|
きょうのコラム「時鐘」 2010年12月7日
「あえのこと」が奥能登各地で行われた。古式ゆかしくといっても、長い間に形を変えるのが伝承行事である。今年は金大が調査した。古い姿の解明に期待したい
例えば、田の神様は「目が見えない」とされる。しかし、民俗学によると元々そうではなかったらしい。目が見えない人を案内するくらい丁寧に招き入れるため「目が見えない神様」になったと推測されている 稲の収穫に感謝する新嘗祭(にいなめさい)とつながる行事であり、宮中では冬至のころに行われた。その古式が奥能登に残っているのが不思議でならない。ただ、瑞穂(みずほ)の国の重要な祭りも形を変え、旧暦の感覚がない現代では収穫と季節の関係が分かり難い 先ごろ藤原京跡で、発掘された最古の大嘗宮(だいじょうぐう)跡が誤認だったと訂正され話題になった。繰り返し整地された自然のくぼみを柱穴と見誤った結果だった。祭祀(さいし)の形は時代や地域で変わるのに、定型にこだわって起きた誤認騒ぎではなかったか 伝承は形を変え、旧暦でしか理解できないものが多くなったが「あえのこと」は先人の苦労と自然への感謝を強く伝える。大切にしたい心の文化遺産だ。 |