2010年10月7日 13時38分 更新:10月7日 13時44分
世界の陸上界で今季、新たな歴史を記した選手がいる。男子百メートルで白人選手初の9秒台を記録したクリストフ・ルメートル(20)=フランス=で、このほど欧州の男子年間最優秀選手に選出された。9月にはスーパー陸上(川崎)で来日。男子百メートルで快勝し、自身の今季最終戦を飾ったが「改善すべき点はいくつもある。修正できれば、まだまだ成長できる」と意欲的だ。
スーパー陸上では、序盤は隣のレーンの塚原直貴(富士通)に先行を許したが、189センチ、74キロのスラリとした長身を生かした大きなストライドで加速。トップスピードに乗った中盤以降は労せずして突き抜け、10秒26で2位に0秒21差をつけた。日本選手初の9秒台を目指す塚原は「走りのリズムが違う。骨格の差は否めない」と嘆き、高平慎士(富士通)も「(196センチの)ボルトもそうだけど、短距離に大きな選手が増え、時代が変わりつつある」と衝撃を受けていた。
7月9日のフランス選手権で、ルメートルは追い風1・3メートルの好条件の下、昨季までのベストを0秒06上回る9秒98をマークし、歴史の扉を開いた。ただ、コーチは「ストライドが広すぎて、同じリズムで走れていない」と指摘。やや体が横ぶれしてロスのあるフォームでの9秒台は、さらなるタイム短縮の可能性を感じさせる。
この9秒台で自信を手にし、7月27日~8月1日の欧州選手権(スペイン)では、百、二百メートル、四百メートルリレーの3冠。8月下旬には9秒98、9秒97と9秒台を連発した。
ただ、9秒97は今季の世界ランク11位(10月6日現在)に過ぎず、歴代では50傑にも入らない。ルメートルは「ボルトのようなトップ選手とは、かなり力の差がある。でも、努力を続けていけば近づける」と語る。当面の目標は100分の5秒縮めた9秒92。その先に、11年世界選手権、12年ロンドン五輪でのメダル獲得という青写真も描いている。【井沢真】