(CNN) 米政府の機密文書を相次いで暴露し世界中で物議を醸している告発サイト「ウィキリークス」。この夏に第一陣の機密文書が公開された際、米国防総省は情報流出の原因となったコンピューターシステムの抜け穴をふさぐと言明した。情報は23歳の兵士がCDとメモリースティックを使って持ち出した疑いがかけられている。
11月28日にウィキリークスが大量の外交公電を暴露する数時間前、国防総省の報道官は報道各社に宛てた電子メールで、同省のコンピューターシステムの60%に「情報への不審なアクセスや利用を監視する」ソフトウェアを導入したと発表した。
しかし、コンピューターセキュリティー専門家のヘム・ニガム氏は、「たった60%とは馬鹿げている。サイバーセキュリティーが90%以下と公言する企業など聞いたことがない」と指摘。国防総省の対策はすべて「極めて基本的なことばかりで、極めて遅れている」との見方を示した。同氏は国際刑事警察機構や米連邦捜査局(FBI)と協力したり、司法省でサイバー犯罪の訴追にかかわったりした経歴を持つ。
国防総省によれば、ゲーツ国防長官は8月以来、「どのようなポリシーや手順、技術的不備が原因となってウィキリークスのサイトに無許可で情報が掲載されるに至ったのかを突き止めるため、調査を2回実施した」という。
しかし米国務省広報担当のクローリー氏は1日、軍のコンピューターからどの文書が持ち出されたのかは現時点でまだ分からないと述べ、「国防総省と国務省全体で科学捜査を実施したが、(ウィキリークス)はさらに多くの文書を持っている。それが何なのか、われわれも完全には把握していない」と打ち明けた。
当面の再発防止策として、国防総省は機密扱いのコンピューター上でリムーバブルメディアへの書き込み機能をすべて無効にするなどの措置を取ったという。
しかしニガム氏によれば、これは対策としては単純であり、「社内の重要情報を守るためにこの種の防御を施していない企業など聞いたことがない」という。
組織としてまずすべきことは、システムがどこからどのようにして侵入され、何が持ち出され、危害を加えようとする者がまだ内部にいるのかどうかを調べることだと同氏は指摘する。
ウィキリークスへの情報提供には、情報分析を担当していたブラッドリー・マニング上等兵がかかわった疑いが持たれている。同上等兵は5月にインターネットのチャットで、当時いたバクダッド郊外の基地で音楽を聴くふりをして、大量の機密文書をダウンロードできてしまったと吹聴していたとされる。
これを聞いた人物がFBIに通報してマニング上等兵は米バージニア州の基地に身柄を送致され、機密情報移転などの罪に問われている。
国防総省がコンピューターセキュリティで苦慮しているのなら、もっとセキュリティ専門家の数を増やすか民間の力を借りる方が懸命だとニガム氏は提言している。