SakuraFinancialNews

PJ: 佐藤 鴻全

普天間問題、先ず自主防衛の国論を立てよ =沖縄「抑止力」の3つの貌
2010年06月07日 10:23 JST

普天間基地移転問題で、米国と沖縄の板挟みとなって鳩山政権が潰れた。思い付きでものを言う実務能力のない鳩山氏の自業自得といえばそれまでだが、菅政権となっても地元反対運動により海兵隊の辺野古移設への回帰を決めた日米同意通りには収まりそうにない。極端に言えば、沖縄が独立運動を起こしかねない。

この問題への取り組みとしては、先ず鳩山氏が「今更ながらに重要性が分かった」という抑止力について、今一度整理する必要があるだろう。沖縄海兵隊の抑止力には、以下の3つの貌がある。

(1)オペレーション(実際の作戦)としてのもの、(2)プレゼンス(駐留効果)としてのもの、(3)日米同盟の紐帯の象徴としてのもの。

(1)についてはグアム、テニアンから作戦行動を起こすことも可能であり、(2)については沖縄嘉手納基地の空軍を初め在日米軍の大部分が残り、いずれも相対的なものである。しかしながら、(3)の日米同盟の紐帯は致命的なものであった。

米国が海兵隊(今回の辺野古移設の対象となる第三海兵遠征軍第31海兵遠征部隊:MEU)の沖縄駐留に拘(こだわ)る理由は、蟻の一穴で今後米軍が沖縄から排除される切っ掛けになりかねないとの懸念、いろいろな作戦上の自由度を高めるため沖縄に海兵隊遠征部隊の拠点があった方がよいと考えたこと、日本の思いやり予算を期待できること等であった。

特に思いやり予算については、身も蓋もない米国の懐事情によるが、米国も海兵隊員を喰わせなければならない以上、決して軽視できない事柄である。そもそも、そうやって足下を見られるのは、日本が防衛を米国に大きく依存しているからである。普天間問題は、こうした歪みの一つの症状にしか過ぎない。

歪みの解消には、日本に先ず自主防衛の覚悟が必要である。核の傘は別枠として、通常兵器では基本的に自衛隊だけで国防を行える体制の今後10年目処での構築が必須であろう。このための防衛コストについては、防衛的な兵器については武器輸出三原則を緩和する等の施策によって圧縮する等々も検討すべきだ。

また何より、アジア諸国の日本軍国主義復活への警戒感、および米国に米国離れ中国接近の疑心暗鬼を起こしかねない。これらについて、鳩山氏らの「東アジア共同体」「小沢氏の日米中正三角形論」が危ないシグナルを送っている。イラク戦争のような侵略性の強い戦争を起こしたことは非難すべきだが、それがアジアから米国を遠ざけるべきとは理論的にも現実的にも直結しない。

日本の考える「国際的大義」を定義し、安全保障と国際貢献の範囲と基準を明確に示すとともに、自主防衛でしっかりとした「角」を占めながらも安全保障では米国側に立つ「日米中直角不等辺三角形論」が当面の日本の進路であろう。

普天間基地問題の解決は、そういった足場を固めた上での地道な日米交渉を通してしか有り得ない。【了】

■関連情報
PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。

PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。



関連記事:
タグ:
pagetop

PJ 記者