【泣いて笑って踏ん張って　役者・芸人貧乏物語】イジリー岡田（タレント）

●交通費が自腹だったので基本は歩き

　モノマネ芸人の登竜門「発表！日本ものまね大賞」（フジテレビ）で敢闘賞を受賞したのがきっかけで、ホリプロにスカウトされたイジリー岡田さん。同社のお笑い部門第１号タレントとしてコントコンビ「キッドカット」でデビューしたのは８６年４月だった。

　だが、９１年１０月にスタートした伝説の深夜エロバラエティー「ギルガメッシュないと」（テレビ東京）のレギュラー出演で全国区人気になるまでの５年半は、１０円単位の出費も惜しむギリギリの下積み生活が続いた。

「実家が埼玉県浦和市（現・さいたま市）なので住居は心配なかったものの、仕事先までの交通費は全額自腹。毎月７万〜８万円のアルバイト収入しかないのですから、交通費をいかに削減するかは大命題でした」

　最寄り駅は徒歩２０分少々のＪＲ京浜東北線浦和駅。デビュー当時、新宿駅までの運賃は３４０円だったが、１駅都心に近い南浦和駅から乗れば７０円安い２７０円だ。ただし、南浦和駅までは約３キロの道のり。歩くと４０分ほどかかる。だが、選択の余地などあろうはずもなかった。

「往復１４０円はムチャクチャ大きいですよ。その頃、駅の立ち食いそば店では、２００円ほどでそばやうどんが食べられましたから、１往復半で１食分。２日頑張れば、ちょっとリッチに１個５０円の生卵をのせて『月見』にしてもお釣りがくる。こう考えて、都内での移動も１駅、２駅なら、当然歩いてました」

　土砂降りでも雪が降っても、仕事やアルバイトで疲れていても、基本は歩き。駅までバス便もあったが、２００円近くするので論外だ。

　もっとも、食費も“仕分け”の対象である。給料やギャラが入った日に、牛丼チェーン店で舌鼓を打つのが唯一のぜいたくで、普段は外食を極力控えていた。

　だから、仕出し弁当付きのテレビの収録日は、とても楽しみだったという。

「８０年代後半はバブル期でしたから、予算はたっぷり。今では考えられませんが、１０００円以上するような弁当が楽屋や収録現場に山積みになっていて、担当者に一言断れば、お持ち帰り自由でした。貧乏芸人にとっては、まさに宝の山。ボクは汁がこぼれても平気なように持ち帰り用ビニール袋持参で現場に入り、いつも２個いただいていたものです」

　そんな下積みを経て、今ではベテラン。笑劇団「東京アンテナコンテナ」の主宰者のひとりとしても活躍中だ。

　１２月３１日、東京・お台場の東京ジョイポリスで「カウントダウンパーティー’１０―’１１」を予定。２３時２０分スタートで、元日の未明までオールナイトだ。詳細はＧＲＥＥの公式ブログで発表する予定。

（日刊ゲンダイ2010年12月3日掲載）