そこで、苦肉の策として浮上したのが、「自民党との連携」だったのだ。水面下で進められていた交渉が、表面化するきっかけとなったのは、11月18日、「たちあがれ日本」の与謝野馨元財務相が、唐突に首相公邸を訪れたことだ。
民主党幹部がこう語る。
「表向き、菅首相が与謝野氏に対し、国会運営正常化のための助言を求め、与謝野氏は野党党首との直接協議を勧めたことになっている。だが実際には、元自民党の幹部で公明党ともパイプがある与謝野氏に、自民党との連立を見据えたアドバイスを聞いたようだ」
実は与謝野氏は、民主党が惨敗した参院選後の8月8日にも、菅首相と"密会"している。この日、菅首相は築地の寿司店「樹太老」で、囲碁棋士の小川誠子氏と会食したが、それはあくまで口実だった。
「菅首相は午後5時頃から同9時頃まで、4時間も店にいました。首相が公邸に帰った後、1時間ほどして与謝野氏が店から出てきた姿を捕捉され、密会がばれた。首相はこの日、夏風邪をひいて体調は最悪だったのですが、身体を引きずるようにしてやってきた。それだけ与謝野氏との密談を重要視していたのでしょう」(全国紙政治部記者)
これ以後、与謝野氏と首相は、しばしば電話で政権運営などについて相談を交わす仲になったという。先日横浜で行われたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の前、菅首相はサミット開催経験のある福田康夫元首相の助言を仰いだが、「話を聞いたほうがいい」と言って間を繋いだのも、与謝野氏だったという。
「大連立」という亡霊にすがる
与謝野氏に福田氏、そして、懐柔を諦めたとはいえ小沢氏。菅首相が接触を図っている人々には、ある共通項がある。
それは、2007年の「大連立騒動」の登場人物ということだ。当時、やはり「ねじれ国会」に苦しんでいた福田元首相は、与謝野氏の後ろ盾である中曽根康弘元首相や、その盟友の渡辺恒雄・読売新聞グループ会長らの支持を得て、民主党の小沢一郎代表(当時)と、いわゆる「政界大再編」を画策した。
ただその際は、小沢氏が民主党内をまとめきれずに、構想が瓦解。再編は将来に持ち越されて現在に至っている。
当時の福田氏と同様、国会運営に苦しむ菅首相が、そんな噦曰くつき器の人脈にすがっているのはなぜか。当然、「同じ目的」があると見るのが妥当であろう。
「所属議員が6名しかいない『たちあがれ』では、たとえ連立できても、国会のねじれは解消できない。しかし与謝野氏は、竹下亘氏や後藤田正純氏など、自民党に子飼いの議員を残しており、切り崩しを期待することもできる。ただ、選挙区の調整が難しいので、完全な連立は困難。現在の政局を乗り切るため、次の選挙まで時間を区切った、あくまで時限的な連立話です」(前出・ベテラン議員)
一見、荒唐無稽にも思える「民・自連立」構想だが、菅政権が、そうした奇策に走らねばならないほど、追い詰められていたのは紛れもない事実。尖閣衝突事件を巡る対応で、仙谷氏や馬淵澄夫国交相らの問責決議案が野党から素早く提出されていれば、補正予算は成立せず、支持率はさらに暴落して、菅政権は墜落するのが確実だった。
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