そんな死に体の政権を救ったのは、皮肉にも23日に発生した北朝鮮の砲撃事件だ。
「神風が吹いた!」
政府高官の一人は、韓国が砲撃されたとの報を受けた直後、こう言ってはしゃいだ。北朝鮮の暴発により、国際情勢が緊迫化したため、野党側は問責決議案の提出をいったん自重。補正予算成立にも協力することになり、崩壊寸前だった菅政権は一息つくことができたのだった。
冒頭で紹介した菅首相の不謹慎な高笑いには、まさしくそのホンネが表れていたということになる。
「助かった」
首相は心からそう思い、仙谷氏とともに、"祝杯"を上げていたのだろう。そうして結果的に、「自民党に対する連立工作は、いったん棚上げになった」(前出・民主党幹部)のだ。
しかし首相らが浮かれていられるのも、ほんの一瞬の酔夢に終わりそうだ。自民党国対幹部がこう語る。
「問責決議案に関しては、あくまで提出を延期しただけ。12月3日に臨時国会は会期末を迎えるが、問責はその前に、参議院で可決する。会期末近くに出しても意味がなさそうだが、狙いは来年1月の通常国会。冒頭から、『問責された大臣の元で審議はできない』と、大荒れになる。菅政権が行き詰まる時期が少し延びただけだ」
その時、再び菅首相と仙谷氏は、自民党との連立を模索するかもしれない。だが、道は相当に険しい。
「菅首相は与謝野氏を頼りにしていますが、与謝野氏が首相と会っただけで、『たちあがれ』の代表・平沼赳夫氏のもとには、支援者たちから『裏切り者の与謝野を辞めさせろ』と抗議メールが殺到しました。菅政権はそれほど嫌われており、与謝野氏が首相の甘言に乗り、政権維持に協力するような姿勢を見せたら、即座に党を除名される見込みです」(別の全国紙記者)
もはや無法地帯
また、菅・仙谷コンビにとっては、何より"身内"の扱いが厄介だ。
柳田前法相のクビ切りに最後まで抵抗した、民主党参院のドン・輿石東議員会長は、「官邸への非協力」を宣言し、傘下の羽田雄一郎参院国対委員長、平田健二同幹事長に「サボタージュ」を指示。結果的に北朝鮮の砲撃に救われたが、菅首相らが補正予算の審議を巡って野党と一時交渉不能に陥って泡を食ったのは、この輿石氏の叛乱のためだ。
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