韓国の児童をむしばむ「甘いもの中毒」
児童・生徒の肥満の主犯
たばこ、コーヒーのように深刻な中毒になり、甘いものばかり食べると偏食も
児童・生徒の食生活改善のほか、ストレス管理も並行すべき
ソウル市江南区内の高校に通うPさん(16、高1)は、この1年間で体重が15キロも増えた。昨年までは、身長165センチに体重50キロというスリムな体型だった。共働きの母親は、「自分がちゃんと準備して食べさせなかったから子どもがやせている」と思い、いつも家にチョコレートなどのおやつを置いていた。
クラスで1、2位の成績だったPさんは中3になり、高校受験に向けた競争が激しくなる中、成績が少しずつ下がり始めた。Pさんは勉強のストレスがたまると、お菓子の袋を開けた。あめを一つ、二つ、クラッカー数枚…次第にその量が増えていった。
次第に、毎日チョコレートを1、2個食べないとイライラし、物足りなさを感じるようになった。憂うつな気分を落ち着かせようと、慌てて幾つもチョコレートを口に入れ、驚いて吐き出したこともある。肥満クリニックを訪れたPさんに、医療陣は「甘いもの中毒」と告げた。
■肥満児を生む「甘いもの中毒」
先進国では、かなり前から「甘いもの中毒」が社会問題となっていた。世界糖尿病協会では2005年、「全世界の人口の20-25%が、甘いもの中毒という新たな現代病を患っている」と発表した。
日本でも数年前から、10-30代に見られる「ペットボトル症候群(甘い飲み物が入ったペットボトルから付いた名前)」という名の甘いもの中毒が社会問題として浮上した。ほかの国とは異なり、韓国の場合、児童・生徒の甘いもの中毒は誤った食生活だけでなく、学業のストレスとも関連が深い。
ソウル市江南区淸潭洞のストレス・肥満管理医院「NDケアクリニック」のパク・ミンス院長(内科専門医)は、成人には比較的多くのストレス解消法があるが、児童・生徒たちは主にコンピューターゲームをしたり間食を取ったりすることでストレス解消しており、また周囲に子どもたちを誘惑する食べ物があまりに多く、甘いもの中毒に陥りやすい」と話した。
■身体、情緒障害を引き起こす「甘いもの中毒」
ストレスと甘いもの中毒の間には、科学的にも相関性がある。ひどいストレスを受けると、満ち足りた気分を感じさせたり、うつ状態を食い止めたりする神経系伝達物質「セロトニン」の数値が低下する。このとき、甘いものを食べると「幸せホルモン」と呼ばれるドーパミンが活発に分泌され、一時的に気分転換ができる。そうなると、体はさらに甘いものを求め、甘いものを食べると体重が増加するという悪循環に陥る。
また、甘い食べ物は、たばこやコーヒーのように中毒性があり、食べれば食べるほど中毒が悪化し、さらに糖分を求めるようになるが、このような欲求が満たされないと直ちにイライラやうつ症状が現れる。
甘いもの中毒は、成長期の子どもたちに特に大きな害を及ぼす。延世大学セブランス病院のキム・ヒョンミ栄養チーム長は、「甘い物ばかり食べていると偏食しやすく、成長ホルモンの基となる亜鉛、カルシウムなどの必須栄養素を十分に摂取できなくなる上、甘い物がエネルギーに変化する過程でビタミン、無機質を奪うため成長が阻害される可能性がある」と話す。専門家らは「子どもたちが甘いもの中毒にならないようにするためには、食生活の改善以外にも、ストレス管理を並行すべきだ」と助言した。
呉允熙(オ・ユンヒ)記者