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[24712] 【習作】オリジナルの思いつき実験作
Name: 森林 樹◆057903cd ID:66f9b4ab
Date: 2010/12/04 00:10
この作品は、作者の思いつきからはじめた実験作です。

よくゲームや小説なんかである現代ファンタジーなボーイミーツガールもの。

そこでは主人公の男の子が、とある不思議な女の子に出会い、バトルなどを経て
その不思議な女の子(非現実を運んでくる存在)と恋仲になったりします。

よく見かける話ですが、そういう物語にはよくあるパターンとして幼馴染、または友人の異性が出てきます。
彼ら彼女らは主人公から見た現実側代表であり、その人物が現実的な世界の象徴となっています。
そのために主人公はその幼馴染ないし友人を非現実に巻き込まないように考えることが多い。
結果、非現実を運んできたものと行動を共にすることが増えて、そっちといい感じになったりします。

そして物語を盛り上げる要素の一つとして、現実代表は主人公に惚れている場合が多いです。
これって、現実代表の幼馴染や友人からしたらトンビに油揚げをかっさらわれたような・・・
いわゆる寝取りと似たようなものだよなと思いました。18禁な関係になるかは置いといて・・・
もし物語の方が現実代表主観だったらどうなるのかなー?と、まぁ結果は変わらないわけですが。
文章として自分が書いたらどうなるか、その実験作です。
とりあえず書くだけなのもなー、と思い投稿しています。


以下、人物設定。



二ノ宮紅葉

  高校二年生16歳。現実代表。
  引っ込み思案な女の子。文芸部員。眼鏡。
  中三の時に心理にもらった髪留めをいつもつけている。
  心理が好きで、彼とは家が隣の幼馴染。


一心理

  高校二年生16歳。普通の物語なら主人公ポジション。
  剣道部。元気で明るい、人のいいやつ。結構ニブちん。
  紅葉とは幼馴染。
  三橋と出会い、非現実の世界に身を投じていくことになる。


三橋京華

  高校二年生16歳。非現実代表。
  怪しい転入生。見た目大和撫子な女の子。
  心理を非現実な出来事に巻き込む。
  武装錬金でいう斗貴子さん的ポジション?な人。たぶん・・・


  
  



[24712] 独白的なプロローグ
Name: 森林 樹◆057903cd ID:66f9b4ab
Date: 2010/12/04 00:10


ニノマエシンリは私にとって特別な人間だ。


漢数字の一と書いてニノマエと読む。一心理。私の幼馴染。
持前の強さと優しさでいつも私を引っ張ってくれる。
どんな逆境にも耐えるどころか跳ね返そうとするぐらい強い人。
私の唯一の友人にして、憧れの人。
彼との付き合いは小学校の二年生にまでさかのぼる。
当時から奥手で人付き合いの苦手な私はクラスでも浮いていた存在だった。
友達がいないで常に一人でいる子供なんて小学生には格好のいじめの的だろう。
当然、私はクラスメート達からいじめられていた。
奥手な私は止めてという一言が言えず、また、家族にも相談できなかった。
そんな時だ、彼が私のクラスに転入してきたのは。
そして私の家の隣に引っ越してきたのは・・・



「ニノマエとニノミヤって似てるな!似た者同士仲良くやろうぜ!」



家に彼が挨拶に来た時のその言葉を、私は今でもよく覚えている。
子供らしい屈託のない笑顔で握手を求めてきた心理君。
その時は適当に頷いて置いたけど、前述のとおり私は人づきあいが苦手だ。
学校でいじめられていることを知ればこの子も私と仲良くなんてしなくなる。
だから仲良くなんて言っていても、それは最初だけだ。
始めのうちはそんなことを思っていた。
でも、予想に反して彼は私を拒まなかった。
それどころか何かと私を気にしてくれて、一緒に遊ぼうと誘ってきた。
転入生がいじめられっこを構おうとしていればクラスの子たちもいい気はしない。
実際、私にあまり構わないように指摘してくる子もいたらしい。
しかし心理君はそんな言葉を聞き入れることはなく私を構った。
いじめられている根暗な女子を好き好んで構いたがる男の子。
からかいのネタにされるには十分なものだった。

「おまえ、ブス眼鏡のこと好きなんじゃねぇか?」

そんなことを心理君はクラスメートに言われていた。
ブス眼鏡というのは当時の私の周囲の子たちが呼んでいたあだ名だ。
自分が誰かに好かれるなんて思いあがりはなかった。
ただ、私のせいで彼までがいじめの対象にされる。
こんなことになる前に私からもう構わないように言えばよかった。
そんな後悔の念で一杯になった。
好きでもない女の子との仲を勘繰られ、からかわれるのだ。
この年の男の子であれば、誰がこんなやつと、と否定するだろう。
私自身否定されると思っていたし、その言葉を聞いて傷つきたくなかった。
そして傷ついた顔を周囲にさらしてそれ以上惨めになりたくなかった。
だから私は机につっぷし、腕で顔を隠した。
でも、その後の心理君とクラスメートの会話は私の予想と違った。

「なんでだ?」

「だってこんな根暗なブスと仲良くしようなんて、それしか考えられないじゃないか。」

「そりゃ友達だし好きだけど?」

「うわー、やっぱり好きなんじゃねぇか!?みんなー!!一がブス眼鏡のこと好きだってよー!!」

大声ではやし立てるクラスメート。
その声にきゃあきゃあと騒ぎ立てる周囲。
そんな中、私は予想外に否定されることがなくて呆然としていた。
心理君が私を好きだと言ったのは友達としてだけど、それでも信じられなかった。
あまりの驚愕に顔をあげて確かめることもできなかった。
でも次の言葉はもっと信じられなかった。

「お前らそんなブスとか言うなよ。眼鏡は本当だけどさー。
 二ノ宮はブスじゃねぇし可愛いじゃねえか。」

その言葉にしんと静まり返る教室。
私は今度は羞恥心から顔をあげることはできなかった。

それから心理君は私とセットでからかわれることが多くなった。
だけど彼は気にした様子もなく私に接した。
面白い反応が返ってこなかったからか、いつしかそのことでからかわれることも無くなった。
一人ぼっちでいるといつも心理君が一緒に遊んでくれた。
いじめられていると助けてくれた。
クラスメートも心理君といる時は私をいじめなかった。
そうしているうちに三年生のころには私はいじめられないようになっていた。
奥手なところは変わらなくて他に友達はできなかったけど。
その関係は中学に上がるまで続いた。
同じ中学に進学したけど、それまでずっと同じクラスだったのに違うクラスになった。
帰宅部の私と違って彼は剣道部に入部した。
そうなればおのずと生活スタイルが変わってくる。
朝も放課後も、部活で忙しくなるため彼とはあまり一緒にいなくなった。
そんな関係が続けばいくら家が隣といえども疎遠になるもの。
また心理君とお話したいと思っていても、奥手な私からは話しかける勇気がなかった。
3年生の夏、彼が部活を引退してから私に話しかけてきた。
その時は心の中で飛び上るほど嬉しかった。

「お前も志望校って三核高校だろ?よかったら一緒に勉強しようぜ。」

そう誘われた。
それからというもの、彼の部屋で一緒に受験勉強することになった。
私は家でも学校でもほかにすることがなかったから勉強ばかりしていたしそれほど問題はない。
むしろ問題は心理君の方で、いままで部活一筋だった分、勉強がおろそかになっていた。
実質、私は彼の家庭教師役として指名されたのだった。
彼の部屋に入るのは小学校以来で、あの時と違って無性にどきどきした。
おばさんも、お隣で幼馴染の私のことをよく知っているし歓迎してくれた。
彼の部屋は小学校の頃と違って、少し大人っぽい部屋になっていた。
かつてあった玩具は見当たらず、変わりに地球儀や参考書、竹刀などがあった。
そんなところを見ても、彼も成長したんだなと思えた。
私が部屋に入るだけで赤くなっているのに、心理君はいつも平然としていた。
女の子が自分の部屋にいるというのに、少しは意識してくれてもいいんじゃないか?と少しくやしかった。
そのことを意識したとき、初めて私は心理君が好きなのだと気がついた。
この気持ちは本物だ、だから勇気を出してみた。
中学三年生のバレンタインの日、思い切って心理君にチョコを渡した。
ものすごく恥ずかしくて、渡すので精いっぱいで、告白まではできなかった。

「ありがとう。」

彼は照れ臭そうにはにかみながらお礼を言ってくれた。
でも、本命とは思ってもらえず、どうやら義理チョコと思われたようだった。
それでも私にとっては大きな一歩だった。
今までは好きと思っていなくても恥ずかしくて義理チョコすら渡せなかったから。
ホワイトデーの日には、心理君はお返しに髪留めをくれた。
私の名前と同じ、紅葉模様をあしらったきれいな、でも派手じゃなくおとなしいデザインのもの。
私がつけても目立たず、それでいてさりげなくおしゃれに見せてくれるもの。

「似合ってるぜ紅葉!」

つけてみせると彼は嬉しそうにそう言って笑った。
私は嬉しくて、その日からその髪留めはお気に入りとなり毎日つけるようになった。
高校には二人とも無事合格できた。クラスも同じになり、幸先のいいスタートだった。
彼は中学と同じく剣道部に入り、私は文芸部に入った。
高校の剣道部は朝の練習がないらしく、心理君と私は家の前で待ち合わせて毎日一緒に登校した。
文芸部の活動のある日は、彼の部活が終わるのを見計らって帰るようにしている。
剣道場に彼を迎えに行くのは恥ずかしくて、いつも下駄箱で偶然会うように装っている。
私の部活は五時には終わるけど、心理君の出てくる6時頃まで文芸部で時間をつぶす。
そして彼がいつも帰る時間になってから下駄箱に行くのだ。

「よ、紅葉。一緒に帰ろうぜ。」

心理君は私を見かけるといつも一緒に帰ろうと誘ってくれる。
偶然同じ時間に下校しているように見せてはいるが、文芸部がある日は毎日だ。
そこを指摘されれば私はきっとうまくごまかすことができなくて困ってしまうだろう。
でも彼は私にそのことについては聞かなかった。
毎回、偶然一緒になったから一緒に帰る。それが当たり前になっている。
他愛もない、その日の出来事などを話しながら歩く二人の時間が私は好きだ。
家に帰っても、部屋の窓を開ければ3メートル先に彼の部屋がある。
無意識に心理君の部屋の窓に目をやる私。
時々彼が窓を開けて私を呼ぶ時がある。
それは明日の授業のことだとか、課題でわからないことがあったりとかそんなことだけど。
それでも私は、窓から顔を出しての会話が好きだった。
今日は心理君は私を呼ばないのかな?といつも思っている。
彼がカーテンを開けた時に偶然目が合うと、見つめていたことがばれそうでひやひやするんだけど。
でもそこで会話して、最後におやすみなさいと言って窓を閉めて別れる。
そんな日はなんだか安心して、ぐっすりと眠れるのだ。
夜にお互い窓から顔を出して会話し、おやすみなさいとあいさつをする。
なんだかそんな行為が、私たちが漫画や小説の物語の幼馴染みたいに思えて少しにやける。
心理君のことが好きだし、物語のように結ばれることを夢見たりもした。
現実には、たぶん彼の中では私は幼馴染にすぎないだろうけど。
こんな風に今は夢を見ていられても、お互い成人して働きだせばこんな関係はなくなりまた疎遠になるかもしれない。
でも少なくとも高校の間は、こんな関係を続けていけるはずだ。
友達以上恋人未満な幼馴染。
告白する勇気のない私にとって、この関係は居心地のいいものだった。
そんな都合のいい夢だけ見ていられる関係が、もう少し続くと思っていた。
そう、高校生の間は続くはずだったのだ。






二年生に進級した新学期、その最初の日。
私はまた心理君と一緒のクラスになることができて幸せな気分だった。
ニノマエとニノミヤ、似ているだけあって名簿順に並べば席は当然・・・

「よ!また紅葉の前の席か。」

「そうね。」

私は彼の真後ろの席になる。
私はこの席が好きだった。彼の背中を見つめていることができる。
それに見つめていても、前を向いているのは別に変なことじゃないから不自然じゃない。
好きなだけ心理君を見ていることができるのだ。

「お前ら―、席に着けー。」

教室の前の入り口から担任の先生が入ってきた。
去年と同じく小谷先生だ。

「あー、知ってるやつが大半だが担任の小谷だ。よろしくな。
 進級にあわせて転入生がいるので紹介するぞー。・・・入っていいぞ。」

小谷先生の言葉にざわめくクラスメート達。
転入生なんて話題が興味をそそられないはずがない。
あちこちで男か女か、容姿がどうのと騒いでいる。
ガラリと入口の戸が開いた。一人の女子生徒が入ってくる。
静まる教室内。やがて教壇にたつと女子生徒は正面をむいた。
腰まで届く長い黒髪をまっすぐにのばし、スカートから延びる足はすらりと長い。
すっと通った鼻は小さく、意思の強そうな眼の凛とした表情。
まさに大和撫子といった感じの風貌。
先生が彼女の名前を黒板に書く。

「初めまして、今日からここのクラスメートになる三橋京華といいます。
 以後お見知り置きを。」

そういってお辞儀する三橋さん。
頭を上げたあと、彼女は・・・・・三橋さんは心理君を見つめていた。
なんで、心理君を?
彼も彼で、三橋さんを見つめて固まっている。少し様子が変だった。

「あの・・・心理君?どうしたの?」

「・・・いや、何でもない。大丈夫だ。」

私の方を向いて大丈夫という心理君。
だが私は見てしまった。彼が瞬きを二回するのを。
心理君とはもう長い付き合いだ。彼の癖くらい知っている。
彼は何か動揺したりすると必ずと言っていいほど、二回連続で瞬きをする。
大丈夫なんかじゃない、彼と彼女の間には何かある。私は確信した。
それと同時に言いようのない不安にかられた。
彼との今の関係が終わってしまうような、そんな不安に・・・



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