アルコールを含まない「ノンアルコールビール」の未成年(20歳未満)者への販売を巡り、コンビニエンスストアの店主らが頭を悩ませている。販売に法的な制限はないが、メーカーは「20歳以上の方の飲用を想定して開発しました」と缶に表示し、小売店には販売しないよう求めている。これに応じて酒類と同様に販売しない店もあれば、酒ではないとして販売する店もある。ビールの後味のように「スッキリ」とはいかないようだ。【合田月美】
「高校生に売ってもいいでしょうか」。東京都内のある警察署には8月以降、ノンアルコールビールに関する問い合わせがコンビニから10件、スーパーやデパートから3件寄せられた。
未成年者飲酒禁止法で未成年への販売が規制される酒類は、アルコールが1%以上含まれる飲料。ノンアルコールビールの未成年への販売は違法ではない。だが、この警察署には「ノンアルコールとはいえ、高校生が堂々と買うのはおかしい」との苦情もあるという。署の担当者は「売ってはいけないとは言えず、『好ましくはないのでは』と答えるのが精いっぱい」とこぼす。
コンビニを経営する会社によっても対応は分かれる。「ローソン」と「サークルKサンクス」は店舗に未成年への販売を認めている。「セブン-イレブン」「ファミリーマート」「ミニストップ」は販売を認めていない。ミニストップの広報担当者は「メーカーの意向を尊重した」という。だが、あるコンビニの広報担当者は「あくまでお願いであって、実際は店の判断次第」と打ち明ける。
東京都江戸川区のコンビニ店長は「不良ならアルコール入りのビールを買う。そんなに厳しくしなくてもいいのでは」。千代田区の店長は「昔あった、たばこ形のチョコレートと同じようなもの。なぜ売れないのか理解できない」と言う。
一方、NPO法人「アルコール薬物問題全国市民協会」の今成知美代表は「飲酒の橋渡しになる」として未成年への販売には批判的だ。警察庁少年課は「違法ではないが、飲酒などの非行を防ぐ目的のため店舗が未成年への販売を自粛するのであれば、それが好ましいのでは」と話している。
【ことば】ノンアルコールビール 02年の道路交通法改正による飲酒運転の厳罰化をきっかけに普及した。当初はアルコール1%未満の商品を指していたが、微量でもアルコールが含まれていたため、コンビニ各社は一律で酒類同様に扱い、未成年への販売を自主規制していた。今夏までに大手4社はアルコール0%の商品を発売し、「ビール酒造組合」によると、現在、アルコールを含むものは国内では生産されていないという。
毎日新聞 2010年12月4日 21時55分(最終更新 12月4日 23時12分)