横浜で13日開かれた日露首脳会談で、ロシアのメドベージェフ大統領は北方四島を自国の領土と主張し、領土問題での譲歩を拒否する過去にない厳しい姿勢を鮮明にした。ロシア側が領土問題を棚上げして経済協力を優先するよう提案したのに対し、仙谷由人官房長官は15日の記者会見で「大統領の提案に、そのまま『はいはい』という話にはならない」と反発、北方領土交渉の展望はいっそう不透明になった。
ロシアのメディアが伝えたラブロフ外相の説明によると、首脳会談で菅直人首相が大統領の国後島訪問に抗議したのに対し、大統領は「我々の領土であり、これからもそうだ」と反論、「感情的な声明はやめた方がよい。問題解決の助けにならず逆効果」と述べたという。
大統領は13日夜には簡易ブログのツイッターで、北方領土問題を「解決できない論争」と表現。ドボルコビッチ大統領補佐官は14日、「日本のビジネス界は(北方領土という)複雑な問題の解決を待たずに(ロシアと)仕事をしたいと考えている」と発言した。
福山哲郎官房副長官は15日のNHK番組で、首脳会談で大統領が「訪問は当然のことだ」と述べたことを明らかにした。
ロシア側の硬化の背景には、最近の日露間の認識のずれがある。メドベージェフ大統領が08年11月、「型にはまらない独創的なアプローチ」を提案した後も、日本側は「ボールはロシア側にある」と待ちの姿勢を続けた。
ロシア側によると、平和条約締結後に歯舞群島と色丹島の「2島」を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言を基礎にする考えを伝えたが、日本側は受け入れず、逆に「(北方四島は)日本固有の領土」とする改正北方領土特措法の成立や、「(ロシアの)不法占拠」とする政治家の発言が相次ぎ、ロシア側は強く反発した。
ロシアでは2012年に大統領選があり、日本外務省幹部は「大統領選までは交渉は進まないと思った方がいい」と語った。【大木俊治、犬飼直幸】
毎日新聞 2010年11月16日 東京朝刊