諸行無常の笛の音が、古都にこだました。J2降格が決定している京都に0−2の惨敗。FC東京の日本代表DF今野が不安そうな顔で、ベンチを見た。J1残留を争う神戸の勝利を知ると頭を抱えてピッチに伏した。
「何も考えられない。何もやる気がしない。力が抜けている。呆然(ぼうぜん)です…」
首都からJ1の灯が初めて消えた。16位の神戸と勝ち点1差で迎えた最終戦。気が焦り、ボールが足につかない。埼玉で神戸が浦和から先制した直後、FC東京は京都MFドゥトラにヘッド弾を許した。逆転するしかない状況で後半45分、日本代表GK権田がPKを与える。「神戸は4−0ですか…。浦和に期待したボクがバカでした」と守護神は号泣した。
今年に入り日本代表7人を輩出したクラブが、来季はJ2へ。シーズン途中から残り11試合を指揮した大熊監督は「サッカーの厳しさ、怖さが足りなかった」とため息をついた。技術に頼りがちな“エリート体質”が、ここ一番の粘りのなさ、勝負弱さに現れた。決定機を外したエースFW平山は「予想以上に緊張した。自分に責任があるッス」と肩を落とした。
クラブ最年長、30歳のMF羽生は「このメンバーで落ちるはずがないと誰もが思っていた。それが甘さだった」。試合後は駆け付けた約4000人のサポーターが「東京コール」で励ました。目を真っ赤に腫らした選手たち。J2で“泥臭さ”を身につけ、1年ではい上がるしかない。(浅井武)