2007年03月01日

知的障害者の痴漢行為は許されるのか?


ある17歳女の子のブログの記事が話題になっている。(一番下を参照)
彼女の気持ちは痛いほどよくわかる。
というのは、私も似たような経験をしているから。

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ある朝私は電車で会社に向かっていた。
体が触れるほどではないけど、朝の通勤ラッシュだった。
何をされたかは書かないんで、まあ想像にお任せする。

反射神経的に私は痴漢男の手首をつかみ、
電車からその男を引きずりおろした。
一人では逃げられると思って、痴漢行為を確認した近くの男性にお願いし、
もう片方の手を逃げないようにしっかり持ってもらった。 
ナイフでも持っていたら大変だ。 
証人であるサラリーマンの方の名刺をもらうことも忘れなかった。
さっきまで半分寝ぼけていたのに、我ながらこの行動はすごいなと今でも思う。

痴漢男はとっても気弱そうで、大人しく駅員室までついてきた。
駅員に説明をすると、駅前に交番へいくように言われた。
さらに交番では処理しかねる内容とのことで、本署へパトカーで連れていかれた。

愛宕警察では細々と調書というものを取らた後、ある事実を知った。
その男性は通院している精神障害者なので、何もできないと警察官から説明された。

その男性の兄だという人がやってきて、「申し訳ありません」といいながら
深々と頭をさげた。 
「どうしてそんな家族を一人で行動させるんですか?
 ちゃんと見張っていてもらわないと困ります!」
何度も何度も申し訳無さそうに謝まる兄。。。彼が悪いわけではない。
私は怒りのぶつけどころを失い、どうしていいかわからなかった。

警察を出た直後、なんて危険なことをしたんだろうと恐ろしくなった。
お咎めなしで開放された男性が恨みに思って、仕返しするかもしれない。
迂闊だった自分自身にも腹が立った。
翌日以降は通勤時間をずらし、別の車両に乗るようにしたし、
しばらく電車では神経をピリピリさせ周りの男性を睨みつけるように観察していた。
(今考えると、コワイ…)
警察に電話をして、痴漢男が通っている精神病院の連絡先と担当医師の名前を
聞こうとしたけど、最初は教えてくれなかった。

なんとか説得して聞き出し、その医師に電話をしたら、
「気の小さな男性だから、そんなことすることが信じられませんでした」
「暴力的な面はないので、仕返しは考えられません」
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今回話題の記事を読んで、このようなもう何年も前のことを思い出した。
長年経つうち、徐々に考え方に変化がでた。

万が一あの男性がやったのでなく別の男性だったとしたらどうか?
もしも私の勘違いであったとしたら?
−彼は反論する能力を欠いていたので、何もいえなかった。

あの謝っていた兄の姿は印象的だった。
病弱なので警察に来れなかった母親の生活とはどんなものだろうか? 
−普通でないことは容易に想像がつく。
 兄が犯罪を犯した弟に辛くあたったとしても、
 障害者である弟は受け入れるしかない。

特に知的障害者の場合はあらゆる差別に対して、被害を訴える能力がない場合が
多く、埋もれた被害者であるという。 この時点で人権を欠きハンデを負っている。

17歳の彼女が許せない気持ちはよくわかる。 
私は20代後半の経験だったので、ある程度冷静に対処できたけれど、
子供の頃の経験はそのトラウマの深さが違う。
まだ若い彼女の場合は周りの大人たちの対応が大切だと思う。 

「可哀想だから許してやれ」というアドバイスは怒りに油を注ぐだけだ。
彼女はあくまでも被害者であって、彼を恨むのは当然のことだし、
彼が知的障害者だから許せ などといわれても無茶な話で、
“他人事だからそんなこといえるんだ”と余計に腹が立つだろう。
その憤りを和らげるのは時の経過しかない。

問題なのは“知的障害者”と“健常者”に分けて、あるグループ全体を
嫌悪するということ。大きくグループ分けしてしまうと、
“男性”を恨むこともありえる。
恨みつらみは、自分自身を苦しめるだけ。不幸なことだと知って欲しい。
【人を呪わば穴二つ】

人はすぐにグループ分けしたがる。 国籍、性別、出身地、学歴、身体能力。
常に他人より優位に経つことで、安心しようとする。
これでは世の中で差別される可能性が低く暮らせるのは、白人エリート男性だけに
なってしまう。 様々な人が共に暮らしていくには許容が必要になる。

「痴漢行為は許されるのか」の答えはもちろん「許されない」
だけど彼女の投げかけた問題に誰もが納得できる答えはない。
私が一番許せないのは、精神障害者のフリをして罪を逃れようとする健常者。

知的障害者や精神障害者は「理性的な判断力の欠如」という理由で殺人を
犯しても無罪になることさえある。
そのことで被害者はやりきれない思いだけが残る。
だけどその殺人者が死刑になっても被害者は戻ってはこない。
せいぜい一時的に溜飲が下がるだけだ。

「じゃあアナタは家族を知的障害者に殺され、彼が無罪でも許せるの?」
と問われたら、それはきっとムリ。
まあ、実際にそういう事実が最近起こっているのを知ると、
私の場合は大したことないかもとも思えてくる。 
つまり考えようだということ。

昔、飛行機の中でのこと。
黒人と白人のハーフの小さな男の子が、しゃがみこんでいる私に
突然近づいてきてほっぺにキスをした。
いたずらっ子のように走り去る姿がとても可愛いらしくて、笑顔が出た。
この違いは一体何なのか?

17歳の彼女の元ブログは知らないんだけど、どうなったんでしょう?。
こんな大騒ぎになったことに、きっと恐くなって削除したんだろうなぁ。
二重でかわいそう 。・°°・(>_<)・°°・。



ところで後日談なんだけど、
私の痴漢被害直後、知り合いの反応はというと、

関東人 → 同情の表情を見せながらマジメに聞いていた。
関西人 → 一人も例外なく! 笑っていた。

うちの叔母なんか電話で笑いをこらえきれず大爆笑だ。
同郷の友人なんか「ごめんな笑ってまう」といいながが終始ニタニタ。(コラァ!)
でも意外にこの方が気持ちが楽になったというのが事実です。

<記事の全文>

 現代社会において、知的障害者を差別することは社会倫理に反することだし、人間としていけない行為だと教育されている。しかし、そうした常識に対し「“知的障害者”は合法的に犯罪が許されるのだろうか」というタイトルのもと、「自分は知的障害者が嫌いである」とはっきりと主張している匿名(17歳女性)のブログが話題を呼んでいる。

 同ブログによると、著者は小学生の頃通っていたスイミングスクールで中学生風の「障害者」から痴漢を受けていたことがトラウマになっているそうである。尻の割れ目を触られ、その後もプールですれ違う時などに痴漢をされたというのだ。他の女の子も同じように痴漢に遭ったという。

 著者はそうした被害を周りの大人に相談したところ、「障害者だから仕方がないよ」、「可哀想な人だから許してあげようよ」などと言われ、障害者は合法的に犯罪を犯すことが許されているのだろうか? と疑問を抱いたそうだ。そして、「社会に出る以上、どんなハンデを背負っていても社会のルールは守らなくてはならないしルールを破ったならばルールを知らなかったとしても罰せられなければならない」と彼女は語っている。

 そこから、「社会に出るのに不適切な人間は隔離されるべきだ」と考えるに至ったようである。

 このような主張を受けブロガーたちからは、「障害者と痴漢の問題をひとくくりにすることには問題があるのではないだろうか?」、「この考えには納得できないが、実際に彼女と同じ経験をしたら知的障害者を嫌いになってしまう可能性もある」などの様々な意見が出されていた。

Ravioli at 23:45│Comments(0)TrackBack(0)この記事をクリップ!一般ニュース | 一般ニュース

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