銀輪の死角

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銀輪の死角:専用通路モデル地区 効果にも地域差

 車や歩行者と分離した、安全な自転車用通路を整備する先行例とされた「自転車通行環境整備モデル地区」。16日公表された整備状況では、全国各地で大きな地域差が生じていた。利用者に評価された地区がある一方、交通の混乱や住民の反発で計画が立ち往生した地区も。国による一律の整備ではなく、地域ごとに独自の整備を行う必要性も指摘されている。【馬場直子、北村和巳】

 ◇荷降ろし不便▽車道と間違え▽危険と撤去

 ■東京都江東区

 JR亀戸駅近く、大型車の通行も多い国道14号の両側に、鉄柵と縁石で区切られた幅2メートル、長さ400メートルの自転車道がある。片側4車線の両端1車線をつぶし、国土交通省と警視庁が08年3月設置した。両外側には幅4・5メートルの歩道もある。

 利用者には好評だ。子供を後ろに乗せて習い事に送る自転車の女性(38)は「横を車が走っていても怖くないし歩行者も気にしなくていい」と話す。歩道で7カ月の子をベビーカーに乗せた女性(22)も「歩道を自転車が走ってきて、ひやっとすることがある。自転車道があると歩きやすい」。

 だが、この区間の前後に計800メートル延長する整備計画は進んでいない。沿道町内会から「荷降ろしができない」「商店への出入りが困難」との声が上がったためだ。国交省などが沿道住民ら380人に行ったアンケートで「道路の利便性が良くなった」と答えたのは4割だった。

 ■名古屋市

 国交省は09年10月、中心部の国道19号の320メートルを片側4車線から3車線に減らし、幅2・8メートルの自転車道を実験的に設置して1カ月間、利用調査を行った。自転車の91%、歩行者の76%が「安心して通行できる」と答え、自転車道の利用率も通勤時間帯79%、日中62%と高かった。車の平均速度にも変化はなく、国交省は今年7月、この区間を含む800メートルで自転車道の整備に着手し、今年度中に完成予定だ。

 ■富山市

 住宅街からJR富山駅へつながり、通勤・通学の自転車利用が多い県道に、富山県は08年12月、自転車レーンを350メートル設けた。片側3車線の一つをつぶし、青く塗装して幅1・5メートルを確保した。だが、09年1月の平日午前中3時間に行った調査では、通行自転車119台のうちレーン利用は12台と1割で、107台は歩道。車線と間違え進入した車が31台もあった。今年4月の調査でもレーン利用の自転車は3割にとどまった。県は「原則車道走行の認識が低く、教育しないとレーンの効果はない」と話す。

 ■長崎県大村市

 09年5月から2カ月間、高校生の通学が多い県道約600メートルで、片側2車線の幅を狭め、車道の両端に1・5メートル幅の自転車レーンを設けた。だが、バス会社やトラック業者から「車線が狭くなって危険」との不満が相次いだ。高齢者らからは「すぐそばを車が通って怖い。歩道の方が走りやすい」との声が出た。

 県道は、高速道路のインターから長崎空港へのアクセスにあたる。県や市などは結局、安全性に問題があるとして自転車レーンを撤去した。歩道に自転車通行路を設ける案も浮上しているが、具体化していない。

 ◇整備済み0%のモデル地区のある自治体

 青森市

 東京都武蔵野市

 新潟県小千谷市

 名古屋市

 京都市

 京都府京田辺市

 京都府福知山市

 兵庫県西宮市

 和歌山市(2カ所)

 鳥取県米子市

 北九州市

 佐賀市

 長崎県大村市

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 情報やご意見、体験談をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100-8051毎日新聞社会部「銀輪の死角」係)でお寄せください。

毎日新聞 2010年9月16日 東京夕刊

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