チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[22806] 機動戦士ガンダムSEED~闇は光の影にこそ輝く(性格改変とオリキャラ~ネタとシリアスな習作)
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/16 21:16
はじめまして。
ガンダムSEEDの本編を下地にしつつ新たな何かがかけないかと思い書いてみました。
よろしくお願いします。
ある人間の出会いがある人間の未来を変えた。
本編キャラを出しつつどちらかと言えば裏側の様な外伝の話を入れて書いてみました。
オリキャラが出ますがよろしくお願いします。
割と色々とネタやらシリアスが多いっす。



[22806] 出会いと始まり。
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/02 17:18
数年以上前のある地球の大西洋連邦のグランガレン公園。

少年は絶対的な遺伝子と数の差に屈した。
数人の少年らがたった一人の金髪の少年に袋だたきしていた。
“僕は勝つんだ・・・そぉさいつだってぇ・・・なのに何で。”
「才能もない凡人が!」
「本気で喧嘩したらナチュラルが俺達にかなうワケ・・」

そうコーディネーターの少年の一人が言い終えない内に強烈な音と共に掴んでいた手を離した。
その瞬間に目の前にいた一人を蹴り飛ばして金髪の少年は立ち上がった。
「たった一人にリンチとは良い趣味じゃねえな。」
“何だよ!”
“ふざけんな”
“いきなり何しやがる”
「ふっ、俺が誰だか知りたいって顔してるから教えてやるよ!!俺の名はフレデリック!!弱い者イジメが大嫌いだ。そして喧嘩大好きでね。まあ、とりあえずてめえらをボコらせてもらうぜ」
片手を木刀に添えながら一人、金髪の少年をイジメる少年らに向かっていく。
「牙突!」
そう叫んだ素早い突きがいじめっ子の一人を吹き飛ばした。
「やはり普通の木刀では駄目か。強度が柔らか過ぎる。柿の木彫った木刀に限る」
“野郎ぶち殺す”
「この阿呆が!!」
夕日

「やっぱり7対2はキツイかったみたい」
ハハハと笑う加勢に来た少年と金髪の少年は笑う。
傷だらけになりながら腕っ節の強いコーディネーターの少年を全員殴り倒した。
「でも凄いな、あの強いコーディネーターの奴らをぶっ飛ばしたし」
「コーディだのナチュだの関係ないさ。遺伝子に胡座をかく奴は身体が幾ら強くても、心が弱い。だがそれでも奴らに勝てないと思っているから勝てない。人間、心に一本硬いものがあれば強くなるさ」
「僕にも何か硬い物が出来るかな?」
「自分の気持ち次第さ」
差し出された手を握った金髪の少年の中にこの時、一本の硬い信念が生まれる。

更に数年後

夜の運動場

「やっぱり素振り1000回とランニングはキツイ・・」
汗だくで金髪の青年は地面に倒れた。
「まだまだだな。頭が良くても身体の鍛えがまったく足りないぜ。」
「それよりどうするんだフレデリック、学校に出た後は?」
「三男で耕す畑がないし。士官学校でも出て爺さんと同じ軍人にでもなるかな、ムルタは家を次ぐのか?」
「そうか・・僕は親父の跡継ぎでもなるかな」
「お互いに頑張ろうな」
ムルタ青年とフレデリック青年は互いに握手を交わした。

フレデリック青年は士官学校を高い成績で卒業(士官学校の塀を乗り越えての夜遊び。有害図書委員会なる組織を士官学校内に作り上げる。成績は首席に匹敵するが性格と行動が災いして教官の受けが悪く首席を逃した。)
艦隊勤務、プラントやオーブでの駐在武官などを経験し数年で大尉となる。

そしてムルタ青年は数年の後に様々な挫折と栄光を経験しつつ、裏社会を牛耳るロゴスの若い幹部の一員となる。

最初の行動は第81独立機動軍・・通称ファントムペインの創設である。
ロゴスには私兵がいたが、正規軍に劣る練度と粗悪な装備しかなく。
私兵の勢いを越える事は無かった。
ムルタ・アズラエルは自身のロゴスでのコネを最大に利用して高い練度と一般部隊以上の装備を持った見ずからの直属部隊を創設する。
当初はジブリールの横槍で極めて反コーディネーター思想のある将校で固めるハズだった。

反コーディネーターの部隊ではなく。
人種と思想に問われない部隊として創設された。
この事は鷹派のジブリールに強く突っ込まれたが。
“反コーディネーター?何それワロタ。ロゴスは利益追求なのに何その反コーディネーター排斥とか、反コーディネーター思想が許されるのは小学生まで~キャハハハ・・プギャア”
と書いた手紙をジブリールに送り付けた事からジブリールとは敵対関係となる。


そしてアズラエルは更なる新たな行動を開始した。

大西洋連邦
工業都市デトロイト
アズラエル財団本部ビル

真ん中辺りの階層で情報より送られてきた資料にアズラエルは目を通していると一枚の資料に目が止まった。
それは宇宙で使用する人型作業用重機・・通称モビルスーツ。
側近のサザーランド中佐を含む上級将校はこの重機には感心を持つ者は少なく、プラントが重機の延長として使用する事や開発する事に興味は薄かった。
しかしこれを見た白いスーツの男に激震が走る。

“これは将来新たな兵器となる”
そう何か商売人の直感がオデコから何か稲妻を発する閃きが生まれる。
すぐに側近のウィリアム・サザーランド中佐に連絡を行った。

「サザーランド君、例のモビルスーツを購入出来ないかな?」
「モビルスーツですか、重機としてならば特に問題はありませんが、アズラエル様。あれをどうするおつもりですかな?」
「まあ重機としても我が会社にこれから必要ですが、このメカに成長性を感じましてね。これを兵器転用出来ないかを研究する機関の創設を行うよ。」
「了解しました。」
この決断が歴史を変える事となる。

モビルスーツの研究の一方で現有兵器のMAの強化案が提出される。
第一線で使用している型式番号MAW-01ミストラルと呼ばれる作業用ポットから戦闘を意識した型式番号TS-MA2メビウスを開発し試験的に自身の直属隊に配備しデータを収集を行わせた。
「戦車や戦艦並みの重装甲、戦闘機並みの機動性と空戦能力、接近戦での戦闘能力を持った理想の機動兵器MAメビウス・・まあ作業用ポットの毛の生えたミストラルよりは高いですが。」
ミストラルもメビウスにもコストの関係から脱出機能は無かった。
「サザーランド君、どうかな技術部に脱出機能の追加を検討してもらえないかな?」
「可能ですが、コストが重む可能性もあります」
「パイロットを一から作り上げる期間と予算を考えれば脱出機能は非常に安いです。」
「解りました。技術部にそう命令を出します。」
「頼みますよ。ある程度の予算はこちらに出す余裕がある事も伝えて下さい」
倉庫に置いてある型式番号TS-MA2mod.00メビウスゼロの資料が目に入った。


大西洋連邦
月面
プトレマイオス基地


紺色にカラーリングに塗装されたファントムペイン隊仕様のメビウスが標的を次々と撃墜していく。
新型のリニアキャノン
有線ミサイル
大型の対艦ミサイルを標的に当てていく。
「各機、隊列行動を絶対に取れ。喧嘩は一人よりも大勢で更にコンビネーションで行くんだ。」
メビウス隊の戦隊長のファルブルケ大尉は連日に渡る猛特訓で部下を行っていた。
大西洋連邦の優位性は新型のメビウスだけでなく集団戦を得意としている所。
そして常にレーダーのみに頼らぬ状況に慣れさせる事もある。

「フラガ中尉の隊は後方よりメビウス小隊を援護せよ。」
「へいへい、了解」
そう言いながらフラガ中尉はトリガーを引いた。


元々は倉庫で埃を被っていたメビウスゼロを取り出し。
一部改修を加えてから機体の特性を生かす為に大西洋連邦内にいた空間把握能力の高いパイロットを人選。
ムウ・ラ・フラガ中尉を含む15名近くの人員でメビウスゼロ隊として編成された。


訓練後

「うちの大将さんは毎日毎日訓練訓練と大変だぜ。」
フラガ中尉は身体をゴキゴキならしながら士官食堂でレーションをほうばった。
「おっ、夜の撃墜王のフラガ中尉のボヤキがまた始まりました。」
「夜に一人でクロスワードパズルばかりやっているエルンスト中尉じゃないか。たまにはベッドを狭くする努力をしないのかい?」
「今のベッドの広さで十分さ」
「相変わらず面白みがない男だな」
「面白みさにはフラガさんには敵いませんよ」
ムウ・ラ・フラガ中尉とプトレマイオス基地に編成される前からのコンビであるエルンスト・ファイン中尉はフラガ中尉同様にパイロットとしての腕も高く、ツッコミ役である。

「毎日毎日の訓練は仕方ないって話を事を言いにきただけさ」
「分かっているよ。訓練で流す大量の汗で、戦場で流す血が減るって話だろう」
「まあそういゆう事。それに疲れた方が飯も美味い」
「そうかい、まあ今日は今日で一夜のお相手でも探すかな」
「だから夜の撃墜王って言われるんだよ」
ハハハと笑う二人はプトレマイオス最強のコンビである。



[22806] 外伝・・フレデリック・ハルスは静かに暮らしたい
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/12/04 09:47
友人で悪友のアズラエルと別れ一人自分の道を進み始めた。

士官学校の座学
「フレデリック士官候補、貴様は敵に包囲された場合、どうくぐり抜ける?」
座学の教科書を開く裏で趣味の本を読んでいたフレデリックは驚かずに席よりゆっくりと立ち上がった。
「教官殿、包囲される前に陣地から退却します。」
「死守命令が出てもか?」
「死守したとして、増援の見込みがない死守の先には全滅しかありません。陣地防御(火力防御)も必要ですが、機動防御も重要な場合もあります。死守は機動防御のチャンスを失い、いたずらに将兵を死なせ。敵を喜ばせるのみです」
その瞬間怒り浸透の教官からのビンタを顔に喰らった。
ハルバートン教官以外は成績優秀なれど、大西洋連邦の軍人らしかならぬ彼を嫌う教官は多かった。


士官食堂
ヒリヒリする顔を冷やしながら士官食堂の机でポケットからコンペイトウをかじりながら趣味の読書を楽しんでいた。
(我が軍は砲撃による艦隊対艦隊の決戦思想ばかりだ。これでは遥か核戦争前の時代と同じ事ではないか。そう遥か過去の世界は航空戦力に多くの巨砲の船が沈んでいった。)
ロンメルの歩兵攻撃。
大井篤の海上護衛戦。
アルフレッド・セイヤー・マハンの海上権力史論をパラパラと読み終えた時である。
「フレデリック先輩、今日は何を読んでいますか?それにその頬はまた嫌な教官に殴られたの?」
ふっと席の前には後輩の士官候補が座っていた。
「ハハハ、ラミアス、まあ授業中に古典的なカビの生えた本を読んでいた俺が悪いだけさ。」
畑違いのクラス違いながら、あるきっかけで知り合い友人となった。
マニュー・ラミアスとフレデリック・ハルスの二人を見て周囲からは噂が立つが、彼らをよく知る人物曰く、恋人同士ではなく変人同士である。
または美女と変人。
「はあ、真面目にやれば殴られる事もないのに変わった人ね」
クスクスと微笑む後輩の姿に特に悪い気はしなかった。
「教科書は穴が空くほど読み過ぎて暇でね。予習復習が済んでいるから毎度のレポートは大丈夫。まあ体力やら射撃は昔から体力馬鹿で楽々さ」
「ここを卒業したら先輩はどうします?やはり艦隊勤務志望?参謀職?」
「艦隊勤務はやるよ。艦隊勤務を経験したら、オーブや宇宙にあるプラントを見てみたい。あのコロニーで人々がどう生きてどう考えているかを知りたい。まあそんな所さ」

「そう、まあ先輩なら大丈夫。卒業して別々の部署になるかも知れない。でも私も頑張るわ」何か残念そうな表情をしながらも微笑んだ。

そしてフレデリックは艦隊勤務となり、技術志望の後輩のラミアスは研究所勤務となった。

希望通りに艦隊勤務となり。
艦隊司令官や艦長の推薦もありオーブ駐在の大使館武官として派遣される。

しかし何故か早朝と休日に金髪の元気一杯な野生児のナチュラルの少年と幼い黒髪のコーディネーターの少年と軽く走りながら武術を教えた。
「全く、それじゃあおっきくなっても駄目人間だな。出来ても絶対優柔不断で尻の軽い男だ。立てよ!キトリ・シモンズ」
「何だと!!」
「悔しいなら、更に2キロ走って根性を見せろ」
「ちくしょー!!」
何かが割れた様な音と共に少女は立ち上がり走り始めた。
「待ってよ~キトリ兄ちゃん」
必死になりシン少年も走り出した。

後々に彼はキトリ・シモンズは偽名である事を知る事となる。


そしてプラントにも派遣され、何故か休日にカフェでお茶を楽しんでいたら球体のメカを持った紺色の髪の少年と知り合い、休みにはチェスを教えている。
最近ではピンクの髪の少女が時より一緒にやってくるが、そうゆう時は何故か無数の視線を感じる。
(別にロリコンではないが・・周りにはそう見えるのかな?)

フレデリック・ブラウンは知らず知らずの内に地雷やらフラグを無意識に踏んだり建てたりしていた。
そして月日は流れて、彼の階級は士官候補から少佐となった。

CE68年・・友人で悪友のムルタ・アズラエルより呼び出され。
彼の懐刀となる。






作者の書き込み
フレデリック・ハルスは転成でも憑依でもないっす。
だが色々な有名な軍人とかのエピソードやら癖を入れてみました。

アズラエルにトラウマはないが、彼は100パーセントの善人ではないです。
しかし彼には一本信念が友人との出会いで生まれています。

ちなみにネタばれ
キトリ・シモンズはゆうまでもなくあの子です。



[22806] 運命の開戦前夜
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/01 23:44
CE68年
大西洋連邦首都ワシントン

黒いアタッシュケースを持った一人の白いスーツの男
大西洋連邦の軍服姿の男
少し変わっているのは腰に軍刀を差している。
二人はビルの前に足を止めた。
「老人連中と、あのジブリールのオカマ野郎を説得しなければなりませんね。ロゴスのメンバーは開戦開戦と叫びすぎですよ」
「開戦となれば恐らくは長期間の消耗戦となればこちらに勝ち目はありましょうが・・」
「うん、多分向こうもこちらのマンパワーを計算しているとすれば。例のMSとやらの解析と研究の特別戦術班が役に立つよ。無駄な血はただの命の損失です。」
入口に入ると数名の屈強な門番に軍服の男は止まるように言われた。
「すまない、これを頼む」
腰に差していた軍刀を渡した。
「君ね、職務熱心だけど。彼も私の参謀みたいなもんだから、刀も預けたし、特別に通させてもらえないかな?」
本来はロゴスのメンバー以外は通れないのが通例であるが、白いスーツの男の言葉で、すぐに門番は彼を通した。
「ありがとうさんね」
ニヤニヤとやや嫌み気味に笑う白いスーツの男と、少し申し訳気味に頭を下げた軍人の男は会議のあるビルの中に入った。

この時、ムルタ・アズラエルは20代半ば。
ブルーコスモスの新進気鋭の理事
しかしロゴスの中ではただの幹部の一人扱いである。
若い日に出会い、自らの暴走を止め(ただ喧嘩に加わっただけ)
己の行く道を示した友人のフレデリック・ハルスは20代半ば。
彼もまた新進気鋭の軍人であるがまだまだ下っ端に過ぎない。
彼との出会いが違う時間が流れ始める。

ロゴスでの会議は主戦派のジブリールを筆頭に感情的な議論ばかりであった。
アズラエルは終始プラントの開戦の時期の早さを説明した。
「プラントとの戦争は早急とは思えません、確かにいつかは決着すべき事やも知れません。しかし連中の力を過小評価すべきでありません」
「随分と化け物のコーディネィテッドを評価とは、ブルーコスモス理事のお言葉とは思えん!奴らは駆除すべきだ」
キイキイ騒ぐジブリールにやれやれといった感じにアズラエルをゆっくりと冷静に話始めた。
「独立、独立と騒ぎ立てるので勝手に暗黒の舞台で踊らせていればいいです。独立した所であれだけの人口を食わせるだけの食料自給能力は奴らにはありません。もし我々に牙を剥くならば航路封鎖とプラントに向かう輸送船を拿捕し続ければ奴らは日干しになります」
「そんなまどろっこしい事では自体の打開にはならん」
「何の策も出さずに開戦し、我が方の国民が前線に出る事で軍需に幾らかの駄賃が入るにしても、平和で経済安定した利益の入る民需の方が一時の駄賃より利益は高い。もしもやるならばしっかり準備万端でやるべきです」
気がつくとアズラエルとジブリールがタカ派の主戦派とハト派の穏健派の代表として討論となる。
アズラエルは比較的ハト派に分類に位置し、過激なタカ派のジブリールとは対象的に戦争よりも経済戦争に興味を持っていた。
結局会議は即開戦と言う最悪のシナリオは回避されるものの、相変わらずジブリールのマスコミを通しての世論操作は行われ始めた。

デトロイト・・アズラエル財団ビル

「ジブリールの馬鹿を早く始末すべきでした。奴がマスコミに働きかけたせいで、ジワジワと元から燃えていた高い反プラント感情が高まっています。」
「残念ながら軍の末端の士官も開戦、開戦と熱病にうなされています」
「今は君とサザーランドが暴走する一派を止めに奔走しているが、いつジブリールら主戦派の連中が暴走するか、全くもってわかりませんね」
「その点で私に二つ案があります。一つは私が悪即斬であの男の首を切り捨てる。またはこんな案があります」
相棒から渡された資料を興味深く目を通した。



“財務省のエリオット・ネスが暴いた多額の裏金”

“少年、少女を集めた非人道施設の実態”

“ロード・ジブリール、少女への暴行未遂により逮捕”

“秘書へのセクハラにより告訴”

“財務省が暴いたジブリール帝国の真実”

“脱税王の末路”

“扇動者!!第二のウィリアム・ランドルフ・ハースト”


無数に置かれた夕刊や号外で埋めつくされた理事はホクホク顔で笑いながらお茶を啜った。
「やはり奴の申告漏れやら脱税やら、政治家への賄賂が多い。突かれて困る男は大変だね」
「まああれなら切り捨てる価値もない、この刀が汚れるだけ」
裏金やら脱税ならば何か取り繕う事は出来る。
しかしセクハラや暴行未遂みたいな下半身のスキャンダルは致命傷である。
これによりロゴスからは。
“ジブリールマジ自重シロヨ”
“変態紳士ジブリール”とかを言われ笑われた。
「子供らはアズラエル財団が引き取るって事で大丈夫だけど。幼少期の変な洗脳は後々まで大変な事になるからこれからが大変だよ」

「秘書のセクハラや裏金の辺りはジブリール氏の落ち度と考えるべきですが、少女への暴行未遂はまさか」
「いや、あれは元研究所の子供らが偶然あそこにいただけさ」
「偶然とは中々面白いですね」
ハハハと苦笑いをしながら午後のひと時を二人は楽しんだ。
その間もファントムペイン隊は月月火水木金金な多忙なる訓練を続けていた。

「くそ、あのアズラエルの金髪頭め。いつか奴の顔をボコボコにしてやる」
そう言いながらジブリールは陰謀を巡らし始めた。
「開戦が駄目ならば開戦の既成事実を作るまでだ」


そして時間は経ち。

大西洋連邦の反対も虚しく。
プラント理事国はプラントの過剰な軍備増強を理由に経済制裁の名目的で一応航路封鎖を行い。
航路封鎖にて弾薬やミサイルの部品となる伸管。
高性能な艦艇用の推進剤。
そして更にどこからか持ち出してきた旧型の核兵器を没収(ジブリールの裏工作でわざと仕込ませた。)
しかしアズラエルは“軍備増強は困るが、食料や医薬品は送る。食い物がないとプラントとは今にも切羽詰まり暴発のしかねんし、女子供が腹をすかせる姿を見る悪趣味はない”
大西洋連邦の行動に反発したユーラシア連邦軍や東アジア軍がプラントの要請で派遣された南アメリカ合衆国や大洋州連邦。そしてオーブの輸送船団に襲い掛かるが。
何故か所属不明部隊(ファントムペイン隊)により逆に襲撃艦隊の位置を露見され。
奇襲を逆に受け、更に船団の監視と護衛を兼ねた大西洋連邦の護衛船団に追い撃ちを受けて退散している。

「倉庫で大量に保管していた穀物や医薬品の在庫が上手く処分出来ました。」
「アズラエル、おぬしも悪ですね」
「いえいえ、国家や企業は利益のない投資や援助はしませんよ」
今回の護衛任務より東アジアやユーラシア連邦の国際的な信用は下がり、大規模な船団を護衛任務を経験し。
大洋州、そして南アメリカ合衆国やオーブにもデカイ借りを作れた。
戦闘でもメビウスの優位性とファントムペイン隊の戦闘力を計し。
一部ながら研究中のモビルスーツも極秘に投入し戦果を上げた。
「まあそれだけの理由で護衛した訳ではないさ。これは私の個人的な部分もある・・私には妻がいる。そして養子だが子供もいる。あの子供らみたいな年齢の子供らを飢えさせるのは何と無く嫌でね・・偽善かも知れないがね」
「アズラエル、まあ戦争や国家の方針で割を食うのはいつも子供らさ」

しかしいきなり凶報がアズラエルとフレデリックを驚かす事となる。



[22806] 戦雲は宇宙に広がる
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/02 17:06
凶報は数年前よりアズラエルが創設した戦略情報機関より連絡が入る。
ジブリールの私兵が月にてブルーコスモスの名乗り国連首脳陣を暗殺したのである。
「ジブリールのオカマ野郎がやりやがりました。あの聖帝モドキ!引かぬこびぬ省みぬは奴個人だけにしてもらいたい」
クールなアズラエルの瞳に怒りの炎が移る。
「落ち着けアズラエル、燃える心にクールな頭で対応しなければ駄目です。」
「それもそうですね。君はサザーランド大佐と共に部隊の掌握、憲兵隊と共に扇動者の逮捕をお願いします。軍の一部連中を動かして前線とプラント警備隊と衝突する可能性が高い!」
アズラエルは念のためにファントムペイン隊の分隊をプラント国境を含む重要拠点に監視として潜んでいる部隊に更なる警戒を命じた。


「アズラエルよ、それでは宇宙の化け物は消せない。今度こそ青き清浄なる世界のために」
一人、大画面に移るモニターを眺めながらジブリールは己の勝利を確信して軽くほくそ笑んだ。

プラント国境付近
ジブリールの私兵部隊と東アジア共和国やユーラシア連邦の両軍の警備艦隊が月に向かっていた。
その中にはMA搭載用宇宙空母のルーズベルトが混じっていた。
このMA搭載用宇宙空母ルーズベルトにはMAミストラルに装備可能にした核ミサイルが搭載されていた。
「・・この作戦を成功させる」
「これよりプラントの領空に入ります。」
「青き清浄なる世界のために」



プラント警備隊
「ミゲル!オロール!プロトジンで出撃!」
若い新進気鋭の二人は急ぎ緑色のパイロットスーツを着込み機体に乗り込んだ。

「敵は大西洋連邦か?ユーラシア連邦か?」
「オロール考えるな、俺達の敵はナチュラルで相手の国は関係ない俺達に銃を向ける奴は敵だ。」
「それもそうだな」
新人の二人が乗り込む中で一人の赤い服パイロットは微笑んだ。
“ナチュラルとコーディネーターなんて皆全て殺しあえばいい。しかしユニウス7への情報はジブリールの奴に届いていればいいが”
クルーゼの野望もまたこの日に始まる。



領空を侵犯した大西洋連邦の部隊はMAのミストラルが次々に出撃・・。

しかし迎撃に当たったザフト軍のMSの前に次々と機体が撃墜されていく。

「目標はユニウス7!!農業プラントに偽装した兵器工事だ!」
艦艇を囮に核装備の部隊が数機出撃していく。


「しまった。」
「突破される」
先に出撃していたMAミストラルを撃破し艦艇に取りいて攻撃を加えている時である。
核攻撃隊がプラント守備隊と入れ替わりにプラントに向かっていた。

「これでチェックメイト!!」
勝利を確信した核装備型ミストラルのパイロットは勝利を確信したが・・。
閃光がパイロットの乗るミストラルの貫く。
数十発の弾が速度の襲い掛かるミストラルを襲う。
「命令は命令だ。悪いがここで落ちてもらう」
エルンスト中尉のメビウスゼロがミストラルを叩き落としていく。
「何としても一発叩き込むんだ!」
散会しつつ目標に向かう敵を叩き落としていくが、数機がエルンスト中尉のメビウスゼロを突破していく。
「数が多すぎる。突破した敵は頼むぜ不可能を可能にする男!!」

「無茶苦茶だぜ、このメビウスゼロにブースターを付けようとする発想!!」
そしてメビウスゼロには追加ブースターの速度低下をさせない為にガンバレルパックは使用不可能。
装備は命中精度を強化したリニアキャノンのみ。
だが突破した最後の一機にフラガ中尉は照準を向けて撃ち込んだ。
不可能を可能にする男により閃光が走り最後の核装備型のミストラルが宇宙の藻屑となる。


「ジブリールの私兵部隊とブルーコスモスの息のかかる連中が暴走を止められずか・・全く失態です。」
「アズラエル、我々正規軍とファントムペイン隊が他に出撃準備を始めていた大半の部隊は抑えましたが残念だ。」
「プラントへの核攻撃は未遂に終わりましたが、あのアホのジブリールが一人で出来る芸当ではないです。多分裏で他の主戦派が動いたのかも知れません。君はサザーランド大佐と軍の抑えを更に頼むよフレデリック」
「時間外勤務代を要求する!労働者の人権を守れよムルタ」
「ふふふ、まあそれはその内に用意しますよ、それよりフレデリック。これからは忙しくなる、今の内に家のカミさんの料理を食べていかないか?」
「ご辞退しておくよ。中の良い夫婦の水を差す気はないよ」

ジブリールを担ぎ上げた主戦派が暴走し月での会議をぶっこわし、プラントへの核攻撃未遂を行う。
核ミサイルをプラント警備隊とファントムペイン隊の活躍により迎撃に成功している。
しかし会議にて国連の代表や国連議長などが自爆テロにより死亡。
軍の中にいた扇動者は逮捕出来たが、ジブリール自身や主戦派の逮捕に至っていない。

プラントは今回の件を大西洋連邦の宣戦布告なしの騙し撃ちとして叫んだ。
プラントは大西洋連邦に対して宣戦布告する。

それはクルーゼやジブリールらの予想よりは少々違うシナリオとなった。
「だが、この程度のシナリオの書き換えくらいで戦争は終わらぬ」
それはジブリールかクルーゼかそれとも全く別の誰かの言葉が空に響いた。



[22806] CE70~補足説明
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/03 00:06

CE70年初旬



プラント襲撃事件に対して声明を発表
“これは地球軍と呼称する敵への自衛戦争であり、プラントの独立戦争である”
プラント議会はそう世界に発表する。

プラント理事国の三国(東アジア共和国・ユーラシア連邦・大西洋連邦)に対して遺憾を表明。
ザフト軍の再編成が加速する。
CE70に三国に宣戦を布告

そしてプラントのザフト軍は次々と進軍を開始し始める。

その間にも戦争の回避と戦争中止不可能な場合の戦争を準備を一年かけてアズラエルらハト派は各国を駆けずり回った。

当初はプラント理事国が行った事件への懲罰を目的としていた事で、どの程度までの懲罰行動なのかで最高議会の意見が分かれた。
食料確保に関しては大量の食料が送られたが、ザラ国防委員長から“これはプラント理事国からのアメとムチの行為である。民間用の転用はかえって敵の策に乗る事となる”
この主張により送られた大半の食料は軍用に転用され、プラント国民はよりプラント理事国への敵愾心を高める事となる。

そしてプラント市民の食料確保を目的にザフトは地球に侵軍を動かし始める。
だが皮肉にもこのザフト軍の全将兵を養えた食料は地球からの物資で、更にその中には敵国である大西洋連邦の物資も混じっていた。
そして・・68年と69年はユニウス7が二年に渡り大豊作で、かなりの食料が確保された事で輸入した食料の軍用転用により食料不足による餓死者が出る事は無かった。

その間にも小規模の輸送船団が食料を積んでプラントを細々と行き来していた。





南アメリカ合衆国。
大洋州連邦。
オーブ首長国は中立を宣言。
しかし大洋州連邦と南アメリカ合衆国はどちらかと言えば地球寄りの中立であり。
極秘に援助協定と軍事協定が行われる。
拠点内容はマスドライバーの使用、一部軍港の解放。

代償は輸送任務で護衛を行った件の借りの帳消し。
そして余剰したMAミストラルと旧式の宇宙艦艇を南アメリカ合衆国に安値で譲渡を行った。
(輸送船団の護衛任務でMAメビウスが第一線部隊に有効と判断された為に第一線のMAミストラルは第二線に下げられ。
艦艇の方は対MSを意識した艦艇の改修と新造が行われ老朽と旧式しつつある艦艇が余ったので処分も兼ねて安値で売り付ける)

一時は大西洋連邦内では中立とか面倒臭くなる前に攻め込むべきだという主張が出たがアズラエルはそれをバッサリと切り捨てた。
“下手な種火を残せば、そこに入り込む隙が生まれてしまう。”

オーブ首長国
“他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない”をスローガンにオーブは武装中立を宣言。
その為、事前に行われた協定交渉は事務レベル会談が行われたのみで、その後も外交官同士の会合が水面下で細々と行われた。
赤道連合
スカンジナビア王国はオーブと同様に中立を宣言。




一方その頃、隠密性を考えてファントムペイン隊の本隊の本拠地を月面のプトレマイオス基地から。
プラントや他の国から所在が判明していないダイダロス基地に拠点を移す事となる。
彼らの存在を気がつかせながらも敵にけして全容を悟らせてはならない・・。





作者カキコミ


世界の破滅だけでなく新たな世界秩序の再構築を行う方は沢山います。
誰にするにしても敵がかなり多い。

ちなみに公式年表を確認しつつ俺年表を構築しました。

公式だと。
CE65年にプラントがモビルスーツを開発
CE67年に試作品が完成


アズラエル年表だと
CE67年にモビルスーツの開発と研究開始
メビウスもファントムペイン隊の間だが65年から試作品を試験配備。
67年にファントムペイン隊の大半がメビウスかメビウスゼロに全て入れ変わる。
同時期に大西洋連邦の一線部隊でも細々と機体がメビウスに入れ替り始める。

68年に南アメリカ等からの食料輸入を行おうとした輸送船団に大西洋連邦を除くプラント理事国からの攻撃を退き無事にプラントに運び込む。

この戦いでメビウスの増産が増えて第一線部隊での入れ替えが増加する。
この時に大西洋連邦最初の試作型のモビルスーツが投入。
戦果を上げたがアズラエルの予想より性能やら使い勝手がまだまだ悪い。
アズラエルは地球出身のコーディネーターを身柄の保護と報酬等を条件に協力をとりつけて。彼らを中心としたMSの開発チームを新たに組織。
更なる改良を開始している。
残念ながらモビルスーツの開発は技術やら前例がない等で少々遅れ気味です。



[22806] 外伝~大西洋連邦の三馬鹿トリオ結成秘話~時期は開戦前辺り
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/04 12:13
“多目的歩行機械運用研究準備機関
又はMS研究開発部では今日も妙な三人組が仮想演習装置内でモビルスーツの仮想戦闘をしていた。

「オラオラオラァァァ!!」
「落ちろぉぉぉ!!」
滅殺!」
「撃滅!」
「へっ、落ちなよ」
あまりの力入れっぷりに操縦桿に負荷がかかったために、技術長から通信が入った。
“ちょっとあんた達、三人共力み過ぎ~もっと力を抜いてやりなさい”
「うっせえなブス!」
“チビ瞬殺!”
「ガキは黙ってろよ」
“ガキ、ガキゆうな~!私はこれでもあんた達より年上よ”
三人に吠えたのは白衣と赤いフレームの眼鏡と、見た目が14~15歳の子供だが今年で19歳の女性ネル・バーコックはコーディネーターとナチュラルのハーフであり研究機関の技術長をやっている。
素面で薬品投薬なしにハイテンションな4人の恒例のやり取りを見て研究員らはニコニコと微笑んだ。


研究所の三馬鹿テストパイロットのシャニ・アンドラス特技准尉
クロト・ブエル特技准尉
オルガ・サブナック特技准尉
この三人のパイロットがテストパイロットとして働くようになったのは数年前である。


当初生体CPUとしてジブリールの研究機関で軽い投薬とトレーニングを受け、再度身体能力を上げる投薬を受ける予定であった。

この時は折しもアズラエルがジブリールの身体改造の研究をマスコミやロゴス内にリークした事で研究が露見した為、実験体や研究施設を処分を行うとした。



研究機関がいきなり完全武装のジブリールの私兵に包囲された研究員や実験の被験者となった少年や少女らは施設の近くある広場の真ん中に集められ、機関銃や火炎放射機を向けた。

「貴方達は何者なの?この子達は関係ないわ」
一人の女性研究員が被験者の少女や少年の前に間に入った。
「ヘヘヘ、俺達は貴様を始末する様に言われた汚物の掃除屋だぜ!」
ゲヘゲヘと笑いながら周囲に銃口を向けた。
「どう殺そうかな、焼き殺すか、蜂の巣にするか。それとも俺達をあんたの身体で満足させてくれたら殺さないであげてもいいぜへへへ」
研究員は彼女の後ろで奮える青い髪の少年をそっと眺める。
被験者の少年は自分を母さん母さんと言って慕っていた。
この子らを死なせたくない、そう考えて自らの肉体を下品な連中に差し出す覚悟はあった。
「ヘヘヘ、まずは俺の物を握れ・・」(どっちにしても殺すがな)
隊長らしき男が研究員の女性に近づいた瞬間、隊長らしき男の後頭部に緑色の球体がめり込んでいた。
“悪即斬、悪即斬”
その球体は妙な一言を言いながらポンポンと弾みながらガンガンと隊長の頭を叩いた。

いきなりどこからか、スポットライトに照らさながら一人の男が立っていた。
「悪しき心で己の欲望を満たさんとする者よ。人、それを醜悪と言う!!」
“何者だ!!”
“てめえ~!!”
「お前らに教える名前はない!!」
まるでヒーロー風な男は飛び跳ねるながら手に持った刀を引き抜き白刃と共に飛び込んできた。
「抜刀術、牙突」
刀を手で構えながら素早い突きが飛び込み、相手に銃口を構えた最初の男を吹き飛ばす。
「抜刀術、秋水」
刀がまるでムチの様にしなりながら相手はバラバラに切り刻まれる。
“何なんだ?一体貴ガッ”
驚愕していた数人の兵士のこめかみに赤いポインターが当たり次々と倒れていく。
“ローチ、マクタビッシュ、奴らを生かして帰すな、ゴーストは右の二人を撃て!派手にフレデリック少佐が大立ち回りで連中の目が奴らに向いている”
プライス中尉は部下と共にフレデリックとの打ち合わせ通りに草むらや物陰に隠れて仲間の援護を行った。
パスンパスンと減音装置が付いた狙撃ライフルやアサルトライフルが次々と私兵連中を倒していく。
20名以上の私兵は切り捨てられ撃ち倒される。

「ヒィィ馬鹿な、俺達の部隊が全滅だと?」
「おい、後は貴様だけだ」
「助けてくれ、頼むよ」
「そう言って頼んだ奴を貴様は今まで何人助けたんだ?」
そして刀の閃光と共に悪党の身体は四散した。

「自分は大西洋連邦のフレデリック少佐であります。君ら研究員やその子供らの保護に参りました。」

子供らを身を捨てて守ろうとした女性と研究員と数名の研究員、そして100名近く被験者の少年や少女は輸送機に乗り込み、ファントムペイン隊の護衛を受けて研究所を脱出している。

“ローチ、仲間を売って逃げる奴に感謝の花束を送れ”
“了解”
パシュ~と鳴る音と共にヘリで一人逃げ出した研究所の所長は潜んでいたローチの構えた携帯式の対空ミサイルで叩き落とされた。
“汚い花火だ”
“周囲の安全確認完了”
“ローチ、ゴースト、マクタビッシュ、撤収開始”


数週間後

保護された子供らの中でもモビルスーツのパイロット適性が高い三人は、デトロイトにあるアズラエル財団のビルに呼ばれた。

初めて会う三人にアズラエルは即座に本音で語り合った。
「正義やら平和やらって綺麗事は言わない。だが君達三人を准尉待遇として軍でのモビルスーツ開発に協力していただきたい」
そうお願いしながらアズラエルは見事な土下座を披露した。
「・・まあいいぜ、衣食住の保護、それに准尉待遇なら給料をよこせ。後は今までの俺達の過去を書き換えて、戦争の後の職と生活を保護してくれ。ちなみに仕事は週休2日で7時間勤務。残業なし」
「俺も俺も、後は欲しい最新版のゲームの支給」
「新しい音楽CDとプレイヤーをくれ」

その条件を飲んだ三人は週休2日の7時間労働のテストパイロットとなった。


三人のテストパイロットが手に入ったアズラエルは、更に人材確保に奔走する。

大西洋連邦国内、他のプラント理事国、中立の月面都市に住む技術に関わる者、そしてパイロット適性のあるコーディネーターを探し。
アズラエル自身が彼らと交渉して、身柄の保護と多額の報奨金を条件に研究者としてアズラエルの財団に移籍させた。

「才能や技術力は少しでも欲しい。その為ならば頭を下げても私のプライドは傷つかない」


この時CE69年・・開戦の色は更に濃くなる。


断章
作戦前

アズラエルの提案が書かれた書類を読んだフレデリックはやや呆れていた。
「ムルタ、この登場はあまりにこれは変じゃないか?明らかにこれはロム・ス」
「いいえ、いいえオリジナルです。フレデリック大丈夫ですよ(笑)」
「・・・」



[22806] L1地球樹攻防戦(前編)
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/06 13:25
戦略情報機関

ジブリールらの暴走によるプラント攻撃を察知した事から、僅か一年で更なる追加予算や新たな人員が増員され諜報能力は一年前以上に増大する事となる。



“大変だ。上に急ぎ連絡をしろ!”
情報局員が傍受と暗号電解読機から出た電文を読んだ情報局長は急ぎアズラエルに連絡を入れる。

「ほう、ザフト軍は2月くらいにL1の『世界樹』に侵攻ですか・・規模が判明次第、追加情報を頼みますよ。それとファントムペイン隊はすぐに出撃準備を始めて下さい。解読装置をこれで軍に納入出来ます・・」
開戦前のザフト軍が組織的に拡大し始めた時より大西洋連邦は暗号解読に奮闘し解読に急いでいた。
しかしながら軍では今だに暗号解読は2割程しか進まず。
アズラエルの方はプラントの暗号電解読を指示。
既に味方側のプラント理事国の暗号電文解読もすでに可能な状態となっていた。
“敵の動向もそうですが、味方の行動把握もまた必要である。”
プラント理事国での暗号電文解読は軍部より高く解読し。プラント側の情報は軍よりも多く解読出来てはいた。
それは暗号解読機が軍の使用する物より高性能でより多く解読が可能ではあった。
しかし軍は新型の暗号解読機の導入せず、新型MSにも無頓着であった。
辛うじてMAメビウスは配備するものの、戦法は旧来の艦隊決戦構想のままである。
(ハルバートン准将の第8艦隊等のアズラエル派に近い一部艦隊は対艦対MS戦闘を意識した艦隊運用を行っている)
アズラエルはそれを変えるべく裏工作を含めてあらゆる手段をこうじるも上手くいっていない。
ロゴス内でのタカ派による攻勢は収まりアズラエルらハト派が勢力を伸ばしているが、軍部にはロゴスに従うものの、ジブリールらタカ派の影響が強い三大将の反対があり上手く軍が動いてはない。


数ヶ月前に核エネルギーを抑制し従来の誘導兵器や通信を妨害するニュートロンジャマーと呼ばれる兵器の情報と一部図面を入手し、データを軍に送るがあまり真剣に取り合わず。
アズラエル自身が軍を通さずに大西洋連邦の大統領に渡して対策を行う様に説得した。


(核エネルギーが無力化された際の代用になる備蓄燃料の確保。頭が痛い事です。しかしやらねば死者が出ます)
アズラエルはニュートロンジャマーの対策とザフトの動向への対策に追われていた。


某所

「ジブリール、どうやらアズラエルの若造と手下のサザーランドがあちらこちらでチョロチョロと動いておる」
「安心下さい、今回の開戦工作であのアズラエルの行動も無駄な努力です。この戦い後に閣下は元帥に昇進出来ます」
「これで我々の地位も安泰となろう」
ジブリールの前には彼の息のかかった将官らがブランデーを片手に密談を重ねる。




プトレマイオス基地

ハルバートン准将は司令部から通知された作戦案と司令書に苦々しい思いで自身のデスクの上で事務的な書類の処理していた。
第8艦隊は訓練と演習以外の作戦行動を控え、待機せよとの命令である。

L1コロニーにある宇宙ステーションの世界樹にはユーラシア連邦の警備艦隊が一個隊に満たぬ規模で駐屯していた。

増援なくば殲滅は確実である。

L1宇宙ステーション世界樹の駐屯艦隊


ジェラード・ガルシアはユーラシア連邦の准将でこの世界樹に駐屯する艦隊司令である。
彼は数年前にある財団の御曹司の押しで将官に昇進し、艦長職から提督となった。
だが軍上層部の派閥争いから駐屯艦隊の司令職に飛ばされる事となる。
でも本人として前線勤務が規模でありおそらくプラントとの戦争となれば月と地球の橋頭堡となる世界樹が最前線になると考え、日々部下に腐らずに訓練に励むように伝え。
叱咤激励を行い部下のモチベーションと技量を高めさせた。

一ヶ月前に久しぶりに自身のブレーンとなった財団の御曹司から機密性の高い通信波で連絡が入る。

「私の力が及ばず、すみません」
「いえいえ、私は気にしていませんから」
「実は今日は謝罪だけに機密性の高い通信波で連絡を行ったのは他でもありません。今年の2月後半にもザフト軍が世界樹に大規模な攻勢をかけるとの情報が入りました。」
「いよいよですな。私がここに赴任した時に覚悟をしていました。」
「それだけでなく敵は一部通信波や核エネルギーを無力にするニュートロンジャマーなる兵器を試験運用するつもりです。出来るだけこちらから増援を送れるように根回しは行います」
「増援とはありがたい。」
「出来るだけ粘って時間を稼いで下さい」
「了解だ。敵の残骸を大量に廃品してジャンク屋に売り付けてやります」
「死なんで下さいよ」
そう言って通信は切れて数枚のデータの書かれた書類が同時に送られた。

ガルシアは直ちに民間人を軍の輸送艦や民間の船舶に乗せ、数少ない艦を護衛につけて月にむかわせた。

そして宇宙用の敷設機雷を散布
倉庫入りしていたミサイルポットにセンサーを入れて散布
旧式艦した老朽艦もオート状態して固定砲の代用。
余った民間の船舶も一部ブースターを取り外し周辺に浮かぶ隕石に取り付ける等の使える物は全て使用して守備の陣地構築に努めた。

数日後
月に向かった民間人らは無事に月面都市に着き。
護衛艦は第8艦隊から数隻の艦船と大量の補給物資を連れて帰ってきた。


CE2月17日

先行し偵察中の偵察部隊が敵のザフト艦隊を発見する。
推定航路はこちらに向かうのは確実である事は分かった。
およそ予定通りの日時が攻撃日となることがわかり。
ガルシアは直ちに全将兵に訓示を行った。
それは短く更に言えば将兵の心に響くものだった。

「国のため、家族のため、我々はたとえ最後の一兵になろうとも、ここの地にて敵を食い止めることが責務である!!ユーラシア連邦万歳!!」



ザフト軍艦隊


ザフト軍は敵艦隊の規模が不明故に大規模な艦隊派遣となった。
自軍の艦隊規模と新型兵器MSを持ってすれば敗北する事はないと確証ない自信が艦隊の大半に満ちているが、動員された全ての隊が自信と油断を持っている訳ではなかった。

アンドリュー・バルトフェルトと副官のダゴッサにはあまりにプラント側が油断しきっている姿にやや呆れていた。
彼らはプラントでの核兵器投入事件前より隊を指揮している数少ない実戦経験者。

そして今回の遠征艦隊の全体指揮は最高評議会からの推薦された実戦経験のない人物が行う事にも呆れていた。

「ダゴッサ君、今回の遠征は隊が全滅しないように戦うしかないね」
「そんな隊長、戦う前から負けると負ける言わないで下さい」
「油断した軍隊が勝ったためしはないよ」




[22806] L1地球樹攻防戦(中編)
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/09 20:32
ファントムペイン隊

他の重要拠点に潜伏している部隊を除き、本隊は急ぎ足で月の本部から主戦の戦場に到着した。

偵察隊は逐次情報を地球樹の部隊に送り続けた。

「ファントムペイン隊、地球樹派遣艦隊司令、ウォルター・ミスミ大佐だ」

「艦隊参謀のフレデリック・ハルス少佐です。よろしくお願いします。」

「副長イアン・リー大尉であります」
ハハハと陽気な顔の司令官と軽く微笑む参謀
そして白く顔の薄い副長は実に対象的である。
「第8艦隊等の月艦隊はまだ出撃が遅れているとの事だ。」

その開口一番の報告にガルシアの顔にやや苦い笑みを浮かべた。

ファントムペイン隊の増援の規模は半個艦隊・・装備や練度は高く、隠密性を高い。
「ファントムペイン隊が高い隠密性があるのなら、この作戦で組んでみてはどうかな?」
ガルシアは駐屯部隊の陸戦隊の隊長とファントムペイン隊等の指揮官を全て臨時の作戦室に集めた。

「敵の目的が地球樹ならば。地球樹と我々の艦隊を囮に証明での陣地防御に徹して敵を迎撃し。ファントムペイン隊は機動防御にて敵の迎撃をお願いします」
「ならば敵艦隊の攻撃は対艦攻撃訓練を受けたメビウス雷撃隊の出番です。積み込んできた新型の対艦用の貫通弾が役に立ちます」
MA隊の戦闘隊長は攻撃の先鋒に手を上げた。
「露払いはメビウスゼロ隊に援護をお願いします」

「まあやるしかないなムウ」
「そうだな。しっかりお前らのケツは守ってやるよ」
雷撃隊のマツカタ中尉の肩をムウ・ラ・フラガ中尉はポンポンと叩いた。
「そいつはありがたい、ケツを掘られたら痛くてたまらんから必ず頼むぜフラガ中尉」
和気あいあいとなる会議室でいきなり一人の声が響く。
「ガルシア准将にお願いがあります。勝つ為に一つ出していただきたいものがあります。もし成功すればガルシア准将に新しい同型艦艇を手配する準備があります」
「まあいいだろう、フレデリック君、将兵が死ぬ事がないので協力する」
「ありがとうございます」
フレデリックは深々と頭を下げた。


メビウスは大型対艦ミサイルが搭載可能な構造であり、当初は核兵器搭載可能な攻撃部隊の創設案もあったが、アズラエルの反対もあり対艦ミサイル隊となった。
対艦ミサイルを積んだ艦攻装備の複座式に改造したメビウス以外にも、バルカン砲装備型は近接戦闘や制圧射撃
リニアガン型は一撃離脱
ロングキャノン型は遠距離のロングレンジより援護
メビウスゼロ型は対MS戦闘用の部隊
メビウスゼロを除けばメビウス自体が装備の一部切替で色んなタイプが編成出来る汎用機である。


メビウス隊が次々と持ち場に着き、地球樹守備隊も覚悟を決めて時を待った。



哨戒任務中だった一隻の高速強攻偵察型は急ぎ足で新しい情報を送りつつ囮役となり地球樹の防御陣地に艦隊の位置を引き寄せた。


ザフト軍艦隊

「何かがおかしい」
バルトフェルトはローラシア級“ランド”のブリッジで敵の動きに何か妙な違和感を感じた。
「隊長どうしました?」
「ダゴスタ君、これは敵があまりに無抵抗過ぎる。本艦は速度を落とし、観測員を増やして警戒に当たれ。操舵主はジグザグ移動をしつつ回避運動を行える準備を行え。パイロットはMS内での待機だ!」
「了解です」
「入口が狭まり岩礁の様なデブリが増えて伏兵を配置しやすい。教本の問題に出そうな待ち伏せの見本だ」
この虎の力を副長は信用し、命令は直ちに実行された。

ザフト軍本隊
ナスカ級“メルキア”旗艦

「後方のランドの速度が下がり艦隊から遠ざかりつつあります」
「バルトフェルトが、命令違反だと。腹立たしいが、奴は後だ」
「隊長!敵艦隊反応あり、前方に敵艦を複数確認」
数はネルソン級宇宙戦艦、ドレイク級宇宙護衛艦と宇宙巡洋艦型が数隻、そしてユーラシア連邦軍の旗艦とおぼしき茶色のカラーリングが施されたアガメムノン級が艦隊の中央に展開し、艦隊から出撃した思われるMAのミストラルが数十機。
艦艇が前方で足を止めつつ、MAのミストラルが直線的にザフト艦隊に飛び込んできた。
「砲門開け!全艦は艦隊戦用意、MS隊出撃」
ナスカ級及びローラシア級は後方のランドを除きほとんどの艦は前方の敵艦隊に注意が集中していた。

出撃した機体の中でラウル・クルーゼは次々と単純な動きのミストラルを叩き落としていく。
「6機目だ。所詮はハエに過ぎんが何かおかしい」
何か妙な気配を感じ、敵艦隊の撃破の為に進む味方部隊とは反対に味方艦隊に向けて機首を変えた。


ザフトMS隊にMAミストラルを全て落とされたユーラシア連邦艦隊は密集体型の陣形を崩しつつ散り散りに分かれる。
MS隊は雑魚に構わず旗艦とおぼしきアガメムノン級に接近して艦からの機銃掃射を避けてながらブリッジと艦砲をサーベルで切り裂いた瞬間。
アガメムノン級オルテュギアが突然爆破して数機のMSが巻き込んだ。

「全て計画通り、無人操縦と単純な行動プログラムを入れたMAミストラルと旗艦を含む囮艦は無人操縦・・騙し合いも立派な戦術のうちなんだよ!!」
「人間って面白い」

そんな風に艦隊司令官と艦隊参謀が黒く微笑んだ。

密集体型を取り包囲をかけていたMS隊は混乱した所を散り散りとなりながらいつの間にか半包囲陣形を組んだユーラシア連邦艦隊から反撃の砲撃を受けてかなりの被害を出した。

MS隊が混乱しているその時には本隊の艦隊も大混乱に陥っていた。

いきなりデブリ地帯から無数の閃光が飛び込み、直衛MS2機とローラシア級の一隻が直撃を受けていきなり撃沈した。


「雷撃隊突撃!!突撃!!横槍を撃つ!ロングキャノン隊は援護射撃を続けろ!」

一発撃つ使い捨てるロングキャノンを順番づつ交換してメビウスは支援砲撃を続けた。

「マツカタ中尉、雷撃屋の腕を見せてくれ!」
「エリート共のケツに俺達のデカイイチモツをぶち込んでヒイヒイ言わせてやる」

対艦ミサイル搭載型のメビウス改はデカイ対艦ミサイルを搭載しているが為にバーニアが強化されているものの、通常のメビウスより速度が劣り脱出装置があるが雷撃隊の帰還の可能性はあまりに低くかった。

メビウスのロングキャノンから撃ち出される巡洋艦クラスの砲撃を受けて、混乱しているザフト艦隊は反撃を加えようとするが。
艦艇より的が小さくデブリ地域から隠れて撃ってくるメビウスにザフト艦はおおいに混乱した。
「“ロンメル”弾薬庫直撃により爆沈、“ネルソン”第二艦砲が損傷」
「直衛隊は何をやっている!!MS隊はどうなっている?」
「現在敵艦隊に半包囲され被害を出しています。」


メビウス雷撃隊


「よし、全機雷撃地点まで隊列飛行せよ・・無理に避ければ弾幕で叩き落とされる」
「了解しました」
「了解・・」
いきなり三番機の通信が途絶えた。
「悪いが本隊をやらせるわけにはいかない」
上方よりジンが艦隊に向かう雷撃隊をたたき落とす。
「やらせるかー!!」
いきなり左右から小隊を組んだフラガ中尉のメビウスゼロ隊とメビウス隊が援護の為に現れた。
「MSにMAは倒せん!」
メビウスゼロのガンバレルからの銃弾をクルーゼは先読みで避け切りながら一撃離脱して距離を取りつつあるメビウスに銃弾を浴びせてコックピットを蜂の巣にした。

それを見たフラガはメビウスゼロのブースターを吹かして敵の前に踊り出た。
「ハエ共が!!」
「貴様ー!!何をするだーつ!!許さんぞ」
そう叫ぶクルーゼとフラガ中尉の額にいきなり何かが浮かぶ。
「お前は一体?」
「ほう・・貴様はあのアルダの息子か」
「どうしてそれを知っている。親父の名を貴様が」
「生きてまた会えれば答えを教えてやる。」
「待て!貴様の名は?」
「ラウル・クルーゼ」
「ラウル・クルーゼだと?」

メビウスゼロ隊とメビウス隊が突然現れたクルーゼのジンを防いだ。
「フラガ中尉の隊が敵を引き付けてくれています」
「ありがたい。必ず敵の横っ腹に叩き込む」
マツカタ中尉のメビウス改がデカイ対艦ミサイルを担ぎ射程内まで突撃を続ける。
「マツカタ中尉、敵の艦隊です」
「デブリ地域を撃ちながらこちらに横っ腹を向けている、やれるぞ!」
「対艦ミサイル発射用意!マツカタ中尉殿、機を揺らさんで下さいよ」
「大丈夫だ。安心しろ」
敵艦隊がマツカタ達に気がついたのは対艦ミサイルの射程ギリギリに近づいた時である。

ナスカ級“メルキア”
「電波妨害で敵のミサイルを防ぐんだ!!」
「しかし今ニュートロンジャマーを使用しては味方に混乱が生じます」
「旗艦が沈めば艦隊が壊滅する構わ使え!」
新型兵器のニュートロンジャマーのスイッチを入れた。

いきなりメビウスの小型レーダーの真っ白になり映らなくなった。
「マツカタ中尉!レーダー誘導が妨害されました。」
「レーダー誘導は始めっから当てにしないのが雷撃屋だ!新型の熱源追尾とレーザー照射、そして最後は目玉で狙え!」
電波妨害対策として機体と敵艦の位置を測定するレーザー照射機。
東アジア共和国のフジヤマ社から試験購入し改良した熱源追尾装置は電波誘導装置が動かない時の為に対艦ミサイルに搭載されている。
対艦ミサイル一発でMAミストラルが購入出来る位のコストがかけれれている。

「わかりました。」
ある程度はニュートロンジャマーを理解していたパイロットらは動揺せずに冷静に敵に狙いを定める。
「二番機がやられました」
側にいたメビウス改が敵艦からの砲撃を受けて機体よりパイロットが射出され脱出していく。
「まだだ、回避運動をとるな。雷撃用意、撃て!!」
その言葉と共にレーダー誘導のないミサイルが敵に叩き込まれた。
だがここでも予想以上の命中率を出した。
「“シャルル”敵ミサイルで攻撃で撃沈」
「“バララント”直撃、総員退艦中」
「“レイテ”ブリッジに直撃、戦闘不可能」
「馬鹿な、こんな事が!迎撃機はまだ出せんのか!!」
艦隊の隊長が旗艦に積んでいた一機のジンを緊急発進させようとハッチを開いた途端。
「これが大将さんの船か、俺のデカイイチモツをぶち込んでやるぜ。」
マツカタ中尉の対艦ミサイルがハッチから飛び出そうとした機体に叩き込まれた。
ミサイルの直撃を受けたジンは対艦用の硬い先端がコックピットに突き刺さったまま格納庫の奥に吹き飛び、そのまま機体と詰まれていたミサイルが炸裂し、
ダメージコントロールの容量を越えた爆発がナスカ級の船内を突き抜けていく。
轟音と爆炎が艦長と艦隊司令の隊長を焼き払うのは僅か数秒である。

“旗艦が沈んだ”

“味方どこんだ?”
“MS隊、救援を願う”

“退却!退却”
“ニュートロンジャマーで上手く通信が回らんない”
“助けてくれ!”
逃げようとするザフト艦から次々と通信が飛び交う。
指揮官を失い散り散りなりながら、艦は各艦の艦長の指示と判断で目の前のデブリ地域に下がろうとするも、無人砲や無人のミサイルが次々と反応しザフト艦隊に砲撃を加えてきた事で、混乱に拍車をかけた。


艦砲で前進する味方を援護し、バルトフェルト隊は僅か数機で既に組織的な艦隊行動が破綻しつつある味方の援護に向かった。

敵艦隊襲撃に向かった本隊出撃のMS隊はユーラシア連邦とファントムペイン隊の張った半包囲陣形を突破すべく数度に渡り攻撃を加え突破を果たそうとするが、最初の爆発と半包囲陣形からの単一目標への集中砲撃と伏兵のメビウス隊からの一撃離脱攻撃でかなり被害を出しつつあった。

ローラシア級“ランド”


「ダゴスタ君、帰還後に飲む、温かくて美味いコーヒーを頼むよ」
「了解しました。苦味のある代用コーヒーを入れて待っています」
「ありがとうよ、アンドリュー・バルトフェルト隊出撃」
(僅か数分でこれだけの被害を出すとはな・・これ以上は好きにやらせん)



[22806] 地球樹攻防戦(後編~プラント側)
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/09 23:15

ユーラシア連邦とファントムペイン隊の攻撃のやり方は変わっていた。
攻撃、帰還してコーヒータイム、機体の補給、出撃し、敵に攻撃、帰還してコーヒータイム、補給・・とユーラシア連邦艦隊とファントムペイン隊はそのタイミングで被弾して脱出した仲間のパイロットや捕虜のパイロットと捕獲したMSを回収しつつ、
何度も何度もMA隊はデブリ地域に隠れて待機している母艦に行き来していた。

そして対称的にザフト軍のMS隊は旗艦と本隊の位置が離れていた為にエネルギーと弾薬が少しづつ欠乏しつつあった。

被害と疲労はユーラシア連邦軍より多い敵艦隊に蓄積しつつあった。
このままでは半包囲攻撃を受けたザフト軍MS隊だったが、半包囲陣形がいきなり緩み袋に穴が空き始めた。

それは僅か数機の分艦隊のMS隊による攻撃があった為である。
「間に合ったか、こちらはアンドリュー・バルトフェルト!戦友諸君、騎兵隊の登場だ」
少数ながら的確に艦隊の薄い部分に攻撃を加えて包囲突破を果たしたバルトフェルト隊の攻撃は直ぐに艦隊指揮のガルシア准将の知る所となる。
「厄介だが、ここはお引き取りを願うだけだ。全艦隊は半包囲陣形を維持しつつ袋の結びを外せ。しかしおみあげは忘れな」
包囲陣形が開いたと同時に距離を取りつつミサイル攻撃と主砲による攻撃が始まった。
半包囲による集中攻撃から退却する敵への追い撃ち攻撃に変わった。

バルトフェルト隊の活躍とユーラシア連邦軍とファントムペイン隊の判断によりMS隊はボロボロとなりながら退却を始める。
数分後にはデブリ地域での連結式での短距離通信と信号弾でMS隊が半包囲陣形を開いた事を知り、艦隊攻撃中のMA隊は直ちにデブリ地域に撤退。

ローラシア級“ランド”が混乱していた他の味方艦隊の混乱を収めた時には敵は撃破されたMAの残骸しかいなかった。
艦隊を指揮すべき議会からの推進を受けた隊長は戦死により臨時にバルトフェルト隊が指揮を行いプラントへの帰還となる。
帰還した将兵らは敗北隠しの口止めに休暇と勲章が与えられ。同じく戦死者には勲章が授与。
そしてアンドリュー・バルトフェルトは敗北隠しの為に英雄に祭り上げられた。



「まあ褒められて悪い気はしない」
帰還してマスコミや議会からの洗礼を受けた後、前より広くなった官舎部屋で一人コーヒーを飲んでいると騒がしい足音と共に来客が来た。
「隊長、大変です」
「どうした?まさかザラ国防委員長が酔っ払ってエザリア議員を押し倒して、委員長の奥さんに怒られたのか?」
「違いますよ。ヤキン・ドゥーエの宇宙要塞とゴンドワナ級宇宙空母が完成したんです」
地球樹攻略からC.E.70年3月15日に計画予定の作戦であるエイプリル・フール・クライシスは地球樹が残った為に幾つかの変更点が加えられた。
地球樹が攻略出来かった為に、建造したばかりのゴンドワナ級宇宙空母を急遽地球樹方面に展開し、資源採掘用の小惑星であったがヤキン・ドゥーエを本土防衛ラインとして宇宙要塞に改造し、絶対防衛圏として本土の守りを固め始める。

「よくある話だな。君が婚姻でもした方がまだ面白い、今度俺が可愛い子でも紹介するか?」
「自分の事はいいです。それよりもう一つ新しいニュースです。」
ダゴスタは一枚の資料をバルトフェルトに差し出した。
「新バルトフェルト隊?」
「前回の地球樹の戦いで残存戦力の一部と新兵を現在の隊に加えた部隊との事です」
「やれやれゆっくりコーヒーを飲む隙もない」
くいっと一杯のコーヒーを飲み干して顔を洗い緑色の軍服に袖を通すと先程の緩んだ顔ではなく軍人の顔となる。
「さて、新人と隊員の面を拝みに行くとするか」
そういいながら結成式の段取りと艦隊編成の為に基地に向かった。


ラウル・クルーゼは一人苦々しい思いで酒をかっくらい布団を被った。
戦果は上げたが艦隊を守れなかったクルーゼへの国防委員長の評価は冷ややかであった。
「世界殲滅計画がまた一歩後退とは・・酒!飲まずにはいられない!」
現在やけ酒中



[22806] 外伝~ある人々の視点~(アズラエル、戦況、そしてムウの過去・・ネタ気味)
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/11 09:41
地球樹攻防後~


ファントムペイン隊は軍の三将官の圧力で遅れさせられながらも何とか来た第8艦隊と第1艦隊と第2艦隊と入れ替わるように、
敵から捕獲した7機のジンとローラシア級の2隻の内、1隻のローラシア級と3機のジンを残し他はいつの間にか消えていた。
「まるで陽炎のようだな」
ガルシアはそう言葉を漏らしながらローラシア級の残骸を捕獲したと書類に書き直した。
機体や艦艇のデータが残っていたので、実際の艦艇が無くても困る事はなかった。

この地球樹防衛に成功したガルシアは少将に昇進し、艦隊勤務に戻る事となる。

ファントムペイン隊と後日また再会する事となるが、それはまた別のお話である。


大西洋連邦
デトロイト

「モビルスーツ開発はまだかかるみたいですね・・まあOSは完成したみたいだけど。」
アズラエルは地球出身の技術者によりOSはある一定の水準の物が完成した。
早速先の戦いで捕獲したジンでの稼動実験を行いまずまずの結果が出た。
だが・・。
「モビルスーツの開発はまだかかりそうです。」
ジンやプロトタイプジンの技術解析である程度のコピー機は可能だが、決定的な優位がなかった。
「さて、どうしたものか」
アズラエルは机から漢方薬、ビタミン剤等を取り出してお湯に全て溶いて飲み干した。
特製“ネオ強くなるスペシャル~byオクレ兄さん”ドリンクを飲むと疲れが少し吹き飛んだ。
「今日で一週間・・」
ニュートロンジャマーによる核エネルギーの無力化した場合の対策、そしてモビルスーツ開発と忙し過ぎてアズラエルは一週間も家に帰っていない。
義理の息子と娘や自身の奥さんの顔が浮かぶ。
「久しぶりに帰るとしますか・・」
服の替えやシャワー室に仮眠用のベットは執務室にはあるが疲れがかなり溜まっていた。
アズラエルは仕事に向かった頭をプライベートに無理矢理切り替えた。


数ヶ月前の地球樹での勝利を除けば戦況はザフト軍の優勢であり、幾つかの無人宙域が占領される事となりドンドンと支配地域を広げ始めた。
一方でサザーランド大佐は開戦前にアズラエルからの指示でコロニーの住民らの疎開と備蓄れていた物資や機材が引き上げていた為に、進軍するザフト軍がコロニーを占領した時には紙屑しかない程。
それでもザフト軍は地球への侵攻が近づきつつある。


ファントムペイン隊

各地での火消し任務で一時は戦力が消耗していたものの、パイロットは機体に装備された脱出装置や友軍の必死の救助により機体は失ったり、負傷により入院するものもいるが、大半生きて帰ってきている。
現在は極力決戦を避けて方針の為、被害の少ない通商破壊任務(ザフト軍やプラントの輸送船狩り)で新兵のパイロットに実戦を経験させている。

通商破壊任務に帰還したムウ・ラ・フラガ大尉(プラント事件での核兵器迎撃、地球樹攻防、そして部下への面倒見の良さから昇進なる)は部下達と共にビールの缶を開き飲み干した。

だが一人ムウだけは何かを思いだしかけた。
(ラウル・クルーゼ・・あの感じは何処かで・・あれは・・・・)
あれはムウの幼少時代である。

父アルダ・フラガが一人の少年を家に連れてきた。
「お前の弟だ。仲良くするようにな」
そう言ってムウと引き合わせた。
ムウの中にある父は高慢で性格が悪く、母親の方がムウは好きであった。
後で分かったがあの頃には父と中がもう悪くなっていた。

「君がラウ・ラ・フラガかい?」
「そういう君はムウ・ラ・フラガか」
会って最初の握手をしかけた時である。
「そうだ、僕の犬を紹介するよ。イギーって賢くて優しい犬なんだ」
そういってムウは愛犬のイギーを紹介したが、いきなりラウはイギーを蹴り飛ばした。
「なっ、何をするだァーッゆるさんッ!」

「このこぎたない手でさわるな!と言ったんだ。君の手は犬のよだれでベトベトだァ!人と握手をする時は洗ったらどうなんだ?後ムウに最初に言っておく!これから君の家にやっかいになるからといって私にアニキ風を吹かすな。私は一番が好きだナンバー1だ!誰だろうと私の前でイバらせはしないッ!それに私は犬が嫌いだ!怖いんじゃあない。その人間にへーこらする態度に虫唾が走るのだ!あのイギーとかいう阿呆犬を僕に近づけるなよ」

嫌味な長い台詞を聞かされたムウはラウとの第一印象は最悪である。

それからのラウはムウの愛犬のイギーを焼却炉に入れたり。
ムウの初恋相手のファーストキスを奪い。
引き出しに隠していたエロ雑誌を勝手に持ち出したりと、ラウはムウを散々痛め付けたが。
逆にムウはこの時の体験から精神と肉体は鍛えられた。

そしてある日、ラウはいきなり親父に捨てられた。
彼はラウは嫌いではなかった。
「親父何でラウを捨てたんだ!!」
「あいつはお前と一緒で失敗作なんだ!あいつはL4のコロニーのメンデルにあるG.A.R.M(ガーム) R&Dで作り上げた私のクローンだー!!」
「なんですとー!!そんなクローンって親父、アニメじゃないだから普通は無理だろう」
「確かにあれは私のクローンだ!!」
一枚の紙を差し出した。
「それが奴がクローンである証拠だ・・」
そう言い終えた瞬間、親父はいきなり倒れ背中には深々とナイフが刺さっていた。
「親父?」
近寄ると側にはラウが隠れていた。
「ムウ、貴様は悪い奴ではなかったが。貴様も死んでもらう」
そう言い放った瞬間、いきなり屋敷のあっちこちから火の手があがる。

「待て!ラウ、そっちは危険だ!戻れ!」
「ハハハハ、ムウよ。また会おう」
ラウの姿は炎へと消えた。
屋敷は親父の死体もラウも全て燃える程の炎で消えた。

(やはりあれはラウだったのか・・だが親父がつけれなかった決着は俺が必ずつける。ラウとの決着は特に)
父とラウがいなくなり母親は具合が悪くなり数年後に亡くなる。

そしてムウは士官学校に入隊する事となる。

そして悪友のエルンストと出会う事となる。

「どうしたんだ?せっかくのビールがまずくなるぜ」
ビールを片手にぼんやりしていたムウをエルンストが声をかけた。
(過去は過去、今は今さ。ラウとはいずれ決着をつける。その時に考えれば済む・・まあ今は友人との時間を楽しむ事にするか)

ムムムの微妙な過去編~終わり

作者カキコミ

ついかっとなってやった今は反省しています。
ムウとクルーゼの過去話は原作とネタを7対3で混ぜた話です。

屋敷はクルーゼに焼かれ、原作では火事でアルダは死亡、ムウの母さん死亡の辺りは創作です。
アルダとムウの母さんの関係は良くなったのは原作からです。



[22806] 沈黙の星(前編)
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/14 01:58
汎ムスリム会議国

中東・・アラビア半島



「稼動実験中に敵部隊に遭遇とは運がいいんだか悪いだか分からが。好きにはさせん」

新型兵器“対MS用駆逐戦車”のテストパイロットに任命されたモーガン・シュバリエ大尉は駆逐戦車の望遠レンズより敵MS部隊を見据えながら、随伴のリニアガン・タンクの小隊に通信が伝える。
「大尉、奴らは何か企んでいるみたいですが。どうやら連中は油断しているみたいです」
「よし、カリウス中尉。奴らを教育してやろう。」
「了解しました。」
幾つかの打ち合わせ後に。
後方のデータ収集の車両から付近に待機していた後方支援の航空部隊に連絡。
一応ムスリムの方にもザフト軍の潜入を伝え。
リニアガン・タンク部隊は左右を大きく包囲するように迂回さる。
そして正面に2台の対MS駆逐戦車がコソコソと動くザフト軍特殊部隊に砲を向けた。
「行くぞ若造」
「了解だクソ大尉」
上官のモーガン・シュバリエ大尉の問いにカナード・パルス准尉は答えた。


数ヶ月前


MAメビウスの強化案がアズラエルにより実行されると共に、陸上の現存兵器の強化や改修案が行われていた。

今回は同じ兵器を使用している改修会議にはユーラシア連邦
大西洋連邦
東アジア共和国
三国による将官や佐官だけに留まらず技術士官
現場の戦車部隊の尉官
対戦車歩兵部隊
そして最近は対MS経験者やMS開発技術部も参加。
更には捕獲されたMSによる模擬戦も、これも当初は大西洋連邦の三将官の反対で捕獲MSの使用は反対していたが、
地球樹での戦果とロゴスからの圧力に加えて、現場からの突き上げの声に押されてからはこの模擬戦は行う許可が出た。

その強化案の会議の際に“地球が戦場の場合は現在可能なのは主力戦車の強化の目標である”
そうユーラシア連邦のモーガン・シュバリエ大尉の押しや、アズラエルがMSと対抗可能な兵器としてリニアガン・タンクに注目した事で、第一線の戦車は一部新たな改修を加えたリニアガン・タンクに入れ替えられる。
更にこれまでの技術と経験を踏まえたMS戦を意識したモビルスーツと車両の中間ともいえる対MS駆逐戦車“モビルタンク”を試作と開発が大西洋連邦とユーラシア連邦と東アジア共和国の三国連係の開発となる。
これはモビルタンクの開発だけでなく三国連携により協力関係の更なる構築の意味もあった。

試作機のテスト場所は大西洋連邦のロッキー山脈の山中や高地
東アジア共和国は海岸地域と平地
そして三ヶ所目のユーラシア連邦は汎ムスリム会議の許可を得て砂漠地帯のアラビア半島で稼動試験を行っていた。
(駆逐戦車の完成の時はムスリムが大西洋連邦やユーラシア連邦が輸出している物の課税の一部期間的な減税を条件に承諾)
砂漠で提供された稼動実験場で数回の稼動試験に加えて、射撃試験、そしてリニアガン・タンクとの連携運用試験を三度目に行おとした時である。

試験地域で見覚えのない部隊とMSらしき機影を発見したのである。


プラント特殊潜入部隊

ヨップ・フォン・アラファスはザフト軍特殊潜入班として最新型の試作モビルスーツ、グーン地中機動試験評価タイプで地中深くにニュートロンジャマーを密かに埋め。
地球進攻作戦の日に装置を稼動させて通信網を混乱させる為の下準備を行うのが彼らの任務である。
装置設置後は地球潜入中の部隊と合流し、第三国経由で宇宙に戻る手筈となっている。
極秘に降下させたグーン地中機動試験評価タイプ3機で作業をほっかぶりを被るようにコソコソと行い。
そして同じ様に運び込んだ護衛のジンが6機で周囲を警戒していた。
普通に正面から勝てる相手ではなかった。

普通ならば・・。


そうモーガン・シュバリエ大尉ならば不可能な事ない。

「第一目標は背後を向いて資材を運ぶイカ野郎。第二目標は側面を向いている護衛のジンだ。」
「射撃はまだか?クソオヤジ」
「おい、せめて大尉と呼ばんかこの馬鹿者が、今度クソオヤジと言ったら・・殺すぞ」
「りょっ、了解」
(全く元の上官の躾が悪過ぎる)
ユーラシア連邦のモーガン・シュバリエ大尉は一人の若い兵士を軍から預けられた。
元々は軍の研究機関から引き抜いた人体実験を受けているとの事以外は不明な点があった。
カナード・パルス・・階級は准尉待遇。
まるで保健所から引き取られた気性の荒い犬、または盗んだバイクで金網を乗り越え様としたり。
夜の校舎の窓を破りそうな荒れ気味である。

最初の模擬戦でのカナードの操縦センスや判断力の高さや身体能力の高さを見学で見抜いたモーガンは文句なしにそれは認めた。
しかし“戦い!戦い”と好戦的に吠えるカナードを見たモーガンは“奴に足らぬ物を俺が体を持って教えてやる”と身体能力の高いカナードに組み手を挑み拳で恐怖を叩き込んだ。
“貴様に足りぬ物、それは死への恐怖だ。自分自身を配慮出来ぬ奴はさっさとくたばるだけだ”
モーガンから放たれた一発の顔面に寸止めされた拳にカナードは固まった。
その後は一応クソと言葉の前につけるが大尉と呼ぶようになった。


そんな二人のパイロットはそれぞれ別々の目標に向けた引き金を引いた。



[22806] 沈黙の星(後編)
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/16 18:59

モーガン大尉が放った弾は砲音よりも早く、大型のニュートロンジャマーを運んでいたグーン改(地中機動試験評価タイプ)は最も薄い装甲の部分が砲撃により撃ち抜かれる。

同時にジンに向けて放つ一撃はコックピットではなく左肩をえぐるように吹き飛ばし大破した。
「弾が逸れた。」
「宇宙と違い、ここには大気がある良く狙え!馬鹿者」
直ぐに自動装填のボタンを押すが敵MSは散会し始めると数台の迂回したリニア戦車隊からの砲撃を加わる。

ザフト軍はニュートロンジャマーの設置を諦め、先に目の前の敵撃破する事を考えた。

「モビルスーツに通常兵器が効くわけない!」
そういいながらグーン改で砲撃を避けながら通常の戦車をジンに任せ。
共に火力の高い正面のから撃ってくる敵との距離を詰めようと走る。
ヨップ達の目の前には車体が低く、砲が肩から突き出したMSモドキの様な自走砲が距離をとりながら砲撃を加えてくる。

「地球軍のモビルスーツの出来損ないで戦う何て愚かなんだよ」
ヨップ達は一気に距離を詰める。
「伸管ゼロ、拡散弾撃て!!」
サーベルを構えて切りかかるジンに向けて撃ち放ち機体を蜂の巣に変える。
装甲は完全に貫通しないまでもメインカメラや通信部分は潰れて動きが鈍る。
別の一撃が半身不随のMSを撃破した。
「よう、ギックリ腰で腰でも抜けたか?クソ大尉殿」
「余計なお世話だ若造」
そう言いながら敵との距離を調整するが、モーガン大尉の機体がいきなり砂の中から車体の底に攻撃を受けた。

「砂から敵?地雷の爆発じゃない。まさかあのイカ野郎は地中移動タイプか。大尉殿は地中からの攻撃か!!」

僚機の爆発から起きた現象で、敵からの攻撃
更には砂中からの攻撃。
付け加えると時速100キロの走る車体と同等の速度が砂中の中で出せる。

「やる事は簡単」
カナードは車体を動かしつつ、接敵すべき敵が現れるのを待つ
リニア戦車隊は残存のジンと戦い。
足の早いカナードの操るモビルタンクにヨップ達グーン改が地中より襲い掛かる。
砂中から次々と向きだして撃ちんでくる敵を感で何とか避け続けたが車体のキャタピラが敵の攻撃で吹き飛び足が止まる。
「我々の崇高なる目的の為に死んでもらう!!」
地中から後ろと前よりグーン改が顔を出してくる。
「ドン亀!キャタピラだけが移動手段じゃない」
機体の備えつけられたバーニアを吹かし空中に飛んびながら主砲を敵に向けて撃ち放つ。
反動で背後にいるグーン改に車体を叩き込む。

正面のグーン改は精密射撃でなかったが機体の頭部に穴が開き倒れ、背面のグーン改は硬くて重いモビルタンクの重さにコックピットを叩き潰された。

「地球を舐めんなよ!イカ野郎!」
損傷したキャタピラの排除と新しいキャタピラの付け替えをコンピュータに指示を出した。

だが目の前には損傷を与えて撃破したハズのグーン改が現れた。
「まだまだ何だよ!たかだかメインカメラと武器管制システムを潰した程度でいい気になるな」
メインカメラが映るらない代わりにコックピットを開いた状態で、グーン改を操りながら何度も何度も車体に拳を叩きつける。

「くたばれ!くたばるがいい!」

「チッイイ!薬莢が絡んで射撃不可能だって?試作品は故障ばかりで役に立たない」

カチカチと機体のコンソールを弄るカナードだったがいきなり通信機が鳴り響く。

「宅配便だ!!衝撃に備えろ」
いきなりの通信の後に、機体の背後から反応が鳴り響く。

センサーの故障と目の前の車体への攻撃で気がついていなかった。
「よう~宇宙人!友好印をプレゼントだ~」
ニヤつきながら笑う男の顔と武装ヘリコプターに装備された30ミリのチェーンガンの砲頭にヤップは釘付けになった。

ガガガと鳴り響く音と共に開けっ放しだったコックピット周りに血と肉片が飛び散る。

「宅配便は他にもあるぜ~!」
残ったジンに向かい武装ヘリコプターが次々と地面をロケット砲とチェーンガンが掃射し、遠距離から対戦車ミサイルが飛び込む。
決定打には欠けるが徐々にジンの戦闘力を削っていく。
そして更に数機の対地攻撃機が迫る。
「ウルリッヒ隊長~トサカ連中はまだ残っているみたいだ」
「妻の手料理が冷めぬ内に終わらせておきたいもんだ」
ウルリッヒ隊長は若妻の写真を一つ撫でながら操縦桿を握った。
対地上攻撃機に装備された対MS用の大型砲が唸りを上げていく。
機体の装甲の薄い部分に撃ち込まれた弾が軽々と撃ち抜いてくい。
「さて帰還だ。」
ウルリッヒ隊長の奥さんは・・年齢は15歳、そして彼の年齢は・・30歳である。

彼らは基地に戻っていく。


「終わったのか・・クソオヤジもやられちまったか」
そう思いながらコックピットを開く。
光がコックピットに差す。
いきなりボコッと頭部にいつものような一撃が加わる。

「馬鹿者がクソオヤジと言ったら殺すと言っただろうが」
「大尉、生きていやがったか!」
「ふん、機体のコックピット周りが頑丈なお陰だ。敵を倒した功績でゲンコツ一発で済ませてやる」
そういった後にカナードの頭をくしゃくしゃと撫でた。

モビルタンクは開発途上の初期の機体故に故障が多かったが、コックピット周りの頑強さでパイロットの生存率の高さは証明した。

主砲は幾つかの改良が加えられる。

モーガン大尉の部隊は戦闘データのみならず。
ニュートロンジャマーを捕獲ならびに設置を防ぐ。
そして幾つかの収穫得た。


そして大地の戦いは終わったが、同時に空の戦いはザフト軍の特務隊による強攻突破の必死の片道切符とも思える作戦により、全員がザフト軍の特殊部隊と強攻艦隊は壊滅した。

しかしニュートロンジャマーは降下し地中深くに沈んでいく。
一つであっても青い水の星は沈黙にさせるには十分であった。

そしてある程度はニュートロンジャマーの対策を真面目に行っていた大西洋連邦と違い忠告を聞かんない二ヵ国や他の地域はかなり酷い状態となった。
大西洋連邦が意図的に情報を流さなかったとの流言も出たが、大西洋は何度も各国の大使館や指導者に向けてニュートロンジャマーの危険性を説き、更には書簡を何度も送り対策を講じる様に促した事で、その流言を信じる者はあまりいなかった。

ある程度対策はしていたが苦しい状態でありながら大西洋連邦は出来る限りの支援を続けた。




[22806] 外伝~プロジェクトZ挑戦者達~&アズラエル家の危機?
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/18 07:22

初戦の敗北からザフト軍は手段を選ばない行動が増えた。

ニュートロンジャマーによる地球の核の無力化による進攻作戦~オペレーション・ウロボロス。
補助計画としてモーガン大尉らに阻止された地上での設置作戦以外にも。
オペレーション・シックス・テン・・・地上2万メートルの超高空で特殊な爆弾を爆発させオゾン層を破壊し紫外線にて地球上の生物や植物全てを死滅させる計画。

他にも、地球軌道からの秘密の人工衛星からエネルギー波を活断層に打ち込み地球の主要国に地震を起こす作戦があり。
それら計画が同時多発的に起こされた事でブルーコスモス隊はもちろん、大西洋連邦、東アジア共和国、ユーラシア連邦はもちろん。
地球の危機に限定ながら南アメリカ合衆国、オーブも後方支援の形で限定的に協力を行った。

結局地震や紫外線並びに地球への核兵器攻撃を含め、大量虐殺計画は阻止したものの。
ニュートロンジャマーによる地球での核エネルギーが不足し、通信網の一部混乱が起こる。
従来の長期通信は使えなるが。地球樹戦で経験から短距離通信をバトンリレーの様に連結使用。
長期通信から見れば約数分の時差はあるが、各国への通信は行え。
大西洋連邦国内では通信ケーブルによる光ファイバーが敷かれ。
古典的だが新技術を追うザフト軍が対策が思い付かぬモールス信号による通信も使用された。
大西洋連邦政府の対策班が被災地の調査と混乱を利用した略奪や暴行等への対策、そして被災地への復帰の為に、警察並びに部隊を被災地に派遣。

数週間で国内の混乱は収まり、原子力発電よりは劣るが新たな発電システムにより順調にエネルギーが送られ始まる。


デトロイト・いつものアズラエル財団ビル


「まさか、オーブにある人工衛星のアメノミハシラに繋ぐ軌道エレベーターの建設に資金提供やらを提供で、こんな効率の良いエネルギー供給システムがもらえるとは感謝感激雨霰です」
ほくほく顔のアズラエルは腕あるグリップの押したり引いたりで電気が起こる小型自家用発電機を動かしてから部屋のライトで書類と報告書に目を通した。
「それにしても従来の太陽光発電より電気が得られる宇宙光発電システムが、まさかオーブでも研究しているとは思いませんでした。それもこれも数年以上に渡るあの技術者のおかげです」
それはオーブからのお礼として宇宙光発電システムの送信技術をもらった事から話は始まる。



これはアズラエル財団の中にある窓際部署


発電編纂室


これは核エネルギーに代わる代用エネルギーを巡る技術達の物語りである。

周囲からは出世から外された者が場所が世界を救う事となる。

“プロジェクトZ~挑戦者達”

予算食いの削減予定部署

倉庫の隅に置かれていた書類

息詰まる開発

逆転のトライ


CE50年頃
原子力発電システムに代わるエネルギー開発研究が一人の男の手でなされていた。
“宇宙にソーラーパネルを設置し、エネルギーの供給を行うべきです”

しかし周囲の反応は冷ややかだった。
“原子力発電システムで十分に電力供給が可能である”
“今更ソーラーパネルや風力発電では僅か電気しか集まらない”

この時、原子力発電は国内全体の電力発電の30~40パーセントを占めていた。
そして地熱や太陽光発電システム等が残りを占めていたが、今だに効率の良いエネルギー供給システムではなかった。


男は周囲の冷ややかさに愕然としながらも原子力発電に代わる新たなエネルギー確保に奔走し続ける。
だがある日に上司より呼び出される。
“君は従来の原子力発電システムに代わるエネルギーを模索しているみたいだが、やるならば別の部署に回ってもらう”
突然の人事異動が成された。
男はこの時31歳・・。

鞄一つで家族より単身赴任で訪れた先は発電編纂室

それは窓際部署と呼ばれ、問題のある社員が左遷される所であった。

それでも男の熱心さは変わらず研究は続ける。

研究をやるには十分過ぎる情報がここには眠っていた。



CE57年
あれから数年の年月が流れ、男の歳は37歳となる。
定年した前局長に代わり、編纂室局長となるもがやる事は変わらない。
通常業務と研究である。

しかし新たな糸口は見つからず男は少々諦め始めていた。

だがある日、編纂室の倉庫に眠る埃を被った一つの資料を発見する。

1968年・・核戦争前の時代、国の名前がまだアメリカだった頃、ピーター・グレイザー博士により初めて提唱された。
宇宙太陽光発電システムである。

一時期は研究がある程度まで行われたが、核戦争により歴史の片隅に追いやられた。

次々と男は編纂室から宇宙光太陽光発電システムの資料を取り出した。

“これはいける!”

当時2000年代までの研究の蓄積に新たに今の技術を加えれば実用はけして難しくはなかった。

しかし原子力発電至上主義の多い大西洋連邦では受け入れ難い。

しかしそれでも道筋を探していた男には十分であった。


そしてCE66年
風向きが変わり始めた。
原子力発電のみばかりを重視していた発電研究の部署に一人の若い理事が現れた。
“原子力発電ばかりではなく、市場開発の為に新たなエネルギー開発を急ぐように”
その言葉で男は首を覚悟で理事に面談を頼んだ。
数十年かけた発電研究と宇宙太陽光発電システムの実用性とこれから伸びる未開拓の分野である事を熱心に説得した。

数週間後

“面白い研究です。予算を出しますので目鼻を付けてからまた私に見せて下さい”
そこそこの額の研究費用が理事より送られてきた。

渡された費用や自身の研究費として給料より貯めていたお金も全て投げ売り必死になって研究を続けた。
数年後

宇宙光発電システムが宇宙に上がる事となる。

しかしエネルギー供給量は高くても蓄積したエネルギーを地上に送るも、予定のエネルギー変換がうまくいかない。

男は悩んだ。

“従来の太陽光発電システム以上の発電量ですね。このまま研究を続けて下さい”

追加予算と正式な研究班の班長となるがエネルギー変換の供給量は今だに解決していなかった。

そんな時である。

オーブとの共同で宇宙エレベーター建設が行われ、建設に必要な電力が男の研究していた宇宙太陽光発電システムから供給された。

建設に必要なエネルギーが余るほど集まり。

僅か数年で細々と建設していた軌道エレベーターが完成したのである。

この時、エネルギー変換技術をオーブの技師から教えられた。
それは建設協力のお礼であった。



CE70年

男の造りあげた宇宙光発電システムも今ではニュートロンジャマーにより原子力の使えない大西洋連邦の主要な発電方法となる。

宇宙太陽光発電システムは今日も地球を照らしている。




アズラエル家の危機?





ニュートロンジャマーの降下により混乱状態である国内も事前の対策と宇宙太陽光発電システムらの電力供給によりある程度は収束していた。

だがこの混乱状態を利用し、目的を果たそうとする者も確かにいた。


そうターゲットは彼らにとっては敵であり、戦争を操る死の商人であるムルタ・アズラエルである。

いきなりアズラエル宅に数人の武装した民兵が踏み込んできたのはちょうど夕飯前であった。
警報装置や警備は仕事の関係として小国の領事館レベルくらいはあった。
しかし入口と裏口の数年の兵役経験した数人の警備員を配置していたが、携帯していた拳銃やサブマシンガンを発砲する間もなく音もなく始末され。警報装置は無力化された。

ふと空気が何かが変わる感じを察したのはアズラエル婦人と家政婦だけだったが、
手を止めずに料理と食卓に並べる皿を子供ら置いていたが、
いきなり無数の銃口がアズラエル家の人々に向けられた。
「悪いが、貴様らは人質にさせてもらう」

そうリーダーらしき男が叫んだ。
しかし婦人も子供らも家政婦も極々冷静に持っていた皿をゆっくりとテーブルに並べてから子供らを椅子に座らせた。

静かに燃える様な瞳が武装した民兵達を見据えた。
「どなたの差し金かはわかりませんが私達は人質にするみたいね・・エレノア」

「はい、マリーネ様」
そう言って二人は武装した民兵を見据えた。
「家庭を守る主婦とメイドを相手にして勝てるとおおもい?ボーイスカウトさん」


同時刻

防弾の使用の車で運転手付きで帰る途中である。

いきなりビルの谷間から一発の煙りと弾頭が飛び込む。
「アズラエル様、RPGです」
そう言いながら運転手はハンドルを切りながら飛び交うロケットランチャーを避けたが、いきなり目の前の道が爆発し、車が止まった。


そして車の前にはいかにもと言った傭兵クズレみたいな奴らが立っていた。
「やれやれまたですか、理事もラブコールが多くて大変ですね」
運転手は軽くぼやいた。
「仕方ないですよ。ライバルが多いですからどんな聖人でも敵は沢山いるもんです」

「わかりました。私が運動がてら相手をしてきます」
「いいけどマリーネの料理が冷めない内に頼むよ」
明らかに素手に見える一人の男が運転席から下りてきた。
「幾らで雇われたか知らないが、うちのボスはそっちの雇い主の倍は払うから、今日は帰ってもらえないかな?」

それを聞いた傭兵クズレ達は笑い出した。
「おい、聞いたか?倍払うだとよ」
「今更命ごいは受け付ける訳無いだろう?」


「そうか・・ならば仕方ない」
そうゆうと運転手の背後から妙なオーラが出てきた。
「貴様らはそこで死ね」
そういいながら運転手はいきなり数メートルも飛び上がった。
「撃て撃て!」
傭兵クズレ達が雑多な武器を構えて撃ち出したが拳銃は一発も運転手に命中していない。

「どうした?それで終わりか?ならばやはり貴様は死ねしかない」
いつまにか傭兵クズレの一人の背後に周り込んでいた。
ヒュンヒュンと風を切る音と共に傭兵クズレの肉体は運転手の手で細切れにされた。
「千手殺斬・・貴様は怯えながら藁のように死んでいくのだ。」
「これでも喰らえ化け物!」
ロケットランチャーを構えた一人傭兵クズレが弾頭を運転手に向けて撃ち出した。
しかし弾頭は撃ち出した瞬間に傭兵クズレの目の前で突然何かに切断され爆発した。
「真空斬・・我が拳法の幾つかの飛び道具だ」

鎧袖一触・・まさにこの運転手の1人に15人の遺体が出来上がった。

腕と顔をハンカチで拭きながら運転手は肩を鳴らした。
「準備運動にもなりませんでしたよ」
「お前が強過ぎるだけだ、チェカ」

車から降りたアズラエルだったが、いきなり側にいたチェカの拳が唸り。
ビルの屋上にいた狙撃手が頭を輪切りにされて地面に落ちた。
「理事、危ないですよ」
「すまんすまん」

腰をぬかしたリーダーの一人に理事は細切れの遺体から拳銃を拾って額に押し付けた。
「雇い主の名前を教えて下さい。祈る時間は与えます」
「ヒィィまだ死にたくない」
「そうですか、では」
カチッと引き金が引かれたが弾は出なかった。
「弾切れですよって、ショック死ですか」
傭兵クズレのリーダーは恐怖のあまりにショック死していた。



アズラエル家

子供らが座っていたテーブルの下のシャッターを開くと慣れた手つきで地下に降りていった。
「マリーネ様、子供達の逃げる時間は稼げましたね」
「そうね。エレノア・・」
パサッとメイドは黒いスカートを払うといきなり銃器を取り出していた。
「全ての不義に鉄槌を与える」
ショッガンの銃弾が民兵に撃ち込まれた。
そしてマリーネ・アズラエル婦人もいつまにか軽機関銃を構えていた。
「天使を呼んであげます」
ダダダと軽機関銃が油断していた民兵を蜂の巣にする。
数人は物影に隠れる。
「野郎死ねーつ!」
数発の手溜弾が投げ込まれたが、エレノアは側にあった掃除用のモップで打ち返し、物影にいた民兵は驚愕の表情のままで爆死していく。
だが撃ち合いを続けていた二人は即座に家より飛び出した。
そう数発のロケットランチャーが台所に撃ち込まれる姿が見えたからである。

「クソ尼共を殺せ!殺すんだ!」
ロケットランチャーの砲撃後に一斉射撃が建物に加えられ、辺りが銃の煙りが立ち上るほど撃ち続けた。

いきなり赤い閃光が民兵の喉をかっ斬り、もう一人は眉目にボウガンが突き刺さる。
そして数本の煙幕弾と催涙弾が民兵達の足元に転がってきた。
「奴らだ!クソ野郎はどこに?」
周囲を見回していた民兵のリーダーに冷たいナイフの感触を感じて驚愕した。
「これで終わり」
抑制した声と黒いメイド姿をした悪魔がリーダーの見た最後の光景である。



「ただいま皆~」
「あら、ムルタさんお帰りなさい」
マリーネとムルタのあつい抱擁に運転手のチェカはやれやれと言った感じに苦笑いを浮かべた。
蜂の巣にされた自宅は既に直され、遺体も片付けられ。
完全武装の警備兵が数名左右を警戒していた。

結局雇い主はどちらも分からずである。



[22806] 大洋州戦線編~決戦前夜
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/11/21 10:22

地球進攻への対処の為に、海岸地域では水上艦艇や警戒機が海と空に目を光らせ。
陸軍は塹壕掘りと陣地構築に部隊編成に明け暮れた。

暗号電文解読とプラント近辺に潜伏中の偵察部隊。
そしてスパイとして送られた工作員からも同様に大洋州連邦への進攻計画に裏付けがとれた。
大洋州連邦カーペンタリア湾
オーストラリアの北に位置し、西にはアーネムランド。
東はヨーク岬半島に挟まれ。
北側はアラフラ海に繋がっている。
広く浅い湾であり、湾内には西部にグルートアイランド島等の島があり。
大洋州連邦の所有する最大の軍港である。

しかしニュートロンジャマーにより原子力を動力とした艦艇の5割が使用不可能となる(航行不可能だが、武器は使用可能な為に留められトーチカや対空砲の代用としている)

残りの半分は原子力を積まない旧型艦艇、そして大西洋連邦より譲渡された代用エネルギーを積んだ試作艦が数隻、湾内やオーストラリアの海域の警戒にあたっていた。


ファントムペイン隊の地球にある部隊もまた、密約で大洋州連邦から譲渡された小さな無人島を新型の潜水艦の母港の一つにし、日々大洋州付近の周囲警戒の哨戒に参加していた。

ニュートロンジャマー投下後、大洋州連邦は大西洋連邦、東アジア、ユーラシア連邦との三国との軍事同盟を締結。
プラントに宣戦布告した為に、東アジア共和国海軍、ユーラシア海軍、大西洋連邦海軍の警備艦隊が派遣され。
更に大西洋連邦は大洋州に派遣軍を出している。


大西洋連邦軍特別派遣教導技術部


「クソ大尉、どうやら俺達は島流しっすね」
「お前がモビルタンクをスクラップにしちまったからだ、このボケ!」
ゴンと一発、カナードの頭にゲンコツが入る。
「クソ、痛い」

ユーラシア連邦から大西洋連邦の技術交換の士官とした派遣されたカナード准尉とモーガン大尉はここでもまた技術部隊のテストパイロットとなっていた。

つまりはモビルタンクをスクラップにしたら、カナードは准尉から少尉となるが基地では、毎日毎日ライフルや砲弾磨き。
モーガンはデスクでタイプライターを打つデスクワークに干される。
つまりは懲罰又は閑職にまわされたのである。

この件がフレデリック少佐の耳に入り、報告を聞いたアズラエルの押しで交換士官として引き抜き、自分の息のかかった技術部隊に入れたのである。

例のモビルタンクはユーラシア軍内や同盟国にデータが送られ、大西洋連邦軍では砲と車体の改良がなされた試作改良B型は試験移動と試験砲撃では前回の砲の熱により空薬莢が絡まる率は極めて低くなった。


輸送用の潜水艦より運び込まれたのは、改良したモビルタンクだけでなく。
外装に違うが、足回りや間接部がザフト軍の使用する第一線のジンと同じ人型が運ばれていた。
人型よりパイロットが降り立ち、二人は軽くパイロットに敬礼した。
「あんたは?」
「ジャン・キャリー技術少尉です。」
「そうか、俺達は技術部付きの対MS戦車のテストパイロットのモーガン・シュバリエ大尉。そしてそこにいる野生児はカナード少尉だ」
「野生児は余計だ!クソ大尉!」
「ハハハ、まあ仲良くとゆうのは恥ずかしいが、互いの義務を果たすだけだ。それより今日来た人型はまさか」
「はい、そのまさかです。機体はまだまだ調整は完全ではないですが、我が軍初めてのMSです。残念ながら、この機体は開発中のOSを全将兵が操るには癖が強く。私のようなコーディか、特技兵のみしか乗れません」
少々落ち込み気味なジャン・キャリー少尉にモーガン大尉はポンと肩を叩いた。
「そうか、だがなジャン・キャリー少尉・・MSが揃わん限りはザフトと同じ土俵には上がれんよ。数機でもあれば現場としてはありがたい。それにあんたは気にしているが、俺やこの野生児にこの隊では、白豚、ユダ豚黒豚、そして天然豚だの遺伝子改良型の豚も全て平等だ。ジャン少尉はやれる事を頑張ってやれ!!」
そういってジャン・キャリー少尉に勇気づけた。



[22806] 大洋州連邦戦線~密約
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/12/01 19:56
開戦前夜

大洋州連邦首都キャンベラ

大洋州連邦チャールズトン・コルトーニ大統領、大洋州連邦三軍統括議長レウラ元帥は官邸にて一人の男と密談を重ねていた。

「地球側との同盟を破棄し、プラントとの同盟を組む?こちらとしてはありがたいお話ですが・・今更同盟を組むとしても時期が遅いのではないでしょうかな?」
「いえ、密使殿。我が国が結んだ同盟は半ば強制で行われた。」
「大統領閣下、ならば我々の要求に応じられれば同盟は可能です」
「ありがとうございます。デュランダル外務次官殿」
「全てはプラント独立の為、そして大洋州連邦の為です」
「軍が反発せぬように陸海軍の各将官らの根回しを頼みましたよ、レウラ元帥」
互いにブランデーを片手に密談がなされる。

軍部と国民はやる気満々だったが、政府首脳陣はかなりおよび腰となり。
プラント側と密談を巡らせていた。

当初より同盟の対価として、大西洋連邦からの技術協力と物資提供は行われていた。
だが大洋州連邦としては、完全に満足出来るわけでなく、影ではプラント側の進んだ技術協力の方を強く欲していた。

極秘の会合であったが、極々一部の人間の耳には入っていた・・。
男の名はリショット補佐官。
補佐の前に元がつく。
有能な部下を小悪党の大統領には扱いきれず。
開戦前に大統領よりクビにされた。
しかし本人は念願の隠棲を楽しんでいたが、彼の耳と目は極々普通だが情報収集能力は非常に高く。
そして友人が多かった。

そして復職を求める声やスカウトの声もまた多かった。

数ヶ月後のある大洋州のキャンベラ郊外

鍬で畑を耕していた麦藁の青年の前に一台の車が止まった。
「なんだいあんたは?」

「リショット大統領次席補佐官、いや元と言うべきかな?」

「そうだがアンタは確か・・オーブのサハク氏の手の者だったな、サハク氏とは一年半前の事務レベルの会合以来でお会いした以来だ」

「あの時はどうもと主人から言伝です」

「そうか用件は何かな?まあ畑の前では貴方の綺麗な靴が汚れちまう。そこにある家で話でもどうかな?」


リショット宅

自宅の縁側に座らせると、お茶を手渡した。
「どうも畑には合わない土地が多いが、開墾したここは当たりだったようで野菜がそこそこ採れるんで食うには困らない」

「ほう・・リショット殿には農家の才能もあるようだ。だが農家としての才能とは別にある才能を生かすつもりはないか?主人は貴方の力を高く評価しています。それしてもこれは美味い・・」
お茶受けの漬物をポリポリと代理人は珍しいげに食べていた。
「それは大根さ。東アジアに行った時に食べて以来、こっちの大地に合わせて品種改良を加えた。政治より農家やっている方がマシだ。政治家は食い物作れないし」
「確かにそうだな。しかし貴様の腕前はもったいない・・もし気が変われば連絡して下さい」
「いやはや、本当に遠路遥々ご苦労様です。」


代理人の帰宅後、もらった手紙をファイルに入れると。
置いてきた鍬を担ぎ直してから畑に戻った。

「アスハ代表、サハク氏、それにクライン氏、そしてユーラシア連邦のウラジミール氏か・・俺みたいな世捨て人に何でこうもラブコールが来るんだか」
三時間ほど、鍬で畑を耕していた男は木陰に座り込むと持っていた水筒の水を飲みながら休んだ。
するとまた2人の男が訪ねてきた。
いつもの小綺麗な制服と靴、そして高い高級車に乗った代理人ではなかった。

くたびれた軽トラに乗った二人組である。
一人は青いヨレヨレの作業服に軍刀とベルトに拳銃を挟めた男。
そしてもう一人は麦藁を被り灰色の作業服を着た金髪の青年である。
「青年団にしては作業服が似合わないな」
「紹介遅れましたが、私は起業家のムルタ・アズラエル」
「護衛兼補佐のフレデリック・・大西洋連邦の少佐です」
「起業家や現役の軍人にしては作業服似合う、軍や企業を辞めたら農家をやらんか?」
「まあ考えておきますかな。実は私は貴方にどうか私の手伝いをしてくれないかな?」
「回りくどい言い回しがないだけ、アンタは確かに起業家だ。しかし今は畑を耕すのに忙しいから帰ってくれないか?」
「そうか・・まあ暇な時にまた来ます」
そう言ってアズラエル達は引き上げた。

リショットの住んでいる場所は田舎ではあるが、首都近郊でもあり情報はかなり集まった。
ムルタ・アズラエルとアズラエル財団、そして大西洋連邦との限定的な軍事同盟締結にはムルタ・アズラエルが関わっている事。
それ以来前以上にムルタ・アズラエルに興味が増した。

だがあえて二度目の勧誘も断った。
そうアズラエルがどう出るかを計る為に、そして地球樹でザフト軍が敗北した頃にアズラエルは別の男と共にやって来た。

「お待ちしていました。」

「どうしても、リショットさんの力が借りたくてやって来ました。」

「そうですか・・私の腕を欲するのは、アズラエル財団の理事としてですか?それともロゴスの幹部としてですかな?」
アズラエル自身はポーカーフェースを装うも、護衛のチェカは少々動揺が顔に出た。
「両方ですが、どちらかと言えば個人的に貴方の力をお借りしたい」
「・・この戦争の先を考えての事でしょうかな?」
「リショットさんは中々良い推察です」
ジブリールはプラントを殲滅と考えていたが、アズラエルはプラントの高い技術と工業力で作られた工業製品をこれからも地球にプラントの極度な負担にならぬ程度に輸出するのであれば、プラント独立は認める用意はある。
しかしプラント側は地球側のお膳立ての独立は欲してはいなかった。

“ナチュラルを駆逐しろ!新人類が旧人類を駆逐するだ!”と言う流れが互いの握手する手を払い落としていた。

「私は戦争が嫌いでしてね。武器産業も一応関わっている死の商人が言うのも矛盾しているかも知れないが、戦争を始めて先に死ぬのはいつも若者だけだ。そして私にも腕っ節の強い美人の妻や義理の可愛い子供がいる・・同じ様な家庭を持つ人達の生活をぶっこわしたくないのが本音です」
アズラエルは家族の写真を手渡しながら腹の内にある考えをリショットに全て打ち明けた。
「どうも、理事殿は余程の正直者か詭弁家はわかりませんが、中々面白い考えの持ち主です。わかりました・・微力ながら私の力をお貸しいたします。」
「そうですか。こちらこそありがとうございます」
「一つお約束があります、戦争が終われば私はまた農家に戻りますので、大西洋連邦の西側と温暖な土地を少々もらえますかな?」
「お安いご要望です。」
アズラエルはその要望以外にも、ある程度の賃金を約束した。
「給与までもらえるとはありがたい」
「戦争終結後に農家をやる時の種モミ代の足しにして下さい」
リショット・リシェット(日本名ならば田中・中田さん的な名前)という参謀を得る事となる。
差し当たり大洋州連邦での動向を聞いたアズラエルはリショットの言葉に驚く事となる。

“一部高官と首脳が結託してプラントとの同盟を結ぶ”


「やはり早い内に行動すべきか・・リショットさんにも協力をお願いいたします。」
アズラエルは裏付けを急いだ。


その頃

地球樹基地に駐屯のハルバートン提督が指揮する第8艦隊が出撃。
月面にて編成したばかりの第3艦隊と合流。
そしてアルテミス基地より訓練地区に向かう欺瞞航路を取りながら、ガルシア少将の指揮するユーラシア連邦の艦隊も加わる事となる。
東アジア軍の宇宙艦隊は自国の資源衛星の新星基地の警備と一個艦隊が抜けた穴を埋めるべく、月方面と地球樹基地にそれぞれ半個艦隊づつ増援を派遣され警戒に当る。

大洋州連邦上空


ハルバートン提督とガルシア提督は同じアズラエル派の事でもり、協調して事に当たっていた。
会議はユーラシア連邦側の提案で大西洋連邦から譲渡された新型艦の中で行われた。


「ハルバートン少将、地球樹以来ですな」
会議室にきた二人は深々と握手を交わした。

「こちらこそ、地球樹ではこちらのウチゲバで艦隊が出せんで申し訳なかった。」
「いえいえ、おかげさんで昇進と新しい艦がもらえたんだ。よしとしましょう」
「それより、ガルシア提督、あれは何かな?」
「我が艦隊が曳航してきた筒の事ですか。あれは艦艇搭載用に試作した長距離砲撃用のビーム砲です。欠陥はデカイのと通常の主砲と比べたら連射出来ない事です。長距離砲撃で連中の艦をビビらせるには十分だ。それともう一つはデブリ帯から拝借した隕石や我が軍が廃艦予定の艦艇です。秘密兵器ですな」
「ほう~実は我が方にも秘密兵器がある。ジンのコピー機だが数機のMSを配備しておる」
「それは心強い」
綺麗に並ぶ大西洋連邦艦隊とガチャガチャと様々な物を運ぶユーラシア連邦艦隊は実に対称的であった。
それから両提督の数十分に渡る作戦会議の後、艦隊はタイミングを計りながら敵艦隊に向かっていた。
奇将のガルシア、良将ハルバートンの戦いが始まる。



ザフト軍艦隊は降下部隊は前方に地球、後方に味方護衛部隊で守られつつあった。
地球上空より時より数発の迎撃ミサイルが飛び込むも全て護衛部隊員のラウル・クルーゼが迎撃に成功している。
しかしクルーゼはあまり内心あまり嬉しくはなかった。
本当は地球樹で成果を上げる。
勲章。
国防委員長に取り入り自分の隊の創設。
更に功績を上げる。
悪知恵で世界を混乱させる。
世界オワタ。
目的達成と考えていたが、地球樹ではバルトフェルト隊の活躍で功績を上げられず。
第二線の部隊に回されるも、何とか功績を上げるべく。
どんな任務でも行った。
商船の護衛任務
宇宙に散布された機雷の撤去
ゲリラ討伐
月基地やアルテミスへの威力偵察
情報将校の運転手
新式のライフルの試験官等などで地道にコツコツと頑張った事で何とか一線部隊に戻された。

“絶対功名を上げてやる!!”
燃えるクルーゼだった。



ハルバートン提督の指示の元で、メビウス改の隊は大西洋連邦艦隊から出撃を開始する。

ガルシアも設置した使い捨てのビーム砲とジェネレーター用の旧式艦艇の調整等を行いつつ時を待った。

隠し玉の一つであるMS隊もまた息を潜めていた。
「・・・」
静かにMSのコックピット内でスウェン・カル・バヤン准尉は腕を組みながら時を待っていた。
いきなり通信が開いた。
「ようスウェンの坊主、気分はどうだ?」
「・・血圧、脈拍共に問題はないです。大尉」
「やれやれ、スウェンの坊主はMSの操縦技術はあってもボキャブラリーのセンスはないみたいだな」
「戦闘にボキャブラリーは関係ないです大尉」
「フラガ、あまり若い奴をからかわないようにな。すまんな准尉、フラガは騒がしい奴なもんでね」
「若い奴ってお前さ、俺もお前もまだ20代だ」
「サバ読みだ。20代は20代でも20代後半だろう」
「可愛くないなお前は」
「えー、にくったらしい奴の友人だから性格もにくったらしいなりましたよ」

「いえ気にしておりません中尉に大尉」
「スマンスマン、スウェンの坊主」
「これがいつもの挨拶みたいなもんだから」
フラガの相棒のエルンスト中尉の掛け合い漫才みたいな会話はスウェンにはやや苦手であった。


スウェン・カル・バヤン准尉はMS適性と操縦技術は高く、特技兵としてナチュラル用に調整したばかりのOSを組み込んだ先行試作MSのレイシキのパイロットとなった。
今回はスウェンらMS隊は多数の質量弾の中にあるコンテナ船舶に隠れたMA隊と共に敵艦隊中心を強襲する。

そしてマツカタ中尉のメビウス改の雷撃隊は地球を半周して降下部隊の前方を襲う。

艦隊は強襲部隊とマツカタ中尉の雷撃隊の援護の為に長距離からの集中砲撃で敵の目を向ける囮となった。

正面から来る敵MS隊にはハルバートン提督が指揮をとる対MS艦艇と直衛のメビウス隊が硬い守りを構築する。

それでも攻め込まれたら被害はけしてゼロではない・・。




[22806] 大洋州連邦戦線・・勝利と敗北
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/12/02 01:41

ザフト軍進軍部隊が上空に展開中の頃

大洋州連邦首都キャンベラ
国防本部特別会議

数名の将官と佐官に文官、そしてアズラエルが同席していた。

数ヶ月前より、大洋州の陸軍は適した降下地点に向いた地区に工兵隊を派遣し、多量の対戦車地雷を連結し敷き詰めたが、大西洋連邦、東アジア軍、ユーラシア連邦の三国が急ぎかき集めた地雷を提供し、大洋州に次いで派遣した規模の大きい大西洋連邦軍は工兵隊を動かしたが、それでも予定を大幅にオーバーしていた。

原因は他にも三軍統括議長のレウラ元帥とチャールストン大統領の難癖により予定の三割程度の防衛拠点しか仕上がってはいなかった。
しかも両者共に会議には現れず、代わりに東部方面軍司令官ローディング大将とアイランズ副大統領が会議に出席していた。

「防衛拠点と陣地構築は約40%程です」
一人の将官より渡された資料を見たアズラエルはやや顔がきつくなった。
「まだまだこれでは間に合わないです。」
「我が大洋州の将兵は疲労の限界です」
「では将兵に二つ選ばせますか?疲れてクタクタになるのと戦死とどちらがいいか」
「アズラエル理事、しかし・・」
アイランズ副大統領が言葉に詰まった瞬間、いきなり会議室の扉が開き自動小銃や軽機関銃を構えた軍服姿の軍人らが現れると。
会議室内にいた一人の佐官がアズラエルに向けて拳銃を向けた。
「大西洋連邦のアズラエル理事。アイランズ副大統領。ローディング大将・・大統領の命により身柄を拘束させてもらう」

「大佐、君は一体?」
「大佐だと?俺は今日から大洋州連邦の少将だ!この老いぼれ奴が!」
突入してきた軍人らがいきなり着ていた軍服を脱ぎ捨てると全員がザフト軍の軍人であった。
「ここは大洋州連邦の同盟国プラントの指揮下となる。しかしまさか目標の三人がちょうど揃うとは何と運が良いんだ」

「ふっ、大統領の尻尾を振る狗・・ちょうどよかった?この程度の子供騙しの裏切りや謀略でいい気になるな!ビジネスの世界ではこの程度の事は日常茶飯事なんだよガキ共!」
「何だと、このくそ野郎」
そう怒りの叫び声を上げた佐官は銃をアズラエルに向けたがいきなりオデコにどこからかゴム弾が撃ち込まれる。

いきなりザフト兵らの前に熊のみたいな着ぐるみの上にバックパックや戦闘用のチョッキを着てショットガンや武装を構えてながら現れた。
「なっ、何なんだ?」
「着ぐるみだと!ナチュラル共が俺達をナメているのか?」
ザフト兵達はかなり意外過ぎる敵に驚きつつ手にしていた銃を着ぐるみ集団に撃ち込んだ。

“たかだか、ナチュラルに完全武装したコーディネーターの兵士が負けるかよ!!”
と固定概念があった為にすぐに身体が動いたものの。
軽機関銃やアサルトライフルの銃弾は着ぐるみの相手に弾は命中している。
しかし当たった弾は全て弾頭がハンマーで潰したようにぺしゃんこになり落ちていく。
「手榴弾だ!手榴弾を投げろ!」
人質達に構わず戦闘用のベスト着用の兵士が2~3人は吹き飛ぶ量の手榴弾を投げつけた。

だが煙りの中より突然ゴム弾が次々と兵士達を仕留めていく。
「爆発の黒煙の中でどうやって我々をみつけ・・」
驚愕の顔のザフト兵は目の前に飛び込んできたゴム弾に意識を飛ばされた。


「大丈夫ですかな?アズラエルさん」
リショットが謎の武装集団の後ろから現れた。
「クマククママ」(敵の撃破を確認だ、ローチ)
「クマクマクマクマ~フ」
(以後アズラエル理事と首脳陣の護衛任務にうつる)
「クマママクマ~クマ」(捕虜の武装解除)
ローチ、マグダビィシュ、ゴースト達はロドニアでの救出作戦後、工作員による水面下での破壊工作を防ぎ。
そして今日は見た目が可愛いが高性能のパワードスーツを着用してアズラエル達の救出にやってきた。

「アズラエル君、そのクマの着ぐるみの連中に?何故リショット補佐官が何故ここに?」
アズラエルは苦々しい顔で口を開いた。
「クマの着ぐるみ集団は私の私兵です。彼がここにいるのは彼自身よりお聞き下さい」

「副大統領閣下、方面軍司令官、大統領と三軍統括の元帥の二人が議会の承認なしに独断でプラントとの軍事同盟及び、プラント交戦国への宣戦布告を行うべく、ここを含め政府の中枢に部隊を動かしています・・」
それを聞いた将官らが驚愕の表情を浮かべる周囲と違い、副大統領はずんと肩を落としていた。
「ワシはチャールズトンとレウラの二人の事は私の手の者からは聞いていたが、抑える前に奴が動くとはな。」
「副大統領・・どうしますかな?このまま連中に手を上げて大洋州をあの二人を国民や将兵共々売り渡しますか?」
「捨てるだと?チャールストンの馬鹿と違ってそこまで人間を止めていない!!」
先程までしょげていた初老の男とは思えない顔で一気に燃えがるような瞳で全員を見据えた。
シドニーある防衛拠点の掌握の為に会議室を後にした。

大洋州は予備役と現役を含めて数万人の将兵、そして大西洋連邦派遣軍は海軍と陸軍だけで数千人、ユーラシア連邦と東アジア軍で海軍だけで約数百人である。

首都キャンベラは大統領直属の決起部隊が幾つかの要所を制圧し副大統領派を捕縛するが。
東アジア派遣軍、ユーラシア連邦派遣軍の両司令部は武装した海軍陸戦抵抗により制圧が断念された。
だがカーペンタリアの軍港は大統領派により制圧され降下したザフト軍が同地に着陸している。
そしてシドニーにある国防本部にも決起部隊が現れるが、何故かクマスーツを着た大西洋連邦の特殊部隊により逆に武装解除されてしまう。
“クマ?何でクマが”
ゴム弾で痣だらけの頭や身体をこさえたザフト兵ら両手に手錠をかけられながら、銃器を構えたクマスーツの兵士達により捕虜にされた。

武装ヘリに護衛を受けた副大統領の乗るヘリは着陸地より国防本部に降り立つ。


一部情報ではキャンベラとシドニーの一部にザフト軍の部隊が降下し、東アジア軍やユーラシア連邦ら派遣軍と交戦状態となる。
しかし大洋州連邦軍は一部駐屯地の部隊が防戦に当たるのみで軍の大半は遊兵に変わっていた。
三軍統括と大統領が迎撃命令を出さずに沈黙している証明である。

副大統領は大洋州連邦全軍と国民に向けてありとあらゆる通信手段を送り声明発表した。

「大統領による逆クーデターが発生している。大統領と三軍統括の元帥は国民の命と財産をザフト軍に売り渡した。だがワシは国民は売らぬ。ザフト軍と最後まで戦い抵抗する。ワシはここに南大洋州連邦を宣言する」

その発表後、大洋州連邦軍は幾つかに分散する事となる。
南大洋州連邦に東アジア、ユーラシア連邦、大西洋連邦が承認。
オーブと南アメリカ合衆国も数分後に国家としての承認が行われると。
大統領派は首都キャンベラを出て、カーペンタリア方面に集結。
南大洋州連邦に合流する部隊はザフト軍より逃げる難民と共にシドニーに集結。
首都キャンベラにはアズラエルが手配していた大西洋連邦の輸送船だけでなく。
オーブや南アメリカ合衆国より派遣された艦艇や輸送機が逃げる難民の移送に携わった。

これらオーブや南アメリカ合衆国の行動は無償の物ではなく、幾つかの話し合いと条件により成功した事である。

中立を侵す行為とオーブや南アメリカ合衆国に数回に渡る抗議が行われるまで行われた。


南大洋州連邦は比較的付近に防衛拠点構築の出来たメルボルンに首都を変えた。
首班はアイランズ副大統領が行い。
軍の総司令官はローディング大将。
リショットは大統領補佐官に就任する事なる。

逆クーデターが完全に防げないと考えたアズラエルの策は成功する事となる。
しかし東アジア軍とユーラシア連邦軍はカーペンタリア軍港の制圧による補給の困難さから海軍基地をパプアニューギニアのあるポートモレスビーに移す。
大西洋連邦は東南にあるニューギニアの軍港に戦力を増強し大西洋連邦駐屯部隊と南大洋州連邦軍の補給の中間拠点を置くこととなる。


ザフトは大洋州連邦降下作戦は辛うじて目標となるカーペンタリア基地の制圧とオーストラリア北部を手中に納めたが。
大西洋連邦艦隊とユーラシア連邦艦隊の巧妙な別々からの攻撃により降下部隊と防衛艦隊にすくならず被害を受けた為に、大規模な攻勢をかける力がかなり削がれる結果となる。
しかし防衛部隊の奮戦で辛うじて制圧作戦が可能な戦力の降下には成功する。
ザフト軍としては南大洋州連邦は同盟国の大洋州連邦(北大洋州連邦)に任せ。
カーペンタリア基地の構築と補給を行った。

宇宙

大西洋連邦艦隊とユーラシア連邦艦隊は隕石攻撃とMA隊による奇襲作戦で敵の艦隊に被害を与えたが、ザフト軍の降下部隊の防衛部隊に着いていたアンドリュー・バルトフェルト隊とラウル・クルーゼらの奮戦によりユーラシア連邦艦隊と大西洋連邦艦隊の両旗艦の近くまで肉薄する事に成功する。


アズラエルはこの戦い以後、三将軍の押しと、大洋州連邦への進攻を許した為に、大きく糾弾される事となる。

「私は必ず帰ってくる・・」
そう言い残しアズラエルは大西洋連邦に帰っていった。

ロゴスの会議に呼ばれたアズラエルの前には失脚したはずのジブリールが立っていた。

「アズラエル、貴様の手緩いやり方がここまでの結果となったのだ!」
「結果が全てのビジネスとしては仕方ないです。今回は私は引きましょう」
(ジブリールよ、貴様にジャジャ馬みたいな地球のたずなが取れるかな?)

CE70年
ロゴスの決定により戦争指導はアズラエルからジブリールに変わる事となる。




[22806] 特命佐官フレデリック
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/12/04 22:32

CE70
南大洋州連邦創設から数ヶ月

デトロイト

二人の暇な大人が昼間からブランデー入りの紅茶を啜りながら、チェスをしていた。
「俺達もついにマダオだな」
「マダオはお前だけだぞ。フレデリック少佐」
「アズラエル、お前も今じゃあ、ロゴスの末席だろうに」
「それより軍の様子はどうだ?」
「ユーラシア連邦がボコボコにやられてウラル山脈の要塞で奮戦中。アフリカもビクトリア基地が陥落。マスドライバーの使えんのはメルボルン基地と南アメリカ合衆国のパナマと我々のアラスカ基地くらいだ。グリーンランドに建設中の拠点は今回の戦いには間に合わない」
「レイシキとモビルタンクが南大洋州連邦は活躍している。しかしレイシキやモビルタンクではそろそろ心細い」

ジャン・キャリー少尉、モーガン大尉、カナード准尉らファントムペインの技術試験隊はデータ収拾も兼ねて南大洋州で北大洋州連邦軍やザフト軍の散発的な攻勢を防いだ。
ザウートやジンならば改修したモビルタンクならば勝てるが。新型のバグゥにはレイシキと連係して辛うじて勝ってはいるが被害が多い。
「そうだな、宇宙ではジブリールがヤキン要塞に奇襲とか言って東アジア軍やユーラシア連邦軍とかの警備艦隊をかき集めた混成の二個艦隊で奇襲とかして壊滅」

宇宙のファントムペイン隊はザフト軍の輸送船や定期シャトル狩りの通商破壊任務で補給ラインの切り崩しを行うも効果が出るまでは時間を要した。
一ヶ月前の大洋州連邦降下阻止に失敗したハルバートンの第8艦隊は新兵を加えて、月にて哨戒任務と訓練の毎日。
ユーラシア連邦のガルシア少将はアルテス基地司令官にされた。
「フレデリック、悪いがこれからオーブに行ってもらえるかな?」
「唐突にどうした?」
「反攻作戦だよ、地球とこの私の反攻作戦さ・・数ヶ月前に蒔いた芽が出てきている。非公式にオーブとの新たな技術協力が決まりそうだ・・それでな、お前を先にオーブに行かせるんだよ。」
「オーブか。昼間からブランデー入りの紅茶を啜りながらチェス打ちよりはまだマシだ。」
二つ返事で特命佐官フレデリックはオーブに向かう事となる。


オーブ・・。
大西洋連邦から南大洋州連邦を経由し赤道連合の船に乗り入国を果たす。


「観光ですか?」
「いえ、ビジネスです。」
「アラン・スミシー社のフレデリック・ハルスさんですね。戦争だと言うのにご苦労ですな」
「各国資本の避難所であるオーブにビジネスが来るのもまだ当然です」

そう世間話をしながら入国許可のスタンプを入国審査官は押した。


降り立った入国審査局から外に出ると無数の視線を無視しつつ。
やってきたバスに乗り込んだ。

待ち合わせの公園近くでバスに降りると一人の青年が出迎えた。
「フレデリック・ハルスさんですね。アラン・スミシー社のオーブ支店の社員ですかな?」
「フレデリックって名前は犬の糞くらいある名前だ。どのフレデリックだ?」
「西出身のフレデリックです。コーヒーは微糖派ですかな?」
一本の缶コーヒーを差し出した。
「俺は無糖派だ・・。」
渡された缶コーヒーを見たフレデリックは一個のライターを取り出した。

「東機関のコイズミです」

東機関

スカンジナビア王国
赤道連合
アフリカ共同体
南アフリカ統一機構
汎ムスリム会議らの中立国に支部を持つ情報収集を目的にした戦略情報機関の末端組織である。

東機関の情報収集により開戦前の中立国の根回し外交や中立経由で送られてきた情報も戦略を組む際に重宝している。

「東機関の若い奴が案内してくれるって話だが、まさか本当に若い奴が来るとはな・・」
フレデリックは軽く若い青年に握手を交わした。
「任務の前に行っておきたい場所があるんだが良いかな?」
「構いません。それでどこへ?」

大西洋連邦の大使館前にある公園に行く。
全てが変わらず、全てが昔のまま。
木々は生い茂り、昼寝に調度よい風が肌を撫でた。
公園の端に落ちていた小さな枝を拾い、その場でフレデリックはゆっくりと構えながら木を見据えた。

一枚の葉っぱがふわりと落ちてきた・・すっと枝で地面に振り落とす。
いきなりヒュンと閃光と共に葉っぱが綺麗に二つに切れていく。

「腕はまだ落ちていない」

「ほう、まるで東洋のサムライですね」
「軍人だった爺さんから剣術を教えてもらったんだよ。まあ軍人の爺さんも、ひい爺さんが剣術家らしいって話だ。」
「剣術家ですか・・」
「そう、変な爺さんだったが俺は凄く好きだったよ、そうゆう俺も武官時代に、珍しげに見ていた二人の弟分に基礎の剣術を一緒にやったんだよ」

部下時代に出会った金髪の元気一杯なナチュラルの少年キトリ・シモンズと黒髪でコーディネーターだがまだまだ小さい子供なシン・アスカ

二人とはあれから何度か手紙や年賀状のメールを送っている。しかし開戦により私的手紙の送るのが難しくなり、半年以上前に最後の手紙を出したきりである。

最後に読んだ手紙によれば、今も時より同じ公園でブンブンやっているが、今日はまだどうやらいないらしい。

数分公園で過ごしたフレデリックであった。





[22806] 特命佐官フレデリック~ダーティーと東機関~
Name: 魔改造◆5eb824ef ID:2a90126e
Date: 2010/12/04 22:43
公園から次の待ち合わせ場所に来ると予定時間に東機関の迎えの車がフレデリックとコイズミの前に止まった。
「東機関のアサヒナです」
胸のデカイ美女が降りてきた。
「機関からの車です」
「どうぞ先に乗ってもらえるかな?」
「失礼しました。背後を初対面の方に向けたくないのですね」
「そうゆう事です」
それに納得したコイズミと運転手のアサヒナを先に車に乗せるとゆっくりとフレデリックは車に乗り込んだ。
車は市内をぐるっと周りながらコイズミからオーブに関する資料を渡された。

「これがオーブの最新情報です」
「ありがとうさん、車で資料を読ませるのは走る車内は確かに音が漏れる心配もない・・」
パラパラと資料を読み終えたフレデリックは運転席をすえた。
「局長さんが運転手とは豪勢ですな」
黒いグラサンの美女が微笑んだ。
「良い洞察力ね。でも半分ハズレは私は副局長なのよ」
「君くらいの美女が副局長なら局長はどんな美女かな?」
「お世辞がお上手ですね少佐」
「お世辞ではなく真実さ。まあ真実ついでに言っておこう」
笑みを浮かびながら瞬時に減音を装備出来る特注のリボルバーと脇に隠していたナイフを取り出して運転手の副局長と局員に向けた。
「試すとか試されるだけで俺に拳銃は向けないでいただこう。俺は美女も若い奴も殺したくない」

ふっ、と息を吐いた二人は懐に構えていた拳銃を見せた。
「東機関へようこそ、スズミヤ局長より新しい人材の能力チェックを頼まれました。」
「局長の合言葉は東機関にはただの人材には興味がない。一つ大きな才能がある者がいれば直ちにスカウトせよです」

「俺のボスも人種や宗教はその人の価値を計る物差しではないと言ってました。」
「どこでも変わった上司いるみたいですね少佐殿」
上司繋がりの話で妙に車内は盛り上がる。

車は大西洋連邦資本のビルに止まる。

東機関に関わる持ちビルではあるが、どちらかと言えば大西洋連邦資本で作られたセーフハウスの一つである。

東機関のサポートあれど、オーブには大西洋連邦の諜報組織だけではなく、プラントのザフト軍の諜報組織やオーブに元々あるサハク家の諜報組織もある。
普通のホテルでは美人局をかけられて情報を出すように揺すられる例はあった。
だがまあ美人局もまあ悪くはない。

通常の電子ロックを部屋にかけてから、玄関にアズラエル印の電子南京錠を付けた。
少なくともアズラエル財団印の電子南京錠ならば玄関の扉を無理矢理引っぺがすか、壁を砕く方がマシって程の耐久性がある。
ICチップで登録された以外の鍵はシリンダーが同じにしても開かない。
しかも壁や扉が大西洋連邦軍が使用している防弾装甲車と同じ装甲な為に大型バーナーでこじ開けるには目立ち、更に時間がかかる。
少なくとも泥棒は入れないセーフハウスである。

新しいスーツとサングラスを着用したフレデリックは車庫から車を出した。


車道を走る最新型の車が走る中。
フレデリックはゼネラル社のキャデラックの75セダン型と呼ばれる古代の車ともいえる車両で道を走った。
「75セダン?数百年前のむっちゃ古い車の復刻モデルかよ。」
外装は75セダン型で古いが中身は軍用の最新モデルと同様なアンバランスな設計である。

「見た目は爺さん、体はマッチョマン・・変な車だがまあいいか」
そう言葉をもらしながら車内にCDを流した。
無駄に金かかっていそうなクリアな音が車内に響く。
そして車は一路、オーブの首都オロファト市に入る。オーブの政治中枢の行政府。
東洋にある日本と呼ばれる国にある国会議事堂に似た建物。
そして内閣府官邸の内にある駐車場スペースに車を止める。

アラン社は割とオーブとの重要な商売相手でもある。
あまり知られていないが、プラントは軍費の捻出の為にプラント製の工業部品をオーブに輸出している。
オーブが購入した工業製品は大西洋連邦が購入していた。
アラン社はその三角貿易を仲介する会社である事から大西洋連邦から次回購入が必要な品のファイルを持参する為に官邸に入るのは割に簡単(車両や身体検査は行われる)

今回のファイルをアスハ代表の補佐官に丁重に渡すと、外に出た。
(とにかく不穏な動きがないかどうか東機関と協力しておこう。密約会議が駄目になったら目もあてられない)
そう駐車場近くで考えている時である。
上から何かの声が聞こえる。
「どいて、どいて」
ふっと上を向くと少年が降りてきた。
反射的に体を動かしてキャッチした事で怪我はないようである。
「ハハハ、ゴメンゴメン」
「ゴメンですめば警察も軍隊もいらない。それより空から落ちてきたみたいだが飛行石も魔法使い的な箒もないみたいだから天使か?」
冗談半分でフレデリックは少年に問いただした。
「違う、違う。私は実はお父様から出された宿題が嫌で抜け出してきたんだ。」
「そうかい、じゃあ帰れ」
「え~嫌だ。街まで連れて行ってくれないか?」
「おいおい、俺は赤の他人だ。もし誘拐されたらどうなるかわかるか?強制労働か移植用に臓器を体から抜き取られて死ぬか。死んだ方がマシな屈辱を受ける事になるぞ。男だからケツ穴をアベみたいな奴にアーツ!されたくないなら帰れ!」
「もう話ているから知り合いだろう。それにあんたは悪い人じゃない。私は人を見る目はある」
「人を見る目があるね・・・いいよ乗れ、近場までタクシー代わりに回ってやるよ坊主」
降参だよと言った顔でフレデリックは車のドアを開けた。
「坊主じゃない!私の名前はカガリ。カガリ・ユ・・いやカガリ・シモンズだ!」
途中何かを言い換えた辺りで少し国がごもったように見えた。

アラン社の車は帰りはノーチェックで官邸の外に出た。
だが車が出ていって一時間後に官邸の部屋の一つが爆発する事件が起こる。

そしてこれが事件となる。





CE70年その2
後書き説明

大西洋連邦

ニュートロンジャマーによる障害を乗り越えた。
オーブの宇宙エレベーター建設に協力により宇宙太陽光発電システムで原子炉には少し劣るがエネルギーは割と国内にある。
アズラエルはジブリールの策略やジブリール派の裏工作により大洋州(オーストラリア)のカーペンタリア基地と首都キャンベラを失う。
しかし大洋州は副大統領派により南に臨時政府が創設され、同時に建設していた

現在タカ派のジブリールが息を吹き返して軍を動かすが
敗退に次ぐ敗退。
“引かぬ媚びぬ省みぬ”状態である。

ユーラシア連邦
首都を破棄し、東アジアと大西洋連邦からの援助で建設したウラル山脈の要塞に引きこもりゲリラ戦を展開中。

東アジア共和国

アラスカとシベリアの補給ラインの確保と北大洋州連邦の動きを牽制している。

ファントムペイン隊

アズラエルの失脚で前より派手な行動が出来ず、宇宙と地球でザフトの補給ラインの攻撃にあたっている。
陸軍は南大洋州連邦の戦線で奮戦。
ジャン・キャリー
カナードの二人は昇進
モーガン大尉は南大洋州殊勲賞を授与
サーペントテール

依頼人に嘘があるのでアズラエルの暗殺を中止して依頼人を始末している。

オーブ
宇宙エレベーターが完成しアメノミハシラと直通しています。

武装中立路線だが今の所は極秘だが非公式の技術研究がCE68年より始まる。
戦前からのMS開発と共に、新たな技術開発の為にGATシリーズと呼ばれる新型機開発が行われる。
一度目は戦前より行われサハク家のバックアップであった。
二度はアスハ代表の正式な話し合いで行われる。



感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.218803167343