コラム:ギズモード
サウンドバイトにご用心。国際指名手配のWikiLeaks創始者ジュリアン・アサンジ、「性犯罪」容疑の中身とは?
2010年12月7日 11時34分 (ギズモード・ジャパン)
インターポールがウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジを「婦女暴行」容疑で国際指名手配しましたね。
「首とって性器口に突っ込んで盆に首載せて持ってこい!」とアメリカのタカ派はいきり立っているわけですが、原告のスウェーデン女性2人は「いわゆる婦女暴行で最初訴えたんじゃない」という話もあり、謎は深まるばかりです。なんでも元々彼を訴えたのはレイプじゃなく、コンドーム使わなかったからだって言うんですよ。
途中で容疑が増えたのですが、最初は警察の捜査でもスウェーデン検察庁の調べでも性交渉はどちらも「合意の上だった」とあったんです。じゃあ、何をやらかしたのか?
アサンジ側弁護士がAOL Newsに語った話によれば、捜査当局は彼を「sex by surprise(不意打ちの性交渉)」なる容疑で取り調べたがっていたのだそうですよ?
【写真付き解説(続き)】
「sex by surprise(不意打ちの性交渉)」容疑とは?
スウェーデン法では、女性がコンドームをつけるよう男性に求めてもつけない場合、たとえセックスが完全に両者合意の上であっても、女性は男性を訴えることができます。まさにこれが今回のケース。この犯罪行為をあちらでは「sex by surprise」と呼び、有罪が確定すると罰金最大5000スウェーデン・クローナ(6万円)の刑となります。懲役刑にはなりません。
Daily Mailが入手した警察の調書によると、アサンジ氏は今年8月11日、ストックホルムで開かれた社会民主党主催のイベントで原告の女性2人と知り合った模様です。
最初の女性は「アサンジのアパートで性交渉の最中、コンドームが破れた」として彼を訴えました。でも翌朝ふたりとも普通に振舞う姿が目撃されているので、何日か経ってから不意に女性の気が変わって破れたコンドームの件で彼を訴える気になった、ということになります。
2番目の女性(27歳のフォトグラファー)の警察への供述も妙なんですよね...。女性がイベントに出席したのはアサンジの大ファンだったからで、その日は他の人と同席だけど氏と一緒にランチまで漕ぎ着けた、と。それから2日後、電話で話し、ストックホルムから64km離れた自分のアパートに彼女の方から彼を招待した。切符代は彼女もちで。太っ腹ですね。彼女曰く、アサンジ氏には現金の持ち合わせもクレジットカードもなかったそうですよ?
そこまではいいんだけど、列車で移動中も「彼は私より自分のコンピュータの方に気を取られていた」ので、自宅アパートに着く頃には「情熱も興奮もすっかり消え失せていた感じだった」。でもまあその夜はコンドームを使って性交渉はした、と。
翌朝再び性交渉したのですが、今度はコンドーム使わなかったって言うんですね。この点についてニューヨーク・タイムズは女性の友人たちから、コンドームを付けるまで嫌だと彼女が訴えても彼は聞く耳を持たなかったのだ、という談話を取っています(取材ご苦労様...)。でもまあその朝も性交渉はした、ということです。
アサンジ氏は無理強いなんか全然してない、と主張してます。女性側も警察への最初の供述ではレイプされたとは訴えてなくて、あの朝コンドームを使わなかったのが問題だと言ってたんです。
中傷キャンペーン?
「コンドームをつけない不届き者」となじることはできるけど、最初はどちらのケースともレイプの訴えは含まれていなかったのですね。「アサンジはレイプ犯」と叩いた多くのマスコミの論調とはかなりの隔たりがあったのです。
インターポール(国際刑事警察機構)は逮捕令状に「多数の性犯罪(a number of sexual offences)」と表記しているんですが、「sex by surprise(不意打ちの性交渉)」が犯罪として成り立つのはスウェーデンだけなので海外の人には話が全く通じませんよね...。世界中で「痴漢」、「破廉恥」、「強姦」、「性犯罪」、「婦女暴行」、「レイプ」など自由度の高い翻訳がなされた、その責任は甚大かと...。
マスコミ(米国ならタカ派のFOXとか)も「レイプで指名手配」というラインの方が、「アサンジ、破れたコンドームと朝セックスでのコンドーム未使用容疑で指名手配」よりインパクトありますから飛びついちゃったのかもね。それとも単にマスコミは政府の不正追求を助ける人のことが嫌いなのかも...本来それがマスコミの仕事なのに。
もうウッドワードとバーンスタイン(米史上最大のスクープ「ウォーターゲート事件」を報じた記者。『大統領の陰謀』でホフマンとレッドフォードが演じ映画化)の長髪とコーデュロイジャケットが流行る時代じゃないのかな。
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以上の記事が出た直後、スウェーデン検察庁から「レイプ、性的虐待、違法な強制」と容疑倍増で正式な逮捕状が出て、結果オーライになった、というわけですね。いやあ...。
米国ではスパイ容疑で逮捕状とるような動きもあるんですが、それをやるなら「同時報道に関わったNYタイムズ、ガーディアン、シュピーゲル、ル・モンド、エル・パイスの記者総勢120名にも逮捕状とらないと...」という厄介な側面もありますし、結局この別件の性犯罪なる容疑で行方を追ってるわけですね。
それにしても有罪判決も出ないうちから「無罪かも」と疑ってみる基本中の基本も抜きで犯人扱いする人の多いこと多いこと...。世の中の風評をベースに人を裁いた異端審問官(裁判官・検察官・処刑人)ならいざ知らず、今はデュープロセスもありますし、アサンジ氏もイギリスに雲隠れして無罪主張してても拉致が明かないので、ここは一刻も早く法廷に出て、身の潔白を晴らしてもらいたいものですね。
[AOL News and Daily Mail]
Jesus Diaz(原文1、原文2、原文3/satomi)
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