熱血!与良政談

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熱血!与良政談:国の危機、政治家の責任=与良正男

 阪神大震災が起きたのは1995年1月17日早朝だった。「自社さ」連立の村山富市内閣のころ。当時、村山首相の足元、旧社会党は党が分裂する瀬戸際の状態で、この日午前、村山執行部に反発するグループが新党結成の前段として国会で新しい会派を作る算段になっていた。

 しかし、大震災の発生でその動きはピタリと止まる。「党内抗争をしている場合か」という自制が働いたからだ。野党第1党の旧新進党が、予定されていた国会の代表質問を延期し、政府が震災対応に専念するよう提案する一幕もあった。

 語弊を承知で言えば、この例が示すように国の危機的状況というのは本来は時の政権には追い風になる。いや、危機をテコに強くなってもらわなくては困るというべきだろう。

 大災害とは違うかもしれないが、今度の北朝鮮による砲撃事件(実は尖閣問題もそうだと思うが)は、やはり、日本にとって重大な危機といえる状況だ。だから、臨時国会の様相も少しは変わるだろうと思っていたが、結局、補正予算成立と引き換えにするように、危機管理の要でもある仙谷由人官房長官らへの問責決議が参院で可決され、与野党はどっちが先に音を上げるかのチキンレースに突入してしまった。

 もちろん、まず批判されるべきは菅政権だ。この政権で危機を乗り切れるだろうかと、国中が心配している。特に岡崎トミ子国家公安委員長が砲撃発生の一報を受けた後も警察庁に登庁せず、議員宿舎にいたのはお粗末だった。「登庁しても、かえって足手まといになるのでは」と自虐的に言う人が政界にもいたけれど、もはや冗談を飛ばす時期は過ぎた。

 でも、自民党をはじめ野党は批判しているだけでいいのか。問責決議は国会対策上は有効かもしれないが、腰の据わらぬ対応と私には映る。

 菅政権に任せておけないというのなら、なぜ、自民党は「直ちに政権を返せ」ともっと強く言わないのだろう。なぜ、早期の解散・総選挙を求めて今国会でも衆院で内閣不信任案を出さないのだろう。否決される公算は大きいが、本気度が伝わると思う。それができないのなら「私たちも弱い内閣を手助けする」と言った方が自民党への信頼は高まるのではないか。

 ある財界人が「みんな責任という言葉を忘れてしまっている」と言った。その通りだと思う。(論説副委員長)

2010年12月2日

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