銀輪の死角

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銀輪の死角:安全も売る自転車店 顧客に交通ルール指導--東京・練馬

 ◇練馬の10店主「資格」取得

 自転車と歩行者の事故がここ10年で3・7倍に急増する中、街の自転車店が販売時に交通ルールを教える取り組みを進めている。東京都練馬区で自転車店を経営する小沢豊さん(61)は、地域の同業者9人に呼び掛け、交通安全協会(安協)の「自転車安全教育指導員」の資格を取った。自転車店は減る傾向にあるが、「安全も売りたい」という活動に、事故減少につながるとの期待が寄せられている。【馬場直子】

 「歩道は歩行者のもの。ベルは鳴らさないで」。新しい自転車を買った顧客に、そう声を掛ける小沢さんは、交通課勤務も経験した元警察官。商売好きが高じ、庶民の足として利用される自転車に注目して77年、「オザワサイクルショップ 緑の国」を開業した。子供たちには「白線の内側を走るんだよ」と優しく諭す。

 自転車事故が増えだした10年ほど前、店頭で交通ルールを教え始めた。日課の夜の散歩で、無灯火や2人乗りなど自転車の交通違反が多いと気付いたのがきっかけだ。違反をすれば事故の確率が高まる。09年の自転車事故のうち自転車側に道路交通法違反があったのは67%、死者が出た事故では74%に上る。

 小沢さんは長年、地元小学校の依頼で自転車講習会に参加してきたが、児童も保護者も、左側走行など基本ルールを知らなかった。「もっと詳しい知識を持って、販売時に伝えられないか」。自転車安全教育指導員の資格があることを昨年に知り、今年の初夏、練馬区の同業者とともに指導員の資格取得のための講習を受けた。

自転車安全教育指導員の資格を持つ自転車店主の小沢豊さん。販売時に交通ルールについても声を掛けている=東京都練馬区で馬場直子撮影
自転車安全教育指導員の資格を持つ自転車店主の小沢豊さん。販売時に交通ルールについても声を掛けている=東京都練馬区で馬場直子撮影

 指導員は09年末で全国に1万6786人。全日本安協や各都道府県安協で道路交通法や自転車の保険などについて講習を受けて認定されるが、自転車店主は少ないという。一方、街の自転車小売業者は量販店に押され、国の統計では97年の1万5551業者から07年には1万1467業者に減った。全日本安協の自転車担当者は「販売時や点検・修理時に自転車店に交通ルールも教えてもらえれば、事故を減らす一つの力になる。こうした動きが広がってほしい」と話している。

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毎日新聞 2010年12月3日 東京夕刊

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