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PJ: 田中 大也

新「東京都健全育成条例改正案」は、以前廃案になったものと「同じ」なのだろうか?
2010年11月29日 08:42 JST

【PJニュース 2010年11月29日】11月26日の定例会見で、石原慎太郎都知事は、東京都健全育成条例改正案について、「訳の分からない言葉は削除しましたからね。実質的には前と同じ。非常に大事な提案をしているわけです。紛らわしい文言がけずられて、分かりやすくなった」(産経新聞「石原知事会見詳報」より)とコメントしている。

条文の文言こそ変わったものの、実質的な変わりはないというコメントだと解釈することができるわけだが、では、果たして本当に、かつて廃案になった条例案と、「実質的には前と同じ」と言えるものなのだろうか?

具体的に分析していこう。

まず、最大の争点になったフィクション規制だが、前回が「非実在青少年」の名目で、「18歳未満(に見える)のキャラクターの性行為描写」等が規制対象になっていたのに対し、今回は、「キャラクターの年齢に関係なく、刑罰法規違反が絡む性行為や、近親姦などの『社会規範』に反する性行為の描写や表現」等が規制の対象に挙げられている。前回が主に「ロリ系」や「学園系」の描写が中心になると考えられていたのに比べ、今回の規制案では「熟女モノの劇画」ですら規制の範囲に入ってしまい得ることを考えると、漫画やアニメ、ゲーム等々に対する規制範囲は、以前よりも極めて拡大していると言えるだろう。

一方、実写関係には緩和の傾向が顕著に見られる。前回の条文に存在した「児童ポルノ不所持の責務」が無くなり、これによって、国会図書館(所在地は東京)を含む、図書館に存在する、無数の過去の作品が廃棄されるという危機は回避された。現行の児童ポルノ禁止法では、過去高い評価を受けた芸術作品や、「児童」が、下着姿、あるいは水着姿などが含まれた作品でもあてはまってしまいかねないので、「焚書」の危険は極めて大きかったのだ。

また、「青少年性的視覚描写物」の「まん延防止」の規定も無くなったので、未成年者が出演している、一般向け作品が「18禁」になったり、「発禁」になるという危険もなくなった。

十三歳未満の男女が出演する、「問題があった」と判断した作品への対処も、「説明又は資料の提出を求める」とだけ記し、「必要な調査をすることができる」の項目を削り、あくまで保護者や製作サイドの自主性に委ねるという形を取っている。

表現物に対する規制という点だけでも、これだけの違いがあり、規制範囲という部分を考えると、良くも悪くも全くの別物と言っていいほどの差がある。

さすがにこれだけの食い違いがある条例を、「実質的には前回と同じ」ものだとするには、論理的に相当無理があるのではないかと筆者は思う。少なくとも、「文言を修正しただけ」だとして、条例を再提出するのは、事実的側面からすれば、「通る」話なのかどうか、疑問を禁じ得ない。

前回の条例に賛成したにせよ、反対したにせよ、条文の形が変わり過ぎているので、そのまま結論を引き継ぐことはできないはずだ。

また、何度も繰り返すようだが、ここまで条例の中身が変化している案を提示したにも関わらず、公開をギリギリまで遅らせ、意見の公募もしなかった東京都側の姿勢は、改めて批判されて然るべきものと言える。

また、本当に「前回と同じ」ものであるならば、それだけで前回に反対に回った各会派は、賛成に転ずる理由は無くなるはずだ。僅か半年前、反対したものと「同じ」条例案を出されて、賛成に転ずるとしたら、条例の内容以前にその政党としての姿勢を、都民や国民に厳しい目で見られることになるのは避けられないだろう。

条例の公表が遅れたことによる「超短期戦」の様相を呈してきた中で、内容の違う条例案が「前回と同じ」として再提出された今回の状況。各党の、この条例問題に限らず、政治に立ち向かうスタンスが、改めて問われている。【了】

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PJ 記者