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天声人語

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2010年12月4日(土)付

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 〈前日仕込み一切なし、いつも子供たちの顔を見てから大根切ってるからね。今日は子供たち頑張ってるから、いっちょうやるかってのもあるしね。愛情が違うよ、愛情が〉。『ぼくらの学校給食』(給食当番OB会編)にある給食おばさんの言葉は優しい▼その愛も、食べる側に負い目があっては届くまい。公立小中学校の過半に給食費の滞納があり、昨年度の滞納額は推定26億円という。保護者の責任感が足りない、つまり払えるのに払わないが53%、払いたくても払えないが44%である▼月5千円ほどの給食費。困窮世帯には全額補助もあるから、「払えない」親の多くはわが子の昼飯より大切なものに費やしているらしい。滞納分は他の親がかぶる。ズルやサボリを封じるには、子ども手当からもらうのが早い▼折しも来春から、3歳未満の子ども手当が月7千円増え2万円となることが決まった。2450億円の財源は未定だ。国を挙げての子育てというなら、まっすぐに効く保育所づくりや、給食費の無料化に回せぬものか▼家計という丼を通り過ぎるお金に、色分けはない。生活保護費を遊興に注ぐ者がいるように、子ども手当が大人手当に化ける家もある。財政難の下、親の善意を信じての増額はどうも釈然としない▼3年前、子どもの7人に1人が貧困下にあった。今はより深刻だろう。どの子にも腹いっぱい食べさせ、しっかり学んでもらうのは国の責任でもあるが、父母が教育に向き合っていることが大前提。この日本、ふざけた大人を税金で養う余裕はない。

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