2010年10月8日 21時41分 更新:10月8日 23時7分
経営破綻(はたん)した日本振興銀行に初のペイオフが発動されてから、10日で1カ月が経過する。振興銀を管理下に置く預金保険機構は8日、振興銀が営業再開した9月13日から今月6日までの預金解約申し込みが2万1960件(733億円)だったことを明らかにした。他の金融機関の風評被害など混乱は起きていないが、振興銀と関係が深かった企業の経営悪化が目立ち始めた。
預金保険機構によると、6日までの預金解約は、経営破綻時の預金残高5820億円の13%に相当する。営業再開当初、1日当たり40億円台だった解約額は、9月後半は20億円台で推移し、6日には15億円に低下。00年代前半に銀行破綻が相次いだ時は、1カ月で4割もの預金が流出したことがあるが、「極めて落ち着いた状況」(同機構幹部)としている。
ただ、ペイオフが順調に進んでいるのは、振興銀が「定期預金のみを扱い、決済機能を持たない特異な銀行」(金融庁幹部)であることが大きい。今後もペイオフの判断は「ケース・バイ・ケース」(金融庁幹部)となりそうだ。
同機構は、ペイオフ制度の保護対象外となる1000万円超の預金(110億円)のカット率を査定中。ずさんな融資管理のため、査定は難航しているものの、おおよそのカット率を算定し、査定が終わる前に払い戻す「概算払い」の受け付けを年内にも始め、来春までに仮払いを終える方針だ。
一方、振興銀と関係の深い企業の経営破綻も出始めている。振興銀が主要取引行のエステティックサロン大手「ラ・パルレ」(東京都、大証ヘラクレス上場)は5日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。上場企業で初の連鎖倒産となった。
振興銀の貸出残高4500億円のうち6割以上の約3000億円が、親密企業約120社に集中、「不透明な資金取引もあった」(金融関係者)とされる。同機構は融資の借り換えについて「中小企業の資金繰りに配慮し、半分以上は応じている」(幹部)が、不明朗な融資の借り換えには応じない方針だ。振興銀の融資先は約2万3000社。「他に借りるところがない」(堺市の中小企業)との声も出ており、今後資金繰り破綻の増加は避けられそうにない。【中井正裕】