銀輪の死角

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銀輪の死角:自転車大国・デンマーク環境相「事故急増悲しい」 都心を試走

 ◇「専用通路が必要」

 世界有数の「自転車大国」とされるデンマークのカーレン・エレマン環境相(41)が国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)出席のため来日し、東京の自転車事情を視察した。同国環境省は二酸化炭素削減につながるとして自転車の普及を支援しているが、自転車と歩行者の事故が急増している日本の状況を「大変悲しい」と語り、「自転車専用通路の整備と子供からの交通教育が重要だ」と強調した。【森禎行、馬場直子】

 デンマークは人口100人あたりの自転車保有台数が約80台で世界3位とされる。首都コペンハーゲンでは市民約70万人の40%近くが通勤や通学に利用し、全国で約3000キロの自転車専用通路が整備されている。日本は面積が約9倍ありながら、専用通路は約2800キロにとどまっている。

 エレマン環境相は、名古屋市で開催中のCOP10出席のため来日したが、これに先立ち26日、駐日デンマーク大使らとともに、自国のバイオメガ社製のモダンな自転車に乗り、皇居周辺や銀座など都心の約5キロを約30分かけて回った。

 視察後、エレマン環境相は「車が近づいても運転手と目を合わせれば(接触しないよう)気をつけてくれたので安全に運転できた。東京は自転車に適した街」と感想を語った。一方で、日本では歩行者と自転車の事故がここ10年で3・7倍に急増していると聞かされ「事故減少のためには自転車専用の車線をもっと造るべきだ」と指摘。「コペンハーゲンでは自転車専用信号も整備されており、車より先に自転車が青信号に変わる。交通がスムーズになり事故も減った」と説明した。

 デンマークでは、親ではなく年長の子が年少の子に交通ルールを教えることで、子供のころから交通安全を意識付けし、夏休みには自転車普及を図る大規模なキャンペーンも行っているという。

 また、エレマン環境相は「専用通路の整備が進んだ地域では自転車が2割増え、車が1割減った。排ガスが減るだけでなく、自転車に乗って体を動かすのは健康によく、医療費削減につながり政府予算も減る」と、環境面だけでなく健康面でも効果があると指摘。コペンハーゲンは15年までに、通勤や通学などでの自転車利用率を50%に上げることを目標にしているという。

 さらに「両国で魅力的な自転車の開発などで協力し、デンマークの自転車政策を日本に広めたい。日本人はゴミを捨てないなど自分を律する意識が高い。車を使う習慣も変えられるはずだ」と語った。

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毎日新聞 2010年10月27日 東京夕刊

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