ゼロ金利:「8月の二の舞いできぬ」 政界、法改正で圧力

2010年10月6日 2時37分 更新:10月6日 2時41分

 「もう8月10日の二の舞いはできない」

 9月下旬、日銀幹部は追加緩和の決意を固めていた。日銀が8月10日、金融政策の現状維持を決めたのに対し、米連邦準備制度理事会(FRB)は追加緩和に踏み切り、外為市場ではドル売り・円買いが加速。9月14日には一時1ドル=82円台まで円高が進み、政府・日銀は6年半ぶりの為替介入に追い込まれた。

 そのFRBのバーナンキ議長は今月4日、「(米国債などの)追加購入で金融状況の緩和が可能と考える」と述べ、FRBは11月上旬に追加緩和策に踏み切るとの見方が一気に強まった。

 政府・与党からの風圧も強まり、日銀内部で「独立性への不安」は極度に高まっていた。参院選では、政府と日銀による政策目標の共有などを盛り込んだ「日銀法改正」を主張するみんなの党が躍進。民主党でも、議員150人が参加するデフレ脱却議連が日銀法改正を主張、包囲網は超党派に広がった。

 党を二分する代表選後、「『菅(直人首相)』も『小沢(一郎民主党元代表)』もなく、各勢力が一致できるのが日銀たたき」(経済官庁幹部)。菅首相は1日の所信表明で、「(日銀に)さらなる政策対応を期待する」と、直接的な表現で追加緩和を求めた。財務省は、「市場の期待に応えるべきだ」と水面下で本格的な追加緩和を働きかけた。

 為替介入による円高歯止め効果が薄れ、環境対応車(エコカー)補助による景気浮揚策も終了。9月末に発表された日銀の企業短期経済観測調査では、景気の先行き不安が鮮明になり、「新型オペ」を20兆円から30兆円に増額した8月30日の追加緩和を「不完全燃焼」(日銀幹部)と感じていた白川方明総裁も、異例の緩和策導入に傾いた。9月26日の講演では、追加緩和について「新たな感覚で適時適切に行動する」と述べたが、これは「白川総裁の決意を示したもの」(幹部)だった。

 今回決まった「包括緩和」は、適正な金利をつける市場機能を損ないかねない「ゼロ金利の復活」や、国民負担につながりかねない「リスクのある金融資産購入」などを一気に実施するもので、「劇薬」と評する日銀幹部さえいる。FRBの先を行く政策に胸を張り、日銀内には「飛び降りた気分だ。ここまでやれば、評価してもらえる」(幹部)と高揚感が漂った。だが、市場では「米国経済の減速懸念は根強く、効果は長続きしない」(アナリスト)と冷めた見方も根強い。【坂井隆之、清水憲司】

top

PR情報

アーカイブ一覧

 
共同購入型クーポンサイト「毎ポン」

おすすめ情報

注目ブランド