ニュース:国際 RSS feed
【朝鮮半島ウオッチ】延坪砲撃事件、焦点は韓国の「怒りの温度」〜試される李明博政権の対北政策 (3/3ページ)
「大統領がキチンと事態を認識したなら、(李明博政権の)対北政策は変わるだろうが、問題は、行動が伴うかどうかだ」と指摘したのは、韓国の情報機関出身で90年代の南北高位級会談の代表を務めた李東馥(イトンボク)氏だった。
行動とは、軍事報復や南北交流事業の金剛山観光開発、開城工業団地(121社、約650人が北朝鮮側の開城に現在も常駐)からの撤退を指している。
李相●(=くさかんむりに勲の旧字体)(イサンフン)元国防長官は「北朝鮮が(韓国を)攻撃できる理由は4つある。(1)中国を信じている(2)核保有(3)韓国国内の(南北対話を支持する)左派を信じている(4)開城工団という人質−のためだ。挑発は今後も続き、長期化の可能性が高い」と分析した。
“切り札“はジョーカーだった…
金大中、盧武鉉政権で進んだ南北支援、交流10年で韓国は約69億ドル(約5800億円)相当の対北物資支援を行い、このほか民間レベルでは推定10億ドル(約830億円)とされる資金が流れたといわれている。
北朝鮮のコートを脱がせる太陽政策の“切り札”だったのが、財閥、現代グループが主導した金剛山観光であり、現代と政府が協力して民間企業を誘致した開城工団だった。
金剛山観光は韓国人射殺事件(2008年7月)で中断された。現代の投資は風前のともしびだ。開城工団は稼働中だが、延坪砲撃事件以後は韓国側からの物資搬入が止まり、事実上の幽閉状態にある。切り札はジョーカーで今は北朝鮮に握られているのだ。
「金剛山も開城も“金正日の武器”になっている。廃止という対北政策の決定的な転換を韓国が決断すれば、北朝鮮は現金収入の道は閉ざされるが、韓国政府は莫大(ばくだい)な損害と異常な緊張に耐えなければならなくなる」と専門家はみる。
いま、残る任期で李政権が切り札を取り戻せる可能性は限りなく低い。