PJ: 田中 大也
出版サイドが「野放し」論に対応した 東京都青少年健全育成条例改正案反対記者会見
2010年12月03日 08:54 JST
【PJニュース 2010年12月3日】著名な漫画家や出版関係者が揃って反対の意思を表明した11月29日の記者会見の様子は、多くのマスメディアに取り上げられた他、動画サイト「ニコニコ動画」でも、生中継され、多くの人に視聴されることとなったが、その中で、極めて特徴的な出来事が起こった。公式の場での関係者コメントという形で、「野放し」論への反論がなされたのだ。
野放し論とは、何かを規制しようとする論調の際に、マスメディアや行政によって、極めて頻繁に用いられる「法規制がなされていないため、●●の流通は、野放しになっている(氾濫している)」というものである。ここ十年ほどの間にも、未成年者の穏当なヌードや水着の映像や画像、暴力的表現のあるゲームや、性的凌辱描写のあるゲームなど、極めて多くの表現物や物品が、野放しであると槍玉に挙げられてきた。
だが、販売や流通が合法である以上、自由に堂々と市場に出回るのはそもそも当然の話であり、それを「野放し」などと称してバッシングするということ自体が理不尽ではある。
言説中の文言を「反政府的な言説が野放しになっているが、法規制されていないために手出しできない」とでも入れ替えてみれば、野放し論の危険性と愚かしさがはっきりと見えてくるのだが、表現に限らず、あらゆるものをバッシングすることができ、手軽に「社会問題」を「創作」することができる野放し論は、訴求性が高いこともあって、いまだに多くのメディアで、当たり前のように用いられてしまっている。
さて、野放し論を前提に何がしかの問題に取り組むことになると、大なり小なり、水掛け論的な話になってしまう。製作側は、合法な範囲の枠内で作っているのだから問題ないということになるし、問題提起をする側とすれば、合法的に流通していること自体が問題なのだから規制すべき、となる。こうなってくると、議論も容易ではない。
だが、今回の会見によって、「出版ゾーニング委員会」や、様々な自主規制の動きがあることを出版サイドは示し、「18禁」でなくてもコンビニ売りの雑誌に関しては小口シール止めを行うなど、自主規制の動きを積極的に行っていることを明らかにした。
「野放し論」に関しても、「コンビニや書店などでは、大人向けの雑誌はほとんど開くことができない。ほとんど購入できるものがない状況だ」といった旨のコメントを出し、ほとんど完全に自主規制が成り立っている点を指摘した。また「不健全図書」など、行政からの指導と、言わば二人三脚のような形で成り立ってきた規制という特徴性から、「意を汲んで行っている」という証明を見せることにもなった。
会見の模様が各紙で報道されたものの、こうした出版業界の取り組みに大きく記事を割いているところが少なかったのは残念だが、本来言われっぱなしの形になってしまうことも多い「野放し」論に、様々な点から反論したという結果は大きかった。今後、十分な裏付けもなく「野放し」と叩かれることが減るかも知れないし、今回条例案を改定する理由として挙げられている「野放し、氾濫」説に、釘を刺すことができたからだ。
画期的とも言える記者会見内容を受けて、賛否を決めていない各党がどう答えを出すのか、動向が注目されるところである。【了】
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