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2010年11月30日

女性のバッグから財布が見えると盗ってしまうんです

 今回は、先週金曜に行われた渡辺洋幸被告人の裁判の話。罪名は常習累犯窃盗。事件の中身は、新聞記事から。

 女性の財布をすったとして、警視庁城東署に窃盗容疑で逮捕された渡辺洋幸容疑者(42)が、調べに「他にも5件ほどスリをやった」と供述していることがわかった。

 同署の調べによると、渡辺容疑者は9月21日、JR亀戸駅のホームで、女性のバッグから財布を盗もうとしているのを別の乗客に見つかり、取り押さえられた。調べたところ、渡辺容疑者の所持品から他人が購入したコンサートチケットなどが見つかったため、窃盗容疑で逮捕していた。

 逮捕容疑は8月28日午後6時ごろ、JR新宿駅のホームで、女子学生(18)のバッグから財布を抜き取り、コンサートチケットや現金約7千円を盗んだとしている。

 スリって、被害者に気づかれないように盗む技術が必要だから、職業的に行っている人が多いわけです。いわゆるプロの犯行。だから、余罪が5件ってだけでニュースになること自体珍しい気が。

 起訴されたのは、新宿駅で現金7000円とコンサートチケットが入った財布をスリ盗った、1件だけ。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は前科4犯。すべて、女性のバッグから財布を抜き取る犯行らしい。

 被告人は去年の12月に出所したが、競輪やパチンコに使う金を得るため、今年の5月下旬からスリを再開したと言う。

 調べに対し、被告人は、「刑務所で貰った賞預金は、週に1~3回やっていた競輪とパチンコで使い果たした。5月から14~15回、女性の財布を盗んだ」と述べているとのこと。

 スリは5回どころじゃなかったようです。

 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

弁護人「盗みが悪いのは百も承知ですね?」
被告人「はい」
弁護人「出所後、どうやって生活していましたか?」
被告人「両親と一緒に生活していました」
弁護人「仕事はしてませんでしたね?」
被告人「ハローワークで探して面接まで行ったんですが、採用されず、ずっと探してました。体力には自信ありますので、何でもやりたかったんですが......」

 就労意欲はあったものの、仕事がなかったようです。

弁護人「盗みをやったのはなぜですか?」
被告人「貧困が理由で他人の物に手をつけました」
弁護人「同じような犯罪で前科もあってね、思い留まれず、誘惑に負けたのはなぜですか?」
被告人「私の真面目に生活する気持ちが薄れていたことと、両親に迷惑掛けているという思いが......」
弁護人「盗むとき、両親の顔は思い浮かばなかった?」
被告人「さらに迷惑掛けると思っていました」

 わかっているのにやっちゃうとは。仕事が見つからずに焦ってたってことなんだろうけど。

弁護人「またやらない為、どうすればいいですか?」
被告人「仕事をしていれば犯罪はしていませんので、仕事に就くことが必要だと思います」
弁護人「あと、ギャンブルもあなたを狂わせる要因でしょ?」
被告人「はい。(過去に)競輪の予想屋をやってまして、それで浪費癖がついてしまって......」

 と、述べ、今後はギャンブルをしないと宣言して、質問終了。

 次は、女性の検察官から。

検察官「なんでギャンブルするの?」
被告人「父がやっていた予想屋を継いだんですけど、それで......」

 親子2代で予想屋だったようです。こりゃ珍しい。

検察官「5月にスリをやりだしたのはなぜですか?」
被告人「ギャンブルの誘惑に負けてしまいました」
検察官「悪いとわかってて再開した理由は?」
被告人「働けばいいんですけど、癖が治らずまたやってしまいました」
検察官「前科もそうなんですけど、なぜ女性ばかりを狙うんですか?」
被告人「女のバッグから財布が見えると、発作的に盗ってしまうんです......」
検察官「男を狙わないんですか?」
被告人「今までしたことないので......」
検察官「そういうことじゃなくて、ケツポケットに財布入ってるのは盗ろうと思わないの?」
被告人「気づかれやすいと思って」

 これが被告人のスリの手口といったところでしょうか。それにしても、“ケツポケット”って言い方は、女性はあまり使わないよなぁ。検察官という職業上、普段から言ってるのかもしれないけど。

 この後、再犯しないことを誓って、質問終了。最後は裁判官から。

裁判官「もし、両親がいなかったら、出所後はどうしてたと思いますか?」
被告人「安定した仕事に就いて、まっとうな生活をしなければいけないと思います」
裁判官「そうですよね。ホントに本気で職探しをしてたんですか?」
被告人「ハローワーク行ったり、資料集めはしてたんですが、フラフラしてこんなことをしてしまいました。ギャンブルをやめないと、繰り返しになると思います」

 これを聞いた裁判官が顔色を変えて、

裁判官「ン? 犯行の原因はギャンブルなの?」
被告人「賭け事をしてると仕事するのを忘れてしまうというが......」
裁判官「普通の人は、仕事をしてギャンブルもするんですよ! 話を聞いていると、職探しをしてたようだけど、口で言ってるほど、本気で立ち直ろうと思ってなかったんじゃないですか? 口で立派なこと言うんじゃなく、態度や行動で示さないと。あなたの場合、両親がいる間にやらないとね。誰も助けてくれませんよ」

 と、説教して質問終了でした。ギャンブルしない人だっているんだから、仕事して賭け事する人が普通という前提はどうかと思うけど、被告人に比べれば普通か。

 この後、検察官が懲役4年を求刑して閉廷でした。なくて七癖とはいうけれど、女性のバッグから財布が見えると盗っちゃう癖ってのは困りものだ。

注目の裁判

11月29日(月)
被告人・青木由美子(初公判30日、1日、3日も)
被告人・山本竜太(30日、2日も)
被告人・佐藤奈津子(30日、1日も)
被告人・安田茂(初公判)
被告人・今弘之(30日も)
被告人・洞下英範(1日も)
被告人・國見東一(判決)

11月30日(火)
被告人・野上幸雄(控訴審初公判)
被告人・西田正希(控訴審初公判)
被告人・阪中彰夫(控訴審判決)

12月1日(水)
被告人・宮下修、石崎博章(初公判)

12月2日(木)
被告人・竹原章介、岩本陽二(初公判)
被告人・板倉繁巳(初公判)

12月3日(金)
被告人・林武(初公判)
被告人・満井忠男、緒方重威


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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)「裁判狂時代」「裁判狂事件簿」(河出文庫)、「被告人、もう一歩前へ。」(ゴマブックス)、「アホバカ裁判傍聴記」(創出版)。

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