13日の日米首脳会談は、軍事、経済両面で台頭する中国をけん制しながら連携強化をアピールする場となり、「対中国」が傷ついた同盟をつなぎ留めていることを印象づけた。しかし、米軍普天間飛行場の移設問題は依然として解決の道筋は見えず、日米安保条約改定50周年に合わせた共同声明も先送りせざるを得なかった。11年の春に見込まれる首相訪米に向けて、本格的な日米関係の修復が急がれる。【西田進一郎、大貫智子】
会談では、尖閣諸島沖の漁船衝突事件で日中関係、メドベージェフ露大統領の北方領土訪問で日露関係が悪化する中、米国が日本の立場を一貫して支持していることに菅直人首相が謝意を表明。オバマ大統領は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の日本の協議開始方針を歓迎し、将来の日本の国連安保理常任理事国入りに支持を表明するなど、双方とも随所に対中けん制を意識した発言が目立った。
鳩山前政権時代、普天間問題をめぐってぎくしゃくした日米関係は、5月の日米合意を順守する姿勢を示す菅政権の誕生や米国に人脈を持つ前原誠司外相の就任が「米国側に安心感を与えた」(日米外交筋)ことで、修復に向かってきた。尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件や南シナ海での海洋権益拡大を図る中国に対し、日米双方が共同歩調をとる必要性に迫られたことが関係修復を後押しした。
しかし、前政権で揺らいだ日米関係の足元は固まっていない。首相は大統領に対し「沖縄県知事選(28日投開票)の後に5月の日米合意をベースに改めて最大限の努力をしたい」と伝えたが、普天間問題の解決の見通しは全く立っておらず、「日米間で安保の議論が詰まっていかない要因」(外務省関係者)となっている。サイバーテロ、情報保全に関する突っ込んだ協議に至らず、今回の会談は「通過点」との位置付けとなったと言える。日米関係に詳しい民主党中堅議員は「あまりに米側の期待値が低かった。普天間問題の傷は深い」と話す。
共同声明見送りについては、両首脳は「来春に出せるよう努力する」ことで合意したが、外務省関係者は「不安定な東アジア情勢を前に防衛費を減らし続ける日本に対し、米側は理解に苦しんでいる」と指摘する。米軍の抑止力や自衛隊のあり方をどうするかなど、鳩山前政権の退陣で立ち消えとなった議論をおこし、結論を導けるか。次回の首相訪米に向けて「現実主義外交」の内実が問われる。
毎日新聞 2010年11月13日 東京夕刊