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「羽田深夜便」は本当に快適か? 乗ってわかった“10のこと”

nikkei TRENDYnet 12月6日(月)11時7分配信

「羽田深夜便」は本当に快適か? 乗ってわかった“10のこと”
2010年10月31日午前0時、32年ぶりに羽田空港からの欧米線が復活した。「深夜発、羽田から海外」便は本当に快適なのか? それを検証すべく、ANAの初便となった同日0時ちょうど発(現在は0時5分発)のロサンゼルス行き(フライト時間9時間5...
 2010年10月31日午前0時、32年ぶりに羽田空港からの欧米線が復活した。「深夜発、羽田から海外」便は本当に快適なのか? それを検証すべく、ANAの初便となった同日0時ちょうど発(現在は0時5分発)のロサンゼルス行き(フライト時間9時間50分、到着は現地時刻で前日17時50分)に搭乗し、未知の世界である羽田からの深夜便を体験。それをもとにまとめた「乗ってわかった10のこと」を紹介したい。

【詳細画像または表】

<出発(羽田)編>

【その1】モノレールはガラガラ、羽田でゆっくり食事も

 まずは都心からの交通アクセス。羽田空港新国際線ターミナルには、東京モノレールと京浜急行が乗り入れており、最速列車はそれぞれ浜松町・品川から13分となっているが、最速列車でなくても約20分で国際線ターミナルに到着する。

 特に羽田深夜便へのアクセスでおすすめなのはモノレールだ。沿線の住民が少なく、利用者のほとんどが空港利用者ということで、国内線の運航がほぼ終了した21時台以降はガラガラ。気兼ねせずに、スーツケースなど大きな荷物を持ち込めた。さらに羽田空港国際線ビル駅とチェックインカウンターは同一フロアになっており、約1分でカウンターに到着。羽田で国内線を利用するよりも便利とさえ思える。

 成田空港へ行く場合には、成田エクスプレスは1時間に1〜2本程度、京成スカイライナーも1時間に2本程度しかないのに対し、羽田空港に行く東京モノレールは日中4分間隔(夜の時間帯でも5分間隔)、京浜急行も終日ほぼ10分間隔で運転されているので、乗り遅れてもすぐに次の電車に乗れる点も目に見えない羽田新国際線の良さである。また成田では必須となるセキュリティエリアでのパスポート提示も羽田では不要だ(さらに成田では駅からチェックインカウンターまで5分〜10分を要する)。

 羽田空港新国際線ターミナルはコンパクトさがウリになっており、レストランも4階に集中している。都内の人気店が多く集まっているので、仕事を終えてから21時ごろに空港に到着し、ゆっくり食事をしてから深夜0時前後の便に搭乗するのもおすすめ。また汗を流してから飛行機に乗りたい人には、シャワールームもある(詳細は後半で)。

【その2】搭乗までスムーズ、出国審査の自動化ゲートも!

 羽田空港新国際線ターミナルの魅力の1つに、導線の短さ(駅→チェックイン→保安検査・出国審査→搭乗ゲートまで)がある。チェックインを済ませ、保安検査場、出国審査場、ゲートに進んでいくが、全て同じフロアになっている。そのため、移動距離も短く、行列がなければ5分もかからずに出国審査を通過し、免税店のエリアへ入ることができる。1台だけであるが、パスポートの自動化ゲート(事前に登録が必要)も利用可能。そして搭乗ゲートへは、ゲートによって多少歩くことになるが、成田空港に比べると断然近い。

 また、チェックインの締め切り時間も便出発40分前というのは非常にありがたい。成田では2時間前に空港に到着することを推奨しているが、羽田では1時間15分〜1時間半前までに到着すれば十分といえる。

【その3】出国検査後、ペットボトルが買えるお店が少ない

 出国審査を終えると、目の前には免税店が並ぶ。フェラガモ、ブルガリ、シャネル、ティファニー、エルメスなどの有名ブティック、タバコや酒などが購入できる総合免税店「TIAT DUTY FREE SHOP」などが集まっている。旧羽田空港国際線ターミナルに比べると店の数は増えたが、全体的な品揃えでは成田空港に軍配が上がるだろう。成田同様に免税品の事前予約も可能なので、事前に購入する商品が決まっている場合には予約をおすすめする。また海外に持っていく土産を買い忘れた場合も、免税エリアで北海道名菓「白い恋人」などが販売されているのも何かと便利である。

 反面、不便さを感じたのが、機内に持ち込みたいペットボトルの茶や菓子などが買える店が極端に少ないこと。特にペットボトルは出国審査後に購入したものに限って機内に持ち込めるため、ゲートからかなり離れた売店まで行かないと買えなかった。品揃えも少なく、改善が望まれるところだ。

<機内(羽田→海外)編>

【その4】離陸直後は希望者に「軽食」を提供

 いよいよ搭乗時刻になって機内へ入ると、深夜便に合わせ、照明も通常に比べて減光されていた。まさに深夜便という印象だ。搭乗が完了し、ANA1006便ロサンゼルス行きは真夜中の静けさの中、羽田空港を離陸した。

 日本発の国際線では通常、離陸後すぐにメインの食事となるが、深夜便では利用者の多くがすでに夕食を済ませてから搭乗していることから、希望者に軽食メニューが提供される仕組みになっている。エコノミークラスではサンドイッチ、ビジネスクラスではお茶漬けやうどん、ラーメン、サラダなどとなっている。実際に機内を見ると、離陸後すぐに睡眠に入る利用者も多かった。特にビジネスクラスの利用客は、羽田空港出発前にビジネスクラス利用者及びスター アライアンス・ゴールドメンバーが利用できる「ANA LOUNGE」で食事を済ませて乗る人が多いと思われる。一方、エコノミークラスでは、サンドイッチのほか、有料サービス「ANA My Choice」で、「お茶漬け」や「ねぎ味噌ラーメン」(各700円)を注文している人も見られた。

【その5】メインの食事までの4〜5時間は寝る

 軽食を食べ終わる時間には、ほとんどの人が睡眠に入る。一部の人は映画などの機内エンターテイメントを楽しんでいるが、到着3時間前に提供されるメインの食事までの約4〜5時間近くを寝て過ごす人が多かった。日中〜夕方の時間にかけて日本を出発する米国線に比べると、寝ている人の割合が圧倒的に高い印象。機内では、睡眠をサポートするアイテムとしてアロマの香りを楽しめるカードが配布された。筆者も結局、往路はまったく映画を見ることができなかった。

 そして到着約3時間前(出発6時間後)からメインの食事がスタート。この時間帯になると、多くの人が目を覚ましていた。食事前のドリンクでは、アルコールよりもソフトドリンクを注文する人が多かったのが印象的だった。現地到着は夕方であるが、気分と体内時計は朝といった感じなのだ。

 ビジネスクラスでは、「ミールオーダーシート」がシートポケットに入っており、事前にオーダーする方式。オーダーシートを渡すときに、「着陸3時間前にお食事をお持ちいたしますが、お休みになっている場合に起こしても構わないでしょうか」と聞かれた。食事よりも睡眠をとりたい人への配慮もされていた。

【その6】到着後にしっかり寝れば、翌朝には時差ボケ克服

 羽田を離陸して約9時間後、現地時間17時ごろにロサンゼルス空港に到着。混雑が激しいことで有名なロサンゼルス空港の入国審査・税関検査ともにスムーズに通過。この春成田発の便を利用した時には1時間半近くかかったが、今回は30分弱で到着ロビーに出られた。他の便とのタイミングもあるが、この時間は比較的到着便が少なく、スムーズな入国が可能なようだ。

 筆者はロサンゼルス空港近くのホテルにチェックインし、ホテル内で軽く食事を済ませ、シャワーを浴びて21時ごろには就寝した。翌日は朝6時前に目が覚め、朝食後すぐに観光に出かけたが、日中も眠くなることがなく、時差に体がなじんだことを体感した。これまでは午前中にロサンゼルスに到着する便が多く、午後は眠くて仕方なかったのだが、これほど体がラクだったことはなかった。これこそ深夜便の恩恵といえる。旅行者はもちろん、ビジネスパーソンにとっても朝からしっかり活動できる点は大きいだろう。

<出発(ロサンゼルス)編>

【その7】深夜出発までの過ごし方と交通機関が課題、ホテルのデイユースという手も

 ロサンゼルスに2泊して帰国の途に。羽田行きの帰国便は深夜0時50分発(現在は0時10分発)。23時前にロサンゼルス空港のトムブラッドレー・ターミナルに到着した。往路の羽田空港同様に深夜便ということで、ロサンゼルス市内で夕食を済ませてから空港に入った。

 パッケージツアーを利用していればバスで送迎をしてくれるので問題ないが、個人旅行の場合、昼前にホテルをチェックアウトしてから、夜の出発までどのように過ごすのかを考えなければならない。また夜の公共交通機関は治安を心配する人も多いだろう。

 シャワーを浴びるなどリフレッシュしてから搭乗したい人は、出発当日に空港周辺のホテルを利用するという手もある。夕方からチェックインし、22時すぎにチェックアウトするのだ。22時ごろまでとなると1泊分の宿泊代がかかるが、ロサンゼルス市内に比べて空港周辺ホテルは宿泊料金が安く、5000円程度のホテルもあるので、それほど大きな負担にはならないだろう。特にロサンゼルス空港はレストランやリフレッシュ施設があまり充実していないので、思い切ってホテルをデイユースしてみるのもおすすめだ。

<機内(海外→羽田)編>

【その8】帰国便も睡眠がメイン、食事は到着2時間前

 ロサンゼルス発羽田行きのANA1005便は、深夜1時すぎにロサンゼルス空港を離陸した。機内の雰囲気は往路と同じく、すぐに睡眠に入る人が多かった。ただせっかくのロングフライトなので、筆者は邦画を1本鑑賞。深夜4時ごろ(日本時間だと20時ごろ)眠りにつき、約5〜6時間後に起きた。帰国便ではメインの食事が到着2時間前(日本時間午前3時ごろ)から始まる。食事を済ませ、再び眠っているとシートベルトサインが点灯。羽田への着陸態勢に入った。

【その9】帰国便到着、ロビーまでは国内線並みにスムーズ!? 

 羽田空港には定刻の早朝5時に到着。この日は入国審査場に近いゲートだったこともあり、飛行機を降りて約1分で検疫カウンターを通過し、2分後には出国審査場に到達。到着便が重なってなかったこともあり、すぐにパスポートにスタンプを押してもらい、手荷物受取所へ。10分も待たずにターンテーブルが動き出し、ビジネスクラスの荷物は優先的に出て来たこともあって、飛行機を降りてからわずか15分弱で最後の税関検査を済ませて到着ロビーに出られた。荷物が出てくるタイミングが遅くても、30分以内にはほとんどの人が到着ロビーに出られる印象だ。まさに国内線並みといえるだろう。

 成田であれば早くても30分、平均1時間程度であることを考えると、意外にも帰国後の手続きのスピードで羽田の利便性を実感することになった。すでに東京モノレールや京浜急行も運行が始まっており、交通アクセスについても特に問題はなかった。

【その10】羽田到着後、シャワーでリフレッシュしてから会社へ

 早朝便で羽田に到着してそのまま会社に出勤という人もいるが、シャワーを浴びてから出勤したい人も多いはず。日系航空会社(ANAやJAL)では、ビジネスクラス利用者やマイレージの上級会員を対象とした到着ラウンジがある。朝5時からオープンしている羽田空港の到着ラウンジでは、軽食・飲み物だけでなく、シャワールームも利用できる。

 ビジネスクラス利用者や上級会員でなくても、到着フロア(2階)にはシャワーと仮眠室を完備したリフレッシュルームもある。24時間誰でも利用でき、シャワーは30分800円、仮眠室は1時間1000円。サッパリしてからそのまま会社に向かえる。また大きな荷物は宅配カウンターで自宅まで配送でき、早朝便到着後すぐに預けた場合、当日の夜までに配送してくれるサービスも行っている宅配業者もあった。仕事から帰宅する時間に荷物も到着するといった感じだ。

【最終結論】時差ボケも最小限、羽田の利便性も含めて利用価値あり

 今回、羽田―ロサンゼルス線の深夜便を実際に利用してみて、羽田空港の使いやすさは予想以上だと実感した。これだけスムーズな出発・到着ができる羽田の利便性を知ってしまうと、可能な限り羽田から海外へ出かけてみたくなってしまう。私自身、年に1〜2回訪米しているが、米国滞在中も日本帰国後もこれほど時差ボケを感じなかったことはない。いろいろな意味で羽田の利便性を実感できる旅になった。

 同じく羽田を深夜に出発するホノルル線でも検証してみたいと思うが、ホノルル線ではこれまでよりも数時間出発時間が遅くなったことで、機内でもぐっすり眠れ、ホノルル到着後に睡魔に襲われることも減りそうだ。

 今回のフライトを通して、羽田からの深夜便は新しい海外旅行需要を掘り起こすのに十分な訴求力があると確信した。年明けには米系航空会社(デルタ航空やアメリカン航空など)がニューヨークやデトロイトなどへ、またブリティッシュ・エアウェイズもロンドンへの運航を開始するなど、しばらくは羽田からの長距離路線には目が離せないだろう。

(文/鳥海 高太朗=航空・旅行アナリスト、城西国際大学観光学部助手)


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最終更新:12月6日(月)11時7分

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