客待ちのタクシーによる渋滞や事故の危険性を解消しようと、県警や県タクシー協会が広島そごう(中区基町)に面する国道54号の一部を通行止めにして車線を規制した社会実験が先月30日、終了した。実験終了後には、交差点に進入して駐車するタクシーが早くも出現。県警はタクシー協会などにアンケートを実施して効果の把握を進めているが、問題解消は一筋縄ではいかないようだ。【中里顕】
社会実験は、11月の1カ月間、国道54号にある3車線の北進道路のうち、中央分離帯寄りの1車線を一部封鎖した。それまではタクシーベイ(9台分)からあふれて駐車したり、交差点に進入して止まっているタクシーの姿が目立っていた。県警によると、期間中は違法な駐車は見られなかったという。しかし、実験中は周辺道路でのタクシー駐車を巡る苦情が、10月と比べて倍近くになる場所も出たといい、「いたちごっこになっていた」(県警関係者)。
県警はホームページを通じて市民からの反応を集めている。これまでに、「道路を一部封鎖してまでやる意味があるのか」「旧広島市民球場の跡地にタクシーベイを作ったらどうか」といった意見が寄せられた。
一方、社会実験終了後の国道54号は、以前のようにタクシーベイからあふれて客待ちをするタクシーの姿が目立ち始めた。ある個人タクシー運転手(60)は「ここが客待ちするのには一番良い場所。最初はみんな自重していたが、時間の問題だった」と話す。
県タクシー協会などは日中、街頭指導員を設置し、違法駐車の撲滅に努めているが、「トイレに離れただけで、すぐにタクシーベイからあふれる」(街頭指導員)。街頭指導員が監視している間も、歩くスピードにも満たない「のろのろ運転」で客を拾おうとするタクシーもあり、渋滞を引き起こしている。
「タクシー運転手の意識を変えてもらう」のが実験の目的だったが、県タクシー協会の松田弘生事務局長は「やっている間は確かに効果があったかもしれないが、実験が終わると同時に元通り。非常に残念だ」と語る。
毎日新聞 2010年12月7日 地方版