【社説】北の政権交代より挑発への報復が先だ
李明博(イ・ミョンバク)大統領は3日、北朝鮮ですでに住民の生活基盤となっている街中の市場、相次ぐ脱北など、北での最近の変化に言及しながら、「北朝鮮に肯定的な変化が存在すると思っている。指導者の変化以上に注目すべき点は、(このような)住民たちの変化だ。歴史上、国民の変化に反対できるような、いかなる権力も存在しなかった」などと述べた。また、先月行われた対国民談話では、「(北朝鮮が)自ら軍事的な冒険主義や核兵器の放棄に乗り出すことは、期待できないことが分かった」と語っている。クリントン米国務長官も、7日にワシントンで開催される韓米日外相会談を前に、「米国は北朝鮮政権の行動を変えるために、関係各国と共に努力する。権力を持つ少数にしか恩恵が行き渡らない現在の方式とは異なった国の運営の仕方があるという点を、北朝鮮に示したい」と発言した。
李大統領とクリントン長官の発言は、「北朝鮮の指導層が自分たちの行動を最後まで変えないのであれば、最終的に彼らを権力の座から引きずり下ろし、北朝鮮に変化をもたらす以外にない」ということを意味している。対北朝鮮政策の方向性を、「政権交代」の方向へと転換させるというシグナルだ。
北朝鮮はこれまで20年以上にわたり、米朝会談、3者会談、6カ国協議などを通じ、核廃棄の空手形を出す見返りに、軽水炉の建設や重油など、非常に多くのものを手にしだだけでなく、その裏では、核兵器やミサイル開発などに全力を傾けてきた。今ではウラン濃縮施設まで公開し、核保有国として認めるよう要求するほどだ。金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政権当時、韓国から北朝鮮に流れた現金だけでも3兆3356億ウォン(現在のレートで約2410億円、以下同じ)に上る。ところがその見返りもやはり、韓国海軍の高速艇「チャムスリ(オオワシ)」攻撃、哨戒艦「天安」沈没、延坪島砲撃などとしてこちらに返ってきた。その一方で、北朝鮮住民の苦しみはさらに深まっている。このような状況では、「金正日(キム・ジョンイル)総書記を中心とする政権を交代させる以外にない」という声が出るのも、ある意味当然のことだろう。
しかし、金総書記を政権の座から引きずり下ろすのは、金総書記に国際法や南北合意を守るよう教育することと同じくらい、あるいはその何倍も困難な課題だ。金総書記を権力の座に置いたまま、北朝鮮が改革・開放へと向かうよう誘導する政策も、結果的に失敗した。北朝鮮の改革・開放にさえ消極的な態度しか示さない中国が、北朝鮮の政権交代に積極的に協力することなど到底、期待できない。こちらが大々的に北朝鮮の政権交代を目指した場合、北朝鮮は見境のない挑発行為や破壊行為、あるいは局地攻撃などにさらに乗り出してくる可能性もある。
そのため今やるべきことは、北朝鮮が大韓民国をむやみに攻撃できないよう、軍事的に圧力をかけるための体制強化と、米国など同盟国や友邦国との緊密な協力体制を一層強化し、万一の事態に備えることだ。わが国の安全保障の再スタートは、「大韓民国は一度口にしたことは必ず行動に移す国」という事実を、敵だけでなく、同盟国にも確実に認識させることだ。