臨時国会が閉幕した。これほど非生産的で国民に醜態をさらした国会も珍しいのではないか。
与野党が立場や主張の違いを乗り越えて政策本位で議論を尽くし、新たな合意形成のあり方を探る-。
菅直人首相が唱えた「熟議の国会」は完全に不発に終わった。
熟議どころか、仙谷由人官房長官ら閣僚2人に対する参院の問責決議が可決され、「辞めろ」「辞めない」の応酬で与野党が相手をなじり合ったまま、幕切れを迎えてしまった。
掲げた目標の高さと目の当たりにした現実の落差にがくぜんとしてしまう。
振り返って一体、何を決めた国会だったか。円高・デフレ対策を盛り込んだ5兆円規模の補正予算以外に、これといった成果は思い浮かばない。
しかも、この補正にしても参院では否決された。衆院の議決を優先する憲法の規定で成立にこぎ着けたにすぎない。
編成段階から野党の意見も取り入れ、与野党が協調し、責任も共有して成立を目指す。できれば、その成果を政策や法案ごとに野党勢力と連携する「部分連合」へつなげていく-。そんな菅首相のもくろみも、雲散霧消してしまった。
補正予算を成立させるのが精いっぱいで、郵政改革法案、労働者派遣法改正案、地域主権改革3法案など、重要法案は軒並み継続審議となった。
先送りされた法案の多くが、マニフェスト(政権公約)を実現するための法案であり、鳩山由紀夫前政権から引き継いだ宿題だったことを考えると、菅政権の停滞ぶりはいっそう際立つ。
当面する内政だけで青息吐息といった政権の足元を見透かすかのように、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件、ロシア大統領の北方領土訪問、そして北朝鮮による韓国領土砲撃と、外交・安全保障のあり方を問う事件や問題も相次いだ。
政府の危機管理に問題はないか。与野党で一致して取り組むべき緊急の課題は何か。そんな論議を深める絶好の機会だったはずなのに、野党が「失政」と政権批判を強めれば、政府・与党はその弁明と反論に終始してしまった。
検察審査会の議決によって強制起訴される小沢一郎民主党元代表の国会招致も、とうとう実現しなかった。企業・団体献金の禁止を含め、「政治とカネ」の問題もまた、持ち越された。
国会軽視発言で柳田稔前法相が更迭されたのは、「言論の府」が自壊し始めた兆候ではないか。金切り声で激高する質問に支離滅裂な答弁、飛び交う罵声と聞くに堪えないヤジ。国会の権威と品位はどこへ行ったのかと、あえて問いたい。
すべては「ねじれ国会」の成せる業なのか。必ずしもそうではあるまい。ねじれていようといまいと、守るべき節度と果たすべき使命は不変であるはずだ。
与党、野党を問わず、性根を入れ替えて出直すべきである。
=2010/12/04付 西日本新聞朝刊=