|
きょうの社説 2010年12月6日
◎鳥インフルエンザ 野鳥防止ネットの再確認を
島根県安来市の養鶏場で検出された高病原性のH5型鳥インフルエンザウイルスによる
感染被害は北陸にとっても人ごとではない。これから渡りのシーズンを迎え、大陸から日本海を渡って大量の野鳥が北陸にも飛来してくる。養鶏場はもとより、石川県ではトキの分散飼育が始まっており、感染は絶対に許されない。島根県のケースでは当初、鶏舎を覆う防鳥ネットに不備はないとされていたが、その後 の調査で国の定めた基準より網目が大きく、網目が広がったところもあり、小鳥の出入りが可能だった。ウイルスを運ぶ野鳥と接触させないのが鳥インフルエンザ対策の基本である。養鶏場経営者や自治体関係者は防鳥ネットに問題がないか、思わぬすき間や破れがないか再点検してほしい。 島根県は、国の検査による確定を待たずに先月末から防疫措置を取り、問題の養鶏場で 飼育されていた約2万2千羽の鶏を殺処分した。検出されたウイルスは致死率が高い強毒性で、今年10月に北海道で野生のカモのふんから検出された鳥インフルエンザウイルス「H5N1型」に極めて似ているという。韓国では同時期に、中西部の養鶏場で鳥インフルエンザの発生が確認されており、野鳥に感染が広がっている可能性がある。 石川県には鶏を100羽以上飼っている養鶏場が46カ所、富山県には30カ所ある。 このほか、いしかわ動物園(能美市)や小中学校でアヒル、ウズラ、キジなどを飼育している。石川県は、県内や隣県での発生に備えた対策マニュアルを策定しており、県内で感染の疑いが確認された場合は対策本部を設置し、訓練に参加した市町の担当者らと連携して防疫作業に当たることになっている。 だが、感染が広がってからでは遅い。防鳥ネットは国の基準に沿ったものを使用してい るか、木の枝などが絡んで網目が破れたり、広がっているところがないか、鶏の健康チェックとともに、念入りに点検してほしい。島根県の鶏舎では、小型の野鳥が侵入していたのを経営者が目撃している。野鳥との接触を絶つために、防鳥ネットの管理を徹底したい。
◎一括交付金 期待よりも先立つ不安
政府の2011年度予算編成で地方にとって大きな焦点は、補助金の一括交付金化であ
る。概算要求段階で府省が交付金化を容認したのは計28億円にとどまったが、地域主権戦略会議は都道府県を対象に来年度は5千億円超、12年度は市町村を含めて1兆円規模にすることを決めた。規模に関しては一定の方向性が見えてきたが、今月下旬の予算案決定へ時間が限られる なか、果たして制度設計はうまくいくのだろうか。全国知事会など地方団体は小泉政権時代の三位一体改革で地方交付税が減らされた苦い記憶があるだけに、補助金と同額以上を繰り返し求めている。 臨時国会では、国と地方の協議の法制化など地域主権改革関連3法案の成立が再び見送 られた。国の出先機関改革でも、地方移管業務の取りまとめが遅れている。民主党政権発足時に改革の「一丁目一番地」と位置づけられた地域主権改革は大きく後退した。こんな現実をみせつけられれば、交付金改革への地方の期待もしぼみ、不安感が先に立つのも当然だろう。 一括交付金化は使い道を縛る補助金行政を改め、地方が自由に使える財源を増やすもの である。民主党代表選で小沢一郎元代表が語ったような国の財源捻出の手段ではない。省庁を超えた大くくりの交付金で縦割りの弊害が改善され、予算執行の効率化による削減は考えられるとしても、それを超えて減額すれば国と地方の対立は決定的なものになる。結果として地方が割を食う中身なら、やらない方がましである。 補助金の配分権限で地方を掌握している省庁にとって一括交付金化は積極的にやりたく ない仕事かもしれない。だからこそ、改革をやり抜くには首相の覚悟と強いリーダーシップがいる。内閣支持率が急落し、官僚に足元を見透かされる今の菅直人首相に、そうした実行力は期待できるだろうか。 一括交付金化へ向けては、片山善博総務相が具体額を示し、関係閣僚に上積みを求めて いる。改革の先導役を片山氏に任せたからには、仕事しやすい環境を整えるのが首相の最低限の責務である。
|