臨時国会がきのう閉幕した。民主党政権が初めて臨んだ、ねじれ国会。菅直人首相の唱えた「熟議」は掛け声倒れに終わった。
継続分も含めた提出法案37本で成立したのは4割弱にすぎない。
懸案になっている派遣労働の規制や郵政改革など国民の暮らしに直結する重要法案はまともに審議されなかった。朝鮮王朝時代の文化財を引き渡す「日韓図書協定」の承認まで先送りされる始末だ。
党首討論も実現しなかった。揚げ句の果てが、国会開設120年記念式典での言動をめぐる懲罰動議合戦である。これで「言論の府」なのか、あきれるほかない。
「熟議」不発の責めが真っ先に政府・民主党に向けられるのは当たり前だろう。
最重要とした補正予算案の提出は召集から1カ月近くたってから。相次ぐ外交課題に首相は予算委で守りの答弁に追われた。内政の座標軸も示せなかった。高飛車な物言いが目立った仙谷由人官房長官らへの問責決議案が審議ストップに駄目を押す格好となった。
政治とカネの問題で今国会中に実現するはずだった小沢一郎元代表の国会招致の約束はほごになり、野党の反発に拍車を掛けた。年明けには通常国会が控える。これ以上の先送りは許されまい。
攻め立てるばかりだった野党の責任も重大だ。柳田稔前法相ら閣僚の失言を口実に、多数を握る参院で力任せの問責決議を連発。本質的な政策論争そっちのけで、党利党略の駆け引きに終始した感が否めない。
与野党の攻防は問責決議が先か補正予算案が先かで抜き差しならなくなっていた。朝鮮半島での砲撃という緊急事態が起きなければ、補正予算成立にこぎ着けられたかどうか。
来年度の当初予算案を審議する通常国会に教訓として生かすためにも、与野党に猛省を求めたい。
手掛かりになるのは地域主権改革関連3法案をめぐり与野党合意のめどが見え始めたことだ。成立こそ持ち越したものの、文言を手直しする方向で大筋一致したようだ。こうした柔軟な対応を基本とすべきだろう。
もとより閣僚は慎重な言動が欠かせない。今回の事態で身にしみたはずだ。内閣改造も含めた何らかの「けじめ」を示せないなら、仕切り直しもできまい。
過半数割れの参院では政府が法案を通すのも難しくなっている。民主党内では公明党との連携や社民党を再び取り込む「旧連立政権」再結集といった「窮余の策」も浮上しているという。一方、参院の多数を頼みに首相退陣を迫る野党側。こんなありさまでは有権者の政治不信が募るばかりだ。
政治は数合わせで「熟議」などはしょせん絵に描いた餅にすぎない―ということだろうか。
「ねじれ」状態は今後も続く。与野党が角突き合わせる対決一色ではなく、是々非々で政策論争を極める国会こそ有権者が望んでいる姿のはずだ。不毛な審議は何ももたらさない。
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