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養殖の方法について

Q14 トリガイの養殖はどのようにして行うの?

トリガイはカキやホタテガイ等と異なり、砂泥等に潜っていないと生きていけません。養殖する場合も何か(底質)に潜った状態で育てる必要があります。そこで、アンスラサイトという底質を入れたプラスチック製コンテナ(60×40×深さ20cm)に稚貝を入れ、上面を天敵の侵入を防ぐため網フタでおおい、これを水深6m前後の海中につるす方法で養殖しています(写真1)。
トリガイは海水中の植物プランクトンを餌とするため、餌を与える必要はありません。しかし、コンテナ、網フタにムラサキイガイ、フジツボ等の付着生物が付きますので、1cm目合の蓋を用いている11月頃までは1ヶ月ごとに、2.5cm目合のフタを用いてからは2ヶ月ごとにコンテナおよびフタの交換作業等が必要です(写真2)。
7月中旬頃に大きさ約1cmで養殖を開始し、翌年の6~7月には8.5cm前後に成長し、収穫します。養殖は1年サイクルで実施できます。殻長約8cm以上の大型の貝は「丹後とり貝」というブランド名を付けて販売されています。(詳しい内容は季報参照)

写真1 養殖中のコンテナ 写真2 養殖作業風景

Q15 養殖コンテナにトリガイを何個入れるの?

養殖コンテナ(60×40×深さ20cm)に入れるトリガイの個数は、トリガイの大きさによって変えていきます。殻の大きさ1~2cm(養殖開始時)では200個、3~3.5cmでは50個、3.5~4.5cmでは40個、4.5~7.5cmでは30個、7.5cm以上では25個です。

Q16 天然貝と養殖貝のちがいは?食べるものは同じ?

天然貝と養殖貝の一番大きな違いは生まれた時期です。天然貝が秋生まれのものがほとんどに対して、養殖貝は春生まれです。
天然トリガイは天敵による食害で、秋生まれがほとんどになると考えられていますが(Q8 参照)、養殖では完全に天敵から保護できますので、より成長が早く、飼育期間が短い春生まれの貝を用いています。

天然貝と養殖貝の食べるものは、全く同じ植物プランクトンです。

Q17 養殖は自然にはできないの?

おそらくトリガイの子供を放流してトリガイ資源を増やすことを言われているのではないかと思います。しかし、残念ながら放流してトリガイを増やす試みは事業的には成功していません。
数mmから5cmの大きさのトリガイを天然の海底に放流して調べたところ、放流1ヶ月以内にヒトデ、カニなどの天敵に食べられてほとんど生き残らないことが明らかになりました。生き残る貝が見られるようになるには、殻の大きさが6cm以上の大きなサイズで放流した場合だけでした。その大きさになるまで育てるには、養殖と同じ方法で6ヶ月間育てなければなりません。あと5ヶ月間育てれば立派な養殖貝となりますので、放流する意味はあまりありません。

Q18 身が分厚く大きくなる育て方があるの?

海洋センターが作成した養殖マニュアルにしたがって、ていねいに心をこめて世話をし、飼育コンテナの交換と飼育密度の調整をしっかりとすれば大きな貝が育つと考えられます。

Q19 手抜きをすると貝が曲がるのはなぜ?

飼育コンテナの交換作業と飼育密度の調整をしっかり行わなければ、奇形貝(写真)が増加することが明らかになってきています。その原因は今のところ分かりませんが、おそらく飼育環境が悪化することが原因ではないでしょうか。

正常貝(左)と奇形貝(右)

Q20 水中から上げる毎に養殖貝の殻にスジ(障害輪)ができるそうですが、そのことによって貝が弱るのでは?

養殖中には飼育容器などが汚れますので、決められた期間ごとに容器を新しいものに交換する必要があります。そうした作業を行う時にはどうしても貝を取り上げなければなりません。また、トリガイは非常に成長の早い貝ですので、このような作業を行うと貝殻にスジがでます。しかし、そのことによって貝が弱って成長が低下したり、死んでしまったりすることはほとんどないようです。それよりも、こうした作業を行わないと飼育環境が悪化して成長や生残に悪影響を与えてしまいます。

Q21 アンスラサイトは何から作られているの?

アンスラサイト(写真)とは粒径が2~3mmでほぼ一定した無煙炭(良質な石炭)の一種であり、水道水や海水のろ過に用いられるろ材で、砂に比べ比重が軽いのが特徴です。

アンスラサイトの中に潜るトリガイ

Q22 アンスラサイトでないと育たないの?他の砂ではどうなるの?

砂や他の園芸用土などでも育ちますが、アンスラサイトを使って育てると、成長が早く生き残りも良好でした。

Q23 アンスラサイトはなぜトリガイに役立つの?他の貝にも役立つの?

コンテナに入れた砂は、最初はふんわりとしていますが日時が経過するにしたがって、だんだんかたくしまってきます。いろいろな種類の材質のものを底質に用いて試験したところ、しまりにくい底質ほどトリガイの成長が良いことがわかりました。その中でもアンスラサイトが一番しまりにくい底質でした。さらにアンスラサイトは軽いため、砂などを入れた時に比べコンテナの揚げ降ろしの作業がかなり楽になりました。

アンスラサイトを用いて他の貝を飼育したことがありませんので、成長が早くなるかどうかはわかりません。
本来トリガイは海底ではふんわりとした泥の中に生息していますが、アサリなどはかたい砂中に生息していますので、アサリにはアンスラサイトによる成長の促進効果は少ないのではないかと思われます。