李大統領「北朝鮮住民が肯定的に変化している」(下)

北朝鮮の体制が底辺から動揺する可能性を示唆

 一方でこの日の発言は、現政権が今後の対北朝鮮政策で、「対話よりも内部の変化を期待し、促進する方向へと変わることを示唆した」とも解釈できる。最近、内部告発サイト「ウィキリークス」によって公開された外交電文でも、韓国政府の関係者が普段から北朝鮮に対して同じような考えを持っていることが明らかになった。玄仁沢(ヒョン・インテク)統一部長官は、「金総書記は、2015年以降は生存していないだろう」との見方を示し、政権が金正恩(キム・ジョンウン)氏へと移行する過程で、「火遊び」が行われる可能性がある」などと予想している。千英宇(チョン・ヨンウ)大統領府外交安保首席も、「北朝鮮は経済的にはすでに崩壊している。金総書記が死去すれば、2-3年のうちに政治的にも崩壊するだろう」との見方を示している。

 李大統領をはじめとする現政権の対北朝鮮政策担当者らは、北朝鮮が崩壊することを見越して、それに伴う準備を行っていたとも考えることができる。このような時に延坪島が砲撃される事件が起きたため、李大統領は金正日体制に対する最後の望みもあきらめ、「突然の崩壊に対する備え」へと本格的に方向転換するとの見方も可能だ。

 就任前までの李大統領は、対北朝鮮政策の中心を「北朝鮮住民の人権改善」に置き、金正日体制を強く非難してきた。大統領選挙直前の2007年2月に行われた外信記者との会見では、「われわれの対北朝鮮政策は、北朝鮮住民の衣食住問題を解決し、その上で彼らが人間の尊厳を取り戻して生活できるようにすることを目指す」「(金総書記を)委員長と呼ぶのは公式の名称だからであって、世界は独裁者と見なし、わたしも同じように(金総書記をのことを)“長期独裁者”と考えている」と発言している。また同年4月に行われた国家経営戦略研究会の招待講演では、「名称が委員長なのかどうかは分からないが、この地球上で自国の国民の衣食住さえも解決できない一方で、長期にわたり権力を持ち続ける指導者を評価することはできない。人権や衣食住の問題を解決できなかった、失敗した指導者だ」と指摘した。

 また、昨年7月に行われた「ユーロニュース」とのインタビューでも、「過去10年、巨額の支援を(北朝鮮に)行ったが、それらは北朝鮮社会の開放には使われず、核武装に利用された疑いがある」「(金総書記は)最も閉鎖的な社会の指導者で、(北朝鮮は)完璧に閉ざされた、われわれには理解できない地球上唯一の国だ」などと述べ、左派などから激しい非難を受けた。

 この日、李大統領が言及した、「北朝鮮住民の変化」と「国民の変化に反対できる権力は存在しない」という内容は、普段の考えを示したものと解釈して間違いないだろう。

権大烈(クォン・デヨル)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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