「フェイト、止めるんだよ!!」
「なのは!!」
真っ白な服を着た少女と、真っ黒な服を着た少女が自分の持っているデバイスを振り下ろした。デバイスが丁度交差する部分にあったのは、願いを叶えるという青い宝石の様なモノ。二人は自分の相棒の言葉にも耳を貸さず自分たちの譲れない気持ちの為に、その石を求めていた。
しかし、そこで誤算が有った。
青い石が願いを叶えるのは、プログラムのためだ。そんなプログラムが有ると言うことは、それ自体が高度な機械であってもおかしくは無い。そんな機械に防衛プログラムが組まれていないという保証は何処にも存在し無い。
そして、青い石は自らの危機を認識し防衛プログラムを作動させる。
・・・・当然、自らを取り込む様に・・・
「きゃあ!?」
「な・・・何!?」
ガンッ!!と言う音と共に青い石に触れる直前で、白い少女と黒い少女のデバイスがはじかれた。それと同時に、青い石を中心として空間が揺らぎ始めた。
あまりに突然の出来事に、一同はただ見ているしかなかった。
「何が起きてるの?」
「・・・」
「こんな現象は、初めてだ」
「くんくん・・・何か人の臭いがするね}
四人は自体が収まるのを待つしか無かった。次元の揺らぎは起きても、それ以上の自体には発展しそうに無かったからだ。四人が見つめる中、次第に現象は収まっていった。
すると、そこに立っていたのは一人の青年だった。
年の頃は二十歳前後ぐらいのかなり大柄な青年で、ボブのような髪型に、ワイルドと一言で表される容姿に、何といっても額に巻かれた虎柄のバンダナがとても存在感を表していた。
服は赤いシャツに、学生ズボンの様だ。
全員が一瞬疑問に思った「何で。人が?」しかし、次の瞬間疑問が驚きに変わる。
「なのは、あの人の中にジュエルシードが!!」
「!?」
フェレットの言葉に驚くなのはと呼ばれた白い少女。
「フェイト、あいつからジュエルシードの反応が有るよ!!」
「・・・!?」
赤毛の女性にフェイトと呼ばれた黒い少女は、即座に反応し目の前に現れた青年にバインドを仕掛けた。
青年はバインドに寄って拘束された。
「うおっ!? なんやね、一体!! ぐぎぎぎっ・・・! あかん、全然はずれへん。 ・・・つーか、ここ何処やねん。そんで、何で俺はこんなとこに居るんや?」
バインドで拘束されながらも、何処か落ち着いた青年を気にすることもなくフェイトは青年を連れて逃走を図ろうと青年に近づいた。
「ちょ・・・お前は誰や?」
「・・・貴方が気にする事じゃない」
「なんや、きれいな顔してんのに愛想無いな。もっと笑ってみ? めっちゃ可愛いで?」
「えっ・・・ほ、本当?」
青年の言葉に、一瞬今の状況を忘れそうになるフェイト。
「フェイト、ボーッとしてないでこっちだよ!!」
「えっ・・・あっ、うん」
フェイトはバインドで縛った青年を少し引きずる様にしながら、赤毛の女性の元まで飛んでいく。
その頃には、流石になのはも正気になりフェイトを追い掛けて来た。
「待って!!」
「フォトンランサー」
フェイトの中距離用の射撃魔法が飛び、段幕を張る。雷の雨の中を、何とか潜り抜けようとするも、なのはの今の実力では潜り抜けるどころか防ぐだけで精一杯だった。
なのはの足が止まるのを確認して、フェイトは青年を連れて逃げる様に飛ぶ。大柄な青年は、高度が高くないので地面に少し引きずられる様に飛んでいた。
「いでっ!! いででっ!! ずってる、ずってるって!! もっと高く飛んでえや。足が、靴が煙上げとるっちゅーねん!!」
「ごめん、少し黙って・・・」
フェイトは青年を黙らせようと、電流を流す。が、青年はくすぐったそうにするだけでショックを受けた様子もなかった。それどころか・・・
「なんや、今の? 何か、ええマッサージ受けたみたいやったわ。なぁ、もういっぺんやってくれへんか? 今度は肩がええわ」
「ええっ!? 今の、結構強かったよ!! 普通の人なら、失神する強さだよ!? ・・・もうすぐアルフの転移魔法陣だから、少し黙って!!」
フェイトは青年が全然自分の思い道理にならないことに驚きながらも、目的を果たせることに安堵を覚えた。
(これで、かあさんにほめて貰える!!)
フェイトの心は踊っていたが、一緒に連れられていた青年はなんか不思議そうな顔をしていた。最初は無視をしていたが、ジッとこっちを見るので流石に無視しきれなくなった。
「・・・何ですか?」
「いや・・・さっき魔法がどうたらって言ってたやんか? それって、やっぱソルバニアがらみか?」
「? 何ですか? その、ソルバニアって・・・」
「・・・いや、知らんかったらええねん。忘れてくれ」
青年が少し落ち込んだ様子だったのがフェイトは気になったが、後ろから「待ってー!!」という声も聞こえてきたので、急いでアルフの魔法陣に飛び込んだ。
「行くよ!!」
アルフが遠吠えをすると、魔方陣が発動しその場から三人の姿が消えた。
「消えちゃった!!」
なのははやっと追い付いたと思ったら、今度はその場からフェイト達三人の姿が消えていた。辺りを見回しても、影も形もない。
「ユ・・・ユーノ君、あの男の人消えちゃったよ!? ど・・・どうしよう!! それにジュエルシードも!! こんな時、どうすればいいの!?」
「そんなの、僕が聞きたいよ!! それどころか、こんなケースは初めてだから分かる訳無いよ!! と・・・取りあえず、長老に連絡を・・・って、連絡できないんだったー!!」
テンパルっているユーノと、右往左往するなのは。端からみたらアタフタする子供と、頭を抱えるフェレットもどきという奇妙な光景が繰り広げられた。しばらくそうしていると、ユーノの方が何か名案を思いついた様だ。
その様子を見たなのはが、期待のまなざしをユーノに向ける。
「何か思いついた?」
なのはは期待を込めてユーノに聞いてみる。ユーノも、もったいぶる様にたっぷり間を置いてから口を開いた。
「今度、あの人に直接聞いてみよう」
「は? それだけ?」
「うん」
「ユーノ君・・・真面目にやってね?」
その時のなのはは確かに笑顔だったが、その背後には魔王の幻視が見えた・・・後にユーノはそう語ったとか・・・
なのはのプレッシャーに晒されながらも、ユーノは必死に弁解を始めた。
「でも、僕にもこの現象の説明が付かないし。知っているかも知れない人には連絡が出来ない・・・なら、本人に直接聞くしかないよね?」
「う・・・そうかも知れないけど・・・」
「こんな所で話をしても何にもならないし、家に帰ろうよ」
「・・・そうだね。あんまり遅くなる訳にもいかないし・・・」
なのは達は仕方なく、家に帰ることにした。結局の所問題は解決していないが、ジュエルシードと問題になっている人物がいないのでは話にもならない。二人は心なしか肩を落として家に帰ることにした。
何だか色々ありすぎて、二人はかなり疲れた様子だった。
一方の魔法で転移した別の組はと言うと・・・
「ここ、何処や?」
「・・・ここは時の庭園、私達の家・・・」
「えらい、殺風景やなぁ・・・所で、何で俺はここにおんねん」
フェイトは青年の持つ空気がガラリと変わったのを、肌で感じた。それはアルフも同様で、低くうなり声を上げ少し低姿勢で身構えていた。
「・・・信じて貰えないかも知れないけど・・・」
フェイトは青年に起きたことを包み隠さず、自分が知っている範囲で話した。フェイトの全身が、青年には決して勝てないと・・・争う事を本能が拒否している様に感じた。
黙って聞いていた青年の怖い空気が無くなり、元の明るい空気になった。
「・・・って事は、何が起きたのか詳しいことは知らへんのやな?」
青年の問いにぶんっって音がするぐらい全力で頷いたフェイトは、頭が少しくらっとしていた。体が倒れそうになるのを青年が支えてくれた。
「・・・あんま、無理すんなや?」
そう言って頭を撫でてくれる青年の手がとっても温かくて、自然と顔が綻んでくるのをフェイトは感じていた。
「お? 何や、そんな顔できるやん。今、ごっつう可愛いで」
「ほ・・・本当ですか?」
「そんなことで、嘘は言わん」
「・・・ありがとう・・・」
フェイトの顔に熱が集まってくるのを感じながら、フェイトは青年に黙って頭を撫でられていた。アルフもフェイトが大人しいので、特に青年に牙を向ける事もしない。
それどころか、かなり気に入っている様子だった。
「そう言えば、あんたの名前を聞いてなかったね? あたしは、アルフ。あんたは?」
アルフが突然自己紹介し始めたので、心地よい時間からフェイトは慌てて抜け出した。
「わ・・・私は、フェイト・テスタロッサです」
二人の自己紹介を受けて、青年は普段は隠れて見えない犬歯の様な歯を見せる様に二カッと笑いながら名乗った。
「俺は、草彅静馬。大天才の草彅静馬や!!」
こうして、鳳雛は異次元の世界にに降り立った。
それとは、別の何処かの世界・・・
「おや・・・コレは面白い。コレだから、運命ってのは面白いんだよね~。こんなイレギュラーまた発生する確率なんて、天文学的な確率だろうなぁ。かろうじて観れるみたいだし、あっちはあっちで楽しませて貰うかな」
黒一色に身を包み、何処かの探偵を思わせる帽子を被った自称<星詠み>は、たばこを吹かしながら自分の元に来るであろう童顔の少年を待っていた。
「ま・・・こっちはこっちで、さっさとケリを付けて貰うか・・・」
その男は来るべきイベントに向けて、準備を始めた。
「さて、あっちはどうなるのかな?」
男は何もない方を見ながら、楽しみで仕方ないと言う顔をして笑っていた。
後書き
こんな感じで、どうでしょうか?
自分にはまだ経験値が足りないと痛感したグチャグチャな部分を整理して、スムーズに読める様にしたつもりですが・・・これ以上は、多分無理だろうな・・・
色々とご都合主義もありますが、伏線にしている部分も有るので今は見逃していただけるとありがたいです。
涼子さんは残念ですが、都合上出せなくなりました。出してしまうと、また暴走しそうで怖いので・・・
感想をいただいた方には感謝しています。こうして、自分でも読みやすくなりました。
これからも、読みやすいモノを心がけて行きたいです!!