民間の内部告発サイト「ウィキリークス」が、機密扱いを含む米政府の外交公電を連日公開しており、全世界に波紋が広がっている。 米外交を揺るがす前代未聞の情報流出劇はなぜ起きたのか。
◆公電25万通
今回ウィキリークスが入手し、公開するとしているのは、ワシントンの国務省と世界274か所に展開する米大使館・領事館が1966年12月〜2010年2月に交わした公電25万1287通。最も秘密性が高い「最高機密(top secret)」文書は含まれていないが、それに準じる「機密(secret)」扱いが1万5652通、さらにその下に位置づけられる「秘密(confidential)」も10万1748通含まれている。
このうち、在日米大使館と国務省の間で交わされた公電は5697通で、うち227通が機密扱い。いずれもまだ、サイト上には出ていないが、米軍普天間飛行場の移設問題などを巡る微妙なやり取りが含まれている可能性もある。
ウィキリークスのサイト上では11月28日に約230通、29日にも約40通が公開されたほか、事前にウィキリークスから公電を一部提供されたニューヨーク・タイムズ紙など欧米の報道機関も内容を報道している。
◆だれが盗んだ?
では、だれがこれらの公電を「盗み出した」(クリントン国務長官)のか。
疑惑の渦中にいるのが、ウィキリークスに軍事情報を流したとして7月に起訴された、ブラッドリー・マニング陸軍上等兵。イラク駐留当時に政府・軍関係者が省庁間の秘密文書を共有する情報ネットワークにアクセスしては、音楽CDに見せかけた記録可能なCDに情報をダウンロードしていたとされる人物だ。
この情報システムは、「機密IPルーターネットワーク(SIPRNet)」と呼ばれる。米政府は、01年の同時テロ後、政府機関同士の情報共有が十分でなかったとの反省から、国務省を含む複数の省庁がネットワーク上に乗り入れ、機密情報を共有するシステムを構築していた。
ワシントン・ポスト紙によると、このシステムを利用出来る政府・軍関係者は50万〜60万人。マニング上等兵もその1人だった。
◆後手に回る防止策
今回の事態を受け、国務省は、このシステムから自省のコンピューターを一時切り離した。国防総省も、機密情報をCDなど持ち出し可能な記録媒体に書き込めないようにすると同時に、だれが機密文書を閲覧しているかを監視するなどの対策を講じている。
しかし、国防総省のホイットマン報道官は、閲覧監視システムは現在、同省が扱う機密文書全体の6割程度しかカバー出来ていない状況だと説明している。(ワシントン 黒瀬悦成)(2010年12月1日08時08分 読売新聞)
*読売新聞 国際