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2010年 アスカ誕生日記念LAS短編 黄金色に輝くゲンドウサンタのプレゼント(Ver1.02)
※この作品は以前に公開した作品の部分修正版です(Ver1.02)。
※この物語にはエヴァは登場しません。ゲンドウとユイは親バカ夫婦です。



「あなた、今年のクリスマスプレゼントはどうしましょう?」
「もうそんな時期か。時の経つのは早いものだな」
「去年と同じ絵本にしましょうか?シンジは本を読むのが大好きですものね」
「それに関して、少し気になる事があるのだが……シンジは少し内向的ではないか?このままだと学校に入ったとき困ってしまうぞ」
「あなたに似てシンジは照れ屋さんですからね」
「そこで私は考えたのだが……」
「……まあ、それは良いアイディアね」
「全てはシナリオ通りに」
「あなた、その変な笑い方止めてください!シンジが真似したらどうするんですか!」
「そ、それは問題があるな……善処しよう」



12月25日のクリスマスの朝。碇家の一人息子シンジがベッドの中で違和感を覚えて目を開くと……すぐ横では金髪の同い年の女の子が寝息を立てていた。

「うわあ!なんで女の子がおとなりで寝ているの!?」

シンジの大声でその女の子は目を覚ましたようだ。

「うわっ!なんで男の子が同じベッドに居るの?」

パニックになった女の子はポカポカとシンジを叩きだした。
しかしそのパンチは力の弱いものでシンジにとっては痛いというよりくすぐったい。

「くすぐったいよ。やめてよう」

しばらくして、その女の子はなぜ自分がここに居るのか気が付いたようだ。

「そうだ、アタシはサンタさんに頼まれてシーちゃんとお友達になるように言われたんだった」

女の子はにっこりと笑ってシンジに手を差し出した。

「アタシはアスカよ。よろしくねシーちゃん」

しかし、シンジはそれを無視してプイッと横を向いてしまった。

「僕はお友達なんていらないんだ。本を読んでいる方が好きなんだ」

それを聞いたアスカは泣き出しそうな顔になってしまう。

「シーちゃんもアタシの事嫌いだからお友達になってくれないの?」

暗く沈みこむような声にシンジは慌てて伸ばされたアスカの手を握る。

「お友達になるから泣かないでよ……」

それでもアスカはまだ暗い表情を崩さない。

「ならどうしてアタシの方を見てくれないの?いやいやお友達になってくれても、うれしくない」
「だって、アーちゃんは本に出て来るお姫様みたいに綺麗な青い目をしていて美人だから」

顔を赤らめてアスカの方をちらっと見てそう言うシンジに、アスカは歓喜の涙を流した。

「アーちゃん、僕は何かひどい事を言った?ごめんね、泣かないで」
「違うの。アタシは日本に来てから髪の毛を引っ張られて抜かれちゃったり、目が青いからって公園の遊び仲間に入れてくれなかったんだ」
「僕はアーちゃんみたいにかわいい女の子は見た事無いのに」
「嬉しい、シーちゃん大好き☆」

アスカは上機嫌になってシンジに抱きついた。
シンジはちょっと困った顔になったが、アスカをはねのける事はしなかった。
二人がベッドの上でそうして居ると、頃合いを見計らったようにユイとゲンドウが部屋に入って来た。

「アスカちゃんはもうシンジと仲良くなったのね」

ユイはそう言って笑顔でシンジとアスカの頭を優しくなでる。

「よかったなシンジ。友達ができればおねしょもきっと治るぞ」
「ふふっ、シンジは寂しがり屋ですものね」
「ひどいなあ、アーちゃんの前で言わないでよ」
「これからシーちゃんが寂しくないように一緒に居てあげるね」

そう言ってアスカはシンジの唇にそのサクランボのようなかわいい唇をほんの一瞬押しつけた。
驚いたシンジをアスカは満足げに眺めると、ゲンドウの方に顔を向けて礼を述べた。

「ありがとうサンタさん。素敵なプレゼントをくれて」
「問題無い」
「まったくあなたも、不器用なんですから……」

その後アスカは碇家に滞在する事になり、シンジとアスカは一緒に時を過ごす事になった。
朝の着替えも食事も……お風呂も寝るのまで……外を散歩する時はいつも手を繋いでいた。
そんな生活が一週間ほど続き、シンジとアスカが生活に慣れ始めたころ、二人はゲンドウに別れを告げられた。

「そんな、アーちゃんが帰っちゃうなんて嫌だよ!」
「アタシもシーちゃんと一緒に居たいけど……」
「シンジ、アスカちゃんも両親の居る家に帰らないといけないのだ」

そう宥めているアスカとゲンドウの前でシンジはまたもダダをこねた。

「じゃあ今度は僕がアーちゃんの家に行く!」
「シンジ!いい加減にしなさい!」

そんなシンジの顔をユイが平手打ちにした。

「我がまま言うのもいいかげんにしなさい!」
「嫌だっ!僕はアーちゃんと結婚するんだ!」
「アスカちゃんのご両親もね、もう一週間近くも離れ離れになって寂しがっているのよ。シンジは自分のことしか考えられないそんな悪い子なの?」

そこへゲンドウが助け船を出す。

「シンジ、いい子にしていれば、またアスカちゃんと会わせてやる」
「本当?じゃあ僕はいい子になる!」
「シーちゃん、じゃあ約束しよう。ゆびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼんのーます」

シンジとアスカが小指を絡める様子をユイとゲンドウは微笑ましく温かく見守った。

「シンジが反抗するなんて初めての事ですね、あなた」
「ああ。シンジは今まで大人しすぎたからな。あいつも男の目をするようになった」



しかし、そのシンジとアスカの誓いは果たされることが無かった。

「お父さん、アーちゃんにはもう会えないの?」
「シンジ……すまない」
「アスカちゃんの家族はまたドイツに引っ越しちゃったのよ。ごめんなさい」

アスカによって明るい性格になったと思われたシンジは、また以前のような内向的な性格に戻ってしまった。
学校でも教室で静かに本を読んでいるシンジには親しい友達もできず、シンジが家に友達を連れて帰る事も無かった。
携帯電話の着信履歴も両親からのものだけ。
ゲンドウとユイもシンジが素直な子に育ってくれた事には安心していたが、いまいち覇気の感じられないシンジに不安を感じていた。

「シンジは近くで照らしてくれる子が居ないと明るくなれない性格なのだな」
「どこかにアスカちゃんみたいにシンジの気を引いてくれる子が居ないものかしらね……」
「この前隣に引っ越してきた綾波さんの娘はどうだろう?」
「ああ、レイちゃんですか? あの子もアルビノが原因でクラスにお友達が居ないらしいですね」
「シンジはきっと友達になれるだろう」

ゲンドウはニヤリと薄笑いを浮かべた。
ユイが電話を綾波家にかけると、レイの母親は上機嫌だった。

「あら碇さん」
「そちらのレイちゃんに友達ができないというお話ですが……」

ユイがそう切り出すと、レイの母親は嬉しそうに話し出した。

「レイの件ではご相談に乗っていただいてありがとうございました。あの後すぐにレイにもお友達ができたんですよ」
「えっ、そうなんですか?」
「私の知り合いの渚さんのところのカヲル君も、アルビノで悩んでいたんですけど、碇さんのお話通りレイを隣に寝かせたらすぐに仲良くなってしまって……」
「それは、おめでとうございます」

レイの母親にユイはシンジの事を切り出せずに電話を切るしかなかった。

「あなた、ごめんなさい。私がシンジとアスカちゃんの馴れ初めを綾波さんにお話したばっかりに……」
「まさか、即座に実行に移すとは想定外だったな」

ゲンドウとユイの碇シンジ育成計画に何の進展が見られないままシンジは小学校を卒業し、中学生となっていた。
進学してもシンジは相変わらずクラスで孤立し、真面目すぎる性格と優秀な成績は時にはからかいやいじめの対象となった。
シンジは学校であった嫌な事を日記に書いて憂さを晴らすという消極的なストレス解消方法しか持たなかった。
しかし、シンジが中学二年生、14歳のクリスマスを迎える頃になってゲンドウとユイの下にとある朗報が飛び込んだ。

「あなた、見てください。シンジったら、同じクラスの子に彼女を自慢されたから自分も彼女が欲しいなんて日記に書いてますよ」
「これであの計画を実行しても問題は無いな」



2015年12月25日。碇家の一人息子シンジがベッドの中で違和感を感じて目を覚ますと、隣に金髪の同い年の少女が眠りこけている事に気が付いた。

「うわあ!なんで女の子が隣で寝ているの?……ってアスカ!?」

シンジの大声で寝ていたアスカも目を覚ましたようだ。

「きゃああ! 何で男が隣に寝てるのよ!? スケベ、変態!」

アスカはシンジの顔に思いっきり平手打ちを喰らわせて突き飛ばした。

「痛いよアスカ~」

涙目で訴えるシンジの姿を見てアスカはここは日本のシンジの部屋だと思いだしたようだ。

「ごめんシンジ! 痛かった?」

そう言ってアスカはシンジの赤く腫れあがったほおを優しくなでる。
もっとも、シンジの顔が赤いのは叩かれた事だけが原因ではなかったのだが。
そこへ聞き耳を立ててタイミングを見計らったゲンドウとユイが部屋に入って来た。

「二人をここに集めたのは理由があったからなのだ」
「私とゲンドウさん、アスカちゃんのご両親は仕事の都合で南極に行かなくてはいけなくなったのよ」
「南極に?」

不思議そうに首をひねるシンジとアスカを急かすようにゲンドウが喋りはじめた。

「とにかく着替えて、朝食を食べろ。日本でシンジ達の面倒を見てくれる方がここに来るからな」
「うん……わかったよ」

いそいそと朝食を終えたシンジとアスカは、ユイの運転する車で出て行ったゲンドウ達を見送った。
しばらくすると、インターフォンが押され、玄関前にメイド服を着た黒髪の女性が立っているのが見えた。

「碇シンジ君に、惣流・アスカ・ラングレーさんね? 私は家政婦紹介所から来た葛城ミサト。あなた達の世話をするように頼まれて来たの」
「ずいぶん態度のでかいメイドね」
「でも、何か明るいお姉さんって感じがするよね」

シンジはドアを開けて、ミサトを家に迎え入れた。

「よろしくお願いします、葛城さん」

深々とお辞儀をしたシンジにミサトは笑顔を浮かべて、手を上下に振る仕草をする。

「まあまあ、そんなにかしこまらないで。私もあなたたちをシンちゃん、アスカちゃんって呼ぶから、ミサト、でいいわよ」
「ありがとうございます、ミサトさん」
「サンキュー、ミサト」
「アスカ、さっそく呼び捨てにしたわね……」

ミサトは仕事である家事や洗濯、掃除などをするが小学生より下手だとシンジ達は思った。

「……さっきから掃除しているけど全然汚れが落ちていない気がするんですが」
「さては、落ちこぼれメイドね? ミサトは」
「うっさいわね! 文句があるなら自分達でやりなさい!」

怒ったミサトはそれから一切家事の類をやろうとはしなかった。

「職務怠慢よ、ミサト!」
「ミサトさん、真面目に働いて下さいよ」
「それじゃあシンちゃん達が家事をすればいいじゃないの」

アスカとシンジが訴えても、ミサトはヘラヘラと笑って相手にしなかった。
その日の夜、出張先に出発する前のゲンドウがミサトに電話をかけてきた。

「葛城君、くれぐれも二人の事を頼む」
「はい、計画通りだらしない保護者役を精いっぱい演じさせていただきます」
「君は普通どおりに生活して居ればいい。そうすればシンジとアスカ君は協力して料理や家事をしようとするはずだ」
「そんな、私も社会人として一通りの事はできますよ……」
「君はずぼらでがざつで、婚期を逃して恋人をからかう事が一番の趣味の三十路直前の素晴らしい人材としてリツコ君の推薦を受けて選ばれたのだ」

そう断言するゲンドウにミサトは肩を落としたのだった。
次の日、ミサトの部屋に入ったシンジとアスカは足の踏み場もないほどの散らかりように驚いた。
今まで両親にまかせっきりで掃除などした事が無いシンジとアスカだったが、これはまずいと二人で協力して家事をする事になった。
そしてダメ押しとばかりにミサトのカレーを食べた二人は激しく苦しみ、数日後にはお揃いのエプロンをつけて二人は料理をすることになる。

「あらまあ、お揃いのエプロンなんかしちゃって新婚さんみたいね」
「ふふふ、ミサトったら」

ミサトが冷やかしてもシンジとアスカは余裕で受け流す。
入浴は別々だったが、パジャマに着替えたアスカは当然のようにシンジの部屋に向かう。
さすがにこれはマズイと思ったのかミサトは寝る時の部屋は別々にするように言うのだが、2人は聞く耳を持たない。

「だって僕達は小さい頃から一緒に寝ていたんですよ」
「シンジと一緒に寝ると、心がポカポカするの」

シンジの部屋に入ってしまった2人を見送ったミサトは、やりきれない気持ちになってリビングでビールを飲みまくる。

「私がけしかけなくても、あの2人は勝手にラブラブになっているじゃないの」

こうして2人の生活はおおむねゲンドウとユイの計画通りになったのだが、シンジとアスカのラブラブはエスカレートしてきた。

「シンちゃ~ん。ビール持ってきて~」

夕食の席でビールをせがむミサトを前にして、シンジとアスカは熱い視線を交わしていた。

「シンジ。食べさせてあげる。あーん」

アスカが箸でつかんだおかずをシンジは幸せそうに頬張る。

「アスカちゃんが食べさせてくれるとおいしいね」
「あったりまえよ、アタシはシンジのお嫁さんなんだから」

二人のやり取りを見ていたミサトは青い顔をして胸を抑え出した。

「アスカのお口にご飯粒が付いているよ」
「シンジが取って」

シンジは舌を伸ばしてアスカの唇についたご飯粒を舐めとる。

「私には痛すぎるラブラブフィールドだわ」




その後しばらく半年ほど、月曜日から金曜日は学校でイチャイチャ、土日は公園や遊園地でデートをしながらイチャイチャと言うラブラブな生活が続いた。

「ミサト、アタシ達修学旅行に行かなきゃダメなの?」
「どうして、そんなこと聞くのよ?」
「だって、夜はシンジと一緒に寝れなくなるじゃない」
「アスカ、あなたねえ……」

ミサトはあきれ果ててため息をついた。
そしてキスをしたことによって、シンジとアスカの結びつきは強くなっていた。
キスの回数が増えるごとにシンジとアスカは強く唇を重ねていた。

「大人のキスよ……学校から帰ったら続きをしましょう」
「うん、楽しみにしているよ……アスカ」

そしてある日放課後、図書委員の仕事を終えて学校から帰ろうとしたシンジは教室で待っているはずのアスカの姿が無いことに気が付いた。

「アスカ、先に家に帰っちゃったのかな……」

シンジが家に帰ると、リビングに紙が置かれている事に気が付いた。
その紙を手に取ると、シンジにとって驚くべきメッセージが目に飛び込んできた。







これ以上シンジとは一緒に居られない、さようなら
                                     Asuka













「何の冗談だよ! 日本に戻って来たアスカはずっと一緒に居られるんじゃなかったのかよ!」

そう叫ぶシンジの肩に、いつの間にか追いついていたミサトが手を置いた。

「アスカは自分の意思でドイツにいるご親戚のところへ行ったのよ……」
「そうだ、アスカはきっとどこかに隠れて僕をドッキリさせようとしているんだ! じゃあ僕はアスカの大好物のハンバーグを作ってアスカを驚かせてあげよう!」

シンジは大声でそう喚きながら、台所でハンバーグを作り始めた。
料理を作り終えたシンジは3人分の食事をテーブルに並べる。
しかし、いつまで経ってもアスカが帰って来るはずは無かった。

「ミサトさん、アスカが早く帰ってこないとせっかく作ったご飯が冷めちゃうよ……」
「シンジ君、いい加減に現実を認めなさい。アスカはもう日本には居ないのよ」

アスカの姿が見えない事を確認すると、シンジは膝を折ってへたりこんでしまった。

「シンジ、アスカちゃんはこのまま一緒に居ると良くないと思ってシンジから離れたのよ」

「ミサトさん、アスカは僕の奥さんなんでしょ? お嫁さんになってくれたんでしょう?」
「アスカちゃんはシンジと結婚をしたわけじゃないわ。まだ口約束の段階だった」
「アスカは僕の事が嫌いになってしまったのかな……」

シンジはその日からまた輝きを失った生活に戻って行った。
それからのクリスマスの日、目を覚ました時シンジは隣にアスカが寝ていないか探すのだが、サンタクロースの贈り物は無かった。


























日本から遠く離れたドイツで暮らすアスカは、学校で遠くに居るシンジの事を思っていた。

「シンジ……一緒に居るとアタシはムラムラしてきて我慢できなくなるのよ」

そしてアスカの頭の中にはピンク色の妄想が広まる。

「でも、18歳のクリスマスの朝にはシンジのベッドに潜り込んで……ジュルリ」

授業中によだれを垂らして、ニヤケ顔になるアスカを、クラスの友達は気味悪がっていましたとさ。
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