2010年12月3日
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告発情報を集めて発信するウェブサイト、ウィキリークスは11月、北欧アイスランドで、情報関連企業を立ち上げた。その名は、サンシャイン・プレス・プロダクション(SPP)。北極圏に近い人口30万人の国を、調査報道の「聖地」に衣替えする計画の第一歩だという。
「ウィキリークスの斬新さは告発者を徹底保護しつつ、情報のゲートウエーを提供している点だ。プロの記者が情報を選別しており、質の高いジャーナリズムと自負している」とウィキリークスの広報担当、クリスティン・フラップソンさん(48)はいう。イラクの米軍ヘリの攻撃で通信社記者らが死亡した事件の映像を4月に暴露した際、事前にバグダッド入りし、死亡したイラク人の遺族らに取材し、映像の裏付けをとったアイスランド国営テレビの元記者だ。
ウィキリークスはアイスランドの人々に高い支持を受けている。バブル経済がはじけ、国民生活が深く傷ついていた昨年夏、大手銀行の取引記録をネットで公開し、ずさんな融資の実態を暴いてみせたからだ。バブルに踊る政治家や大企業家に警告を発することができなかった地元メディアに対する、不満のはけ口になった。
目をつけたのが、メディア改革を訴えるNGOのアイスランド・モダン・メディア・イニシアチブ(IMMI)。昨年末にウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジュ氏を招き、討論会を開いた。「調査報道の聖地というアサンジュ氏の発想が刺激的だった」(IMMIのマッカルシー代表)。カネの流れを不透明にし、脱税の温床になっているタックスヘイブン(租税回避地)を逆手にとった考え方にひかれた。
IMMIはウィキリークスの支援を得て、情報源保護に関するスウェーデンの法律などを参考に、調査報道を強化する環境をつくるための指針を作成し、与野党議員らに提供した。議会は6月、指針を賛成多数で承認。政府は現在、報道法の改正や新法づくりを進めており、来年初めに始まる国会に関連法案の提出を目指す。
アイスランドの記者協会の元会長で、連立与党の社会民主同盟のロベルト・マルシャル議員(39)は「世界に冠たる報道環境を整える法律をつくることで、(金融危機で)失墜した国の信頼を回復したい」と意気込む。SPPは地元の既存メディアと連携するだけでなく、他国の調査報道機関の窓口になる。
ただ、国営テレビの著名な政治記者であるエーエキ・ヘルガソンさん(51)は、法制化に懐疑的だ。「米国が嫌うウィキリークスのような活動を、アイスランド政府が本当に容認できるのだろうか」(レイキャビク=稲田信司)
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