ここから本文です。現在の位置は トップ > 地域ニュース > 群馬 > 記事です。

群馬

文字サイズ変更

八ッ場ダム・流転の行方:事業負担金支払い再開 知事「本体建設が前提」 /群馬

 ◇推進方針を強調

 八ッ場ダムを巡り、1都5県は2日、留保していた今年度の事業負担金について支払いの再開を発表した。留保によって生活再建の遅れを懸念していた地元は歓迎する一方、大澤正明知事は会見で「再開は、あくまでダム本体建設が前提だ」と推進の方針に変わりがないことを強調した。

 6知事と馬淵澄夫国土交通相との会談は11月末の予定だったが、馬淵国交相に対する問責決議案が参院で可決されるなど日程調整で延期され、1日夜の会談が急きょ決まった。

 大澤知事によると、中止方針の「棚上げ」や「大転換ではない」など与党内の食い違いについて、馬淵国交相は会談で改めて「予断なく再検証する」と明言。来秋としていた建設可否の結論についても「可能な限り早い時期に前倒しする」と譲歩したことを受けて支払いの再開で足並みをそろえたという。

 会見で大澤知事は、結論の「前倒し」を評価する一方、再開は「ダム建設が前提」と強調した。中止の場合、6都県は負担金の返還を求める訴訟も視野に国の責任を追及する方針で、検証結果によってはダム問題が飛び火する可能性もある。

 今年度分の事業費88億円について6都県は、検証スケジュールを早期に明らかにすることを求め、今年7月に支払いの留保を決定。国交省は来月上旬にも(ダム事業の)資金が枯渇する可能性を示し、地元住民の生活再建の遅れが懸念されていた。11月末に支払いの再開を大澤知事に求めた長野原町の高山欣也町長は「再開が決まってほっとした。(代替地の)用地買収費用を心配したが、年度内に解決して心配がなくなった」と安堵(あんど)していた。【鳥井真平、奥山はるな】

==============

 ■視点

 ◇国は誠実な対応を

 1都5県知事が事業負担金の支払い再開を決めた。知事側は事業費の枯渇で生活再建の遅れも懸念していた地元に寄り添う形でダム問題の進展を図ったといえる。民主党政権は中止方針の「棚上げ」など一定の譲歩を見せるが先行きは依然として不透明だ。国はより誠実な対応が求められる。

 馬淵澄夫国交相は1日夜の会談で「予断なき再検証」を改めて明言。与党内で食い違う発言の一本化と理解して支払い再開で合意した。建設可否の結論も「可能な限り早く」と譲歩を引き出した。国へ圧力をかけるため、6都県が今年7月末に決めた負担金の留保が功を奏したのだろう。

 政治的な意味でダム問題が迷走する一方、負担金の留保は地元に影を落としていた。長野原町の高山欣也町長は、資金の枯渇で道路や鉄道の付け替えなど代替地の整備や取得への影響を危惧し、知事や国との会談で不安を口にしていた。

 支払いの留保から再開まで約4カ月。水没予定地の川原湯温泉で老舗旅館がまた1軒休業した。疲弊は確実に進んでいる。国は地元の置かれている状況を真摯(しんし)に考えなければならない。【鳥井真平】

毎日新聞 2010年12月3日 地方版

PR情報

群馬 アーカイブ一覧

 
共同購入型クーポンサイト「毎ポン」
地域体験イベント検索

おすすめ情報

注目ブランド