで彼は手ぶらである。ビデオのタイムカウンター上ではわずか2分弱。このわずかな時間に、金友はいったいトラメガをどこへやってしまったのだろうか。これも、崔の証言を裏付ける重要な映像である。

つまり、問題の集団暴行シーンは主権回復を目指す会によってバッサリとカットされているのだ。

これまでデモは必ず生中継してきた「行動する保守」だが、この日に日本各地で同時多発的に行われた各種団体のデモの中では、この東京デモだけが生中継されていない。西村修平はこの春からデモの生中継を認めなくなった。在特会その他の会員が、自らの犯罪行為の証拠を嬉々として生中継し、それを録画で公開することに業を煮やしてのことである。その狙いはもちろん、今回のようなことが起きたときに、都合の悪いシーンを「なかったこと」にするためにほかならない。

当日現場にいなかった私が公開された資料と被害者(本当の)本人の証言から言えることは以上だが、こうした「証拠」を検討するまでもなく、事実関係はほぼ最初から推測していた通りだった。なぜそういう推測ができたかというと、これが「行動する保守」のあまりにもお決まりのパターンだからである。

 

これまでも繰り返されてきたマッチポンプと被害の捏造

在特会や主権回復を目指す会は、これまで何度もこのような暴行事件を起こし、そのたびに自ら被害者なりすまして逆に被害者を加害者扱いするデマ宣伝を行なってきた。

今回もさっそく排害社の金友隆幸が「先頭を歩いていた主権回復を目指す会の西村修平代表を投げ飛し、全治3週間の怪我を負せ、他のデモ参加者に暴行をふるった」などと紋切り型の被害報告を書き連ねているが、これまで見てきたことから明らかなように嘘八百である。

また、在特会は東京支部長秋津昭男の報告 として「当該鮮人は果敢にも一人でなにやら横断幕らしきものをもって攻撃を仕掛け、まずはデモ隊先頭で3人の女性が横断幕を持っているところから攻撃を仕掛けてきました」としているが、これも写真を見れば明らかなように真っ赤な嘘である。それ以前に、会長の桜井誠が自ら「反日左翼は突っ込んでこい!」と煽りに煽ったデモで、彼らはあえて女性を先頭に立たせていたのである。それは、このような場合に「女性を狙った」というデマをしたてあげるために、女性をいわば人間の盾に使ったとも言える配置である。

そのことは、「デモ隊のウィークポイントである先頭の女性3人めがけて突っ込んでくること」について秋津が「感心」していることからも明らかだろう。「当該鮮人が目的のためなら手段は選ばないという固い決意を感じる」などと行っているが、これはそうした「攻撃」に「感心」してしまう自分の心情を存在しない事実に投影してしまっている状態だろう。「本当に子供と闘う在特会」「女性を集団暴行する行動する保守」とこれまでさんざん嘲笑されてきた彼ららしい本音が、こんなところで露呈しているのである。

次のエントリーでは、彼らのこの王道パターンとでもいうべき捏造が、過去実際にどのようにして行われてきたか、そして、誰がどこでどんなウソを言ってきたかを明らかにしたいと思う