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社説:菅政権 党・内閣人事の刷新を

 臨時国会が閉会し、菅直人首相はほっと一息ついているのだろうか。まさか、そんなことはないと信じたい。今度の国会は補正予算成立がほぼ唯一の実績だった。既に指摘しているように菅政権は自壊の瀬戸際にあるといっていい。まずそこに強い危機感を感じるべきだ。

 振り返れば、政権のつまずきは尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の処理のまずさから始まった。首相や仙谷由人官房長官らが、逮捕した中国漁船船長を釈放した判断と責任を検察当局に押しつけているうちにビデオ流出事件も起きた。

 そして柳田稔前法相があきれるような失言で辞任。11月23日の北朝鮮による砲撃事件では岡崎トミ子国家公安委員長が発生の一報を受けた後も警察庁に登庁しなかったことなど初動の遅れが批判を浴びた。とても法案をじっくり審議するような状況ではなかったというのが実相だ。

 危機感と責任感の乏しさ、そして難題を先送りする体質が、自らを苦境に追い込んでいるのではなかろうか。多くの国民は本当にこの政権に任せて大丈夫なのかと不安を覚えているはずだ。

 今後も来年度予算編成や税制改革など政権の大仕事が続き、年明けには通常国会が待っている。決してほめるわけにはいかないが、自民党など野党は参院で問責決議が可決された仙谷長官や馬淵澄夫国土交通相が辞任しない限り、審議には応じない構えを見せている。通常国会はいきなり行きづまる可能性がある。

 そうした国会対策のためだけでなく、もう少し強く、そして責任感を持った内閣、党執行部を作るためにも、もはや内閣と党の人事を刷新すべきではないか。法務行政の経験がなかった柳田前法相に見るように、元々、今の内閣は党内各グループのバランスを重視した布陣で、必ずしも適材適所とはいいがたい。仙谷長官が法相を兼務する状態が続くのも望ましくないからだ。

 確かにそれで衆参ねじれが解消されるわけではない。だが、衆院で法案の再可決が可能となる3分の2以上の議席を確保するため、普天間問題などで意見が一致するのは不可能とみられる社民党と再び連立を組むより、よほど筋が通っている。

 そして何より、菅首相が自分は何を「有言実行」したいのか明確にすることだ。消費税率引き上げをはじめとする財政再建や、「環太平洋パートナーシップ協定」(TPP)への参加が、この国に必要だと信念を持って考えているのなら、党内の亀裂を恐れず、自らがリードし、決断していくべきである。

 そうした正攻法でしか、菅政権は活路を見いだせないだろう。

毎日新聞 2010年12月4日 2時33分

 

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