菅直人首相は臨時国会閉会を受け、政策課題への取り組みを本格化させる。ただ、財源不足の中で編成する2011年度予算のほか、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設、「ねじれ国会」打開など、待ち受けるのは難題ばかり。複雑な調整をクリアし政治決断に踏み切れるのか、正念場の年末を迎える。
最初のハードルは予算編成。政府は6月に決めた財政運営戦略で、国債費を除く11年度予算の歳出規模を約71兆円以下、新規国債発行額は約44兆円以下に抑えると明記。国債費を除き約72兆6千億円に上る概算要求の絞り込みが不可欠となる。
子ども手当支給額の上積み財源は確保されていない。基礎年金の国庫負担割合では財務、厚生労働両省が激しく対立。政府、与党は50%を維持する方針だが、財源確保は「悩ましい問題」(仙谷由人官房長官)だ。
11月の日米首脳会談で首相が「最大の努力をする」と明言した普天間問題。仲井真弘多沖縄県知事は再選後、県外移設をあらためて求め、同県名護市辺野古崎への移設を目指す政府と溝は深い。
首相は年内の沖縄訪問を探る。だが移設進展に直結する新たな基地負担軽減策や振興策は見いだせていない。首相は2日、期限を設けず協議を続けるとの見解表明を余儀なくされた。米国、沖縄双方の納得を得るのは極めて困難な情勢。首相が成算もなく決着を急げば、この問題の迷走で退陣した鳩山由紀夫前首相の二の舞いになりかねない。
1月召集の通常国会に向け、首相は参院での過半数確保を急ぐ。野党は問責決議を受けた仙谷氏らの交代を求めたが、首相は否定。このため、公明党との連携や自民党との大連立など、さまざまな打開策が取りざたされている。ただ、いずれも協議の難航は確実だ。
民主、国民新、社民の3党連立を復活させて衆院で3分の2を確保し、参院否決の法案を衆院で再可決する選択肢も検討。だが、野党の強い反発で政局が一気に流動化する懸念が付きまとう。
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