菅直人首相が6日、社民党との関係強化を強調したのは、政権運営の軸足を社民、国民新の「旧連立」連携に置き、臨時国会で対立が鮮明となった自民、公明両党をけん制する狙いがある。社民党との連携が実現すれば法案が参院で否決されても衆院の再可決で成立させられる3分の2の議席をギリギリ確保できる。ただ、米軍普天間飛行場移設問題など隔たりが大きい政策もあり、与党内には将来的な公明党との連携への布石との見方もある。【野原大輔、影山哲也】
「来年に向かって政策を実行していくための態勢を強化する」。首相は会見の冒頭、重要法案がほとんど成立しなかった臨時国会の結果を念頭に、政権運営のあり方を見直したうえで通常国会に臨みたい考えを強調した。
菅政権は臨時国会で公明党と連携し参院で多数派を形成する戦略を描いたが、同党は仙谷由人官房長官らの参院での問責決議に同調。直ちに連携を持ちかける環境にはなく、社民党重視へとかじを切った。社民党にとっても、民主党政権が公明党と連携し参院で多数派を占めれば存在感は一気にうせるとの警戒感があり、「与党と協力して党の政策を実現すべきだ」との意見が根強くある。
社民党取り込みに当面の「障害」となるのが武器輸出三原則の緩和問題。福島瑞穂党首は6日の首相との党首会談で「見直しなら政権との距離を考える」とけん制。同席した民主党の岡田克也幹事長は緩和を盛りこんだ党政調提言について「幹事長として一定の留保をつける」と伝達。党常任幹事会で「提言の実施に際しては政権運営、国会運営の観点も考慮する」と提起し了承された。その後の政府への党政調の提言では社民党に配慮し、予定されていた防衛大綱の提言を見送り、この結果、10日にも予定されていた大綱の閣議決定は来週以降にずれ込むことになった。
ただ、直ちに社民党が連立復帰するわけではない。首相は6日の記者会見で当面は共通の政策での部分連合を目指すまでにとどめた。社民党も、県外移設を掲げる普天間問題で「民主党がどこまで配慮してくれるのか分からない」(幹部)と「数合わせ」に利用されることを警戒する。
仮に民・社連携が整っても法案成立まで時間がかかる「再可決カード」の乱発は政権弱体化を招くおそれもある。このため国民新党の亀井静香代表は6日夜のBS11の番組で「(社民党を含めて)我々でやれるという態勢を作れば、公明党も(連携に)のってくる」と指摘。まず法案を成立させられる態勢を固め、有利な状況のもとで公明党などと政策を通じた連携を深める、という二段構えの構想を描く。
毎日新聞 2010年12月6日 21時15分(最終更新 12月7日 0時31分)