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PJ: 田中 大也

二次元創作物の「次」は実写がヤバい!? 東京都健全育成条例改正案の「無限規制」システム
2010年11月29日 07:34 JST

【PJニュース 2010年11月29日】今回示された条例案は、前回でも述べたように、漫画やゲームといったジャンルを狙い撃ちしていると同時に、あらゆるジャンルを規制し得る「可能性」を示している。

違法性や、社会通念に反した描写など、大体どんなフィクション作品にも含まれているだけに、「現実」や規制する側の「理念」を基準としてねじ込めるひな型ができた時点で、ほとんどの作品は平穏とはいられない(理念的には「違法な性描写等」を「暴力描写」に切り替えることもできるし、「テロリストを称賛する映画」に変えることもできるはずだ)。

ドラマ、映画、小説……あらゆるジャンルが、理不尽な規制と向かい合わねばならなくなるだろう。特に、映画やドラマ、映像作品などの「実写系」は、条例が通ると、将来的に極めてまずい状況に追い込まれる危険性が高い。これは、単なる推測ではなく、過去の経緯に「根拠」が存在している話なのだ。

現在の条例案では(実写は除く。)と、カッコ付きの形で規制対象から逃れる形となっていて、「児童ポルノ」の単純所持に関する条文も削除されたが、今年六月に廃案となった条例案には、単純所持に関する規定とともに、「青少年性的視覚描写物」という規定があり、「まん延抑止」の対象になっていた。

具体的には、「青少年が性的対象として扱われているもの」の一部や「十三歳未満の児童の下着、水着姿などの図書、映像類」などが対象になるとされており、「非実在青少年」規定とは異なり、実写で、十八歳未満が出演している映画やドラマ、映像作品などが対象に含まれていたことが分かる。

また、十八歳未満の男女が、性的なグラビアや作品に出演することは、そもそも、児童福祉法で禁じられているため、対象となるのは、全年齢が見られるような作品ということになる。

そして「まん延の抑止」は、「青少年が容易にこれを閲覧又は観覧することのないように努める」ことを指していた。

これらのことを総合して考えると、十八歳未満の出演者が出ている映画、映像、グラビア等々の一部が、どういうわけか「18禁」になってしまいかねない規制案だったということが分かる。

さらに、「18禁」の形自体が、「性労働の証明」のようなものでもあるため、この規定でアウトになった作品が、児童福祉法等々の絡みで「発禁」状態になることも想定できる事態だった。

未成年者が、水着DVDに出演していたことで、児童ポルノ禁止法や児童福祉法が適用されたこともあるように、「性労働」と一口で言っても、明確な基準は存在していない。故に、事実上の「18禁」規定が、「発禁」の根拠として機能することも考えられたのだ。

結局、六月にぎりぎりのところで条例案が否決されたため、このような事態は起きずに済んだが、あと数票、賛否が入れ違っていたら、今頃は、一般向けの映像作品の一部が「18禁」、あるいは「発禁」のような事態になり、過去、発表され評価を得てきた無数の作品が廃棄されるような状況にも陥っていた、ということになる。「非実在青少年」が注目を集めた条例案だったが、実は、実写系のメディアにも深刻な危機が迫っていたのだ。

こうした過去の実績から考えて、新条例案が出来上がったとすれば、将来的には、今回の規制案には含まれていない、暴力表現などを含む漫画やゲーム等々と並んで、実写映画やドラマ、映像作品が対象となる危険性は濃厚と言わざるを得ない。

フィクションに現実の法や倫理をねじ込む今回の規定は、あらゆるメディアを対象にし得る「ひな型」であり、旧案では既に、一般向け作品を「18禁」、「発禁」にするような、広範な枠組みが示されている。

「実写は除く。」とひとまず記されてはいても、カッコ内表記を削除されれば、すぐさま対象になるような状況。

今回の条例案で示された、あらゆる作品を対象にし得る「無限規制システム」がある限り、今回含まれていなかったからと言って、とても安泰と言えるような状態ではないのだ。【了】

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PJ 記者