2010.12.6 05:00
政府は2011年度のデフレ克服という目標に向けて、補正予算や11年度本予算で経済対策を打ち出した。「物価の番人」である日銀もリスク資産買い入れを含む包括緩和を発表した。表面上は足並みをそろえるが、デフレ脱却へ向けた意気込みには温度差もあり、日銀の取り組みが十分かは疑問が残る。
海江田万里経済財政担当相は衆院予算委員会や定例会見でデフレ脱却の目標時期について、「11年度中に消費者物価をプラスにする。それが1年以上続けばデフレ脱却だ」と述べた。だが、官房長官の問責決議案が可決されるなど来年度予算の審議にも暗雲がたれ込め、機動性のある金融政策は期待できない。
一方、日銀は10月5日、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の購入を含む5兆円規模の緩和策を打ち出した。野田佳彦財務相は「共通の認識と目標の一体となった取り組みだ」と評価、良好な協力関係を強調する。ただ、日銀が望ましい物価上昇率について「(消費者物価指数=CPI=の前年比が)マイナスの値は許容していない」と踏み込んだのはつい1年前。日銀の独立性を担保したい白川方明総裁は、物価は金融政策の参考指標の一つに過ぎないという立場だ。日銀の須田美矢子審議委員も今月1日の講演で、市場に物価上昇期待がなかなか醸成されないと指摘。CPIが「11年度にプラスが実現できるとは思っていない」と述べるなど、日銀が10月に公表した11年度の0.1%増というCPI予想を後退させた。
“同床異夢”の政府と日銀。11年度中のCPIがプラスに、つまりデフレ脱却という目標実現は極めて薄いといえそうだ。